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訪問者
しおりを挟む――午前――
お互い別々に拘束されその期間内に一応逢う事は許されていたが、こうして硝子越しでは無く逢わされたのは四日ぶりの事だった。
「悪い、また――同じ様にさせたな」
ロギアはアリアに対して罪悪感が残っていた。こうなる事は容易く予想出来、今更だが男の行動、言動にカッとなり他の選択肢を見付ける事が出来なかった自分自身に嫌気がさす。
昨日までしつこく質問攻めを受け、場合によっては詳細に身体を調べられた。
アリアも恐らく同じ様な事をされたと考えて良い。ロギア個人にはどれもそれ程きついと言う物は無かったものの、アリアにとってみればそのどれ一つをとっても精神的に良く無かっただろう。
二人は数人の兵士に囲まれ個室へと案内されると、「此処で待つように」とだけ伝えられ既に数十分程の時間が経過していた。
部屋には微かに和やかなオルゴール調の音楽が流れており、部屋の上部分にはエアコンが取り付けられ涼し気な風が吹いていて部屋の中央にはテーブルと座り心地の良さそうな椅子が二脚、その対面に一脚並べてある。
今迄とは全く雰囲気の違う部屋にアリアは戸惑っていたが、ロギアは此処に自分達を入れた連中の意図が掴めずモヤモヤ感が晴れずにいた――
「ロギ……も座ったら?」
部屋の中を真剣に見回すロギアにアリアは苦笑を浮かべ自身の隣の席に座る様促す。
「すまなかった」
ロギアは取り敢えず勧められた椅子に腰を下ろすが診療所を思わせる様な雰囲気に落ち着く事が出来ず視線も何処に合わせる訳も無くただ空中に漂わせていた。アリアはそんな雰囲気に慣れていたのか、それとも何処かで諦めているかの様に表情が暗い。
――それから十八分弱、ロギアの感覚ではそのくらいの時間が経った筈なのだが現時点で誰も姿を現さない。そしてアリアとの暗い空気感も何処となく耐え難い物だった。そんな雰囲気に我慢出来なかったロギアは椅子から立ち上がると、アリアが顔をこちらへと向ける。
「少し外の警備隊に状況でも訊いてくる」
「ロギ……止めといた方が――」
「遅い奴が悪い」
心配げに忠告をするアリアを無視しロギアは部屋のドアを開け傍に待機して居た警備隊と何やら話したすえ部屋を出て行き、一人取り残されたアリアはキョロキョロと辺りを見回す。
どうしたら良いか判断がつかず、ただロギアが早く帰って来る事を祈りつつドアの方へとただただ視線を送り続ける。
数分も待たずにロギアは――何故か湯気の立つカップを両手に部屋へと戻って来た。それから椅子に腰を下ろし隣に座るアリアの目の前にその片方のカップを置く。
「え?」アリアは意味が判らずロギアとコーヒーに交互に視線を動かす。
「俺達を一歩もこの部屋から外へ出さないつもりなら始からこんな所に鍵すらかけずに閉じ込めないだろ? それに長く待たされているんだ、水分補給くらい良いだろ? ってそこの奴に言った結果だ。まぁ、その扱いから察するに俺達の処遇はそこまで酷い物では無いみたいだな」
「――」アリアはロギアのその説明に唖然としながらも目の前のコーヒーに視線を落とす。
「いや、コーヒーにだって水分として細胞を潤してくれるぞ」ロギアはどう反応すればいいか判らず咄嗟にコーヒーは水分補給ならないと言う説を言われる前に否定する。
「そ、そんな事じゃなくて……はぁ」アリアはロギアのその発言に何か言い返そうとするが上手く言葉が見付けられず、そしてロギアのその予想外とも呼べる若干荒っぽい行動に呆れ表情が今迄より明るくなる。
「……ありがと」そう呟き目の前に置かれたカップを手に取る。
アリアの生気が感じられない表情から明るさが取り戻すにつれ、ロギアの胸中も一息つく様な一仕事終えた感が湧く。
「熱いから慌てて口を付けて火傷するなよ」
「こ、子供じゃない……ッ!」
不満げな顔をするアリアを尻目にロギアは熱めに淹れたコーヒーを口にし一息つく。
思えばこうしてコーヒーを一緒に飲むのは出逢った日以来だった事に気付きロギアはその数日前がかなり前の事の様に感じ、存外アリアもそう思っていたらしくコーヒーを口に含んだ後チラリとロギアへと視線を移動させていた。
「さっきも言ったが俺達の処遇がどうなるにしても、それが嫌な事だと思ったら正直に言ってくれ。誰にも気を遣わず、感じた事をそのまま表現してくれた方が良い方に傾く時だってある。それにもし相手がこちらの条件をある程度は呑んでくれそうならば尚更遠慮なんかするな、取れる物は取っておけ。後々後悔だけが延々と残り続けて嫌になる時もある」
「……うん」
アリアがそれだけ答えるとこの空間に再び静寂が舞い戻って来た。お互い何か言葉を発する事は無くただ黙る事数秒、数十秒だろうか。それだけの時が経ってからドアをノックする音がし、二人の視線はドアへと向けられた。
数回のノックの後、礼服を着た褐色肌の青年が入室し、ロギアとアリアを視界に捉えると礼儀正しくお辞儀をした。それにつられアリアも慌てて頭を下げる。そんな時青年の瞳が動きアリアの仕草を見て優しく微笑んだ。
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