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対面
しおりを挟むマザーの書斎なのか広い部屋には幾つもの棚があり、その全てに本がぎっしりと詰まっていた。その他も廊下と同じ様に壁には絵画が飾られている。
「――――此処での暮らしは慣れましたか?」
ロギアとアリアは急に掛けられたその声に反応し声のした方向へと顔を向ける。
かなり高齢な女性が窓際に立ち外の穏やかな花園の景色を眺めていた。
「アンタがマザー・クリスティアナ、で間違いないか?」
ロギアの問いにその人物は二人を視界に捉えゆっくりと、そしてアリアに微笑みロギアの問いに「ええ、そうですよ」そう応じた。
マザーのその微笑みが青年のアリアに見せた微笑みとかぶる。
その事がロギアの脳裏に浮かび、少なくとも青年とマザー二人の反応からアリアに対する何かしらの共通する情報を持っているだろうと再確認出来た。
手を後ろに組み、年齢の割には伸びた背筋で、判っているとはいえ先日此処に来たばかりの者と対峙しているのにも関わらず物腰も本人が放つ雰囲気も驚く程落ち着いている。
「さ、そこにいつ迄も立っていないでこちらにいらっしゃいな、腰を下ろした方が話しやすいでしょう?」
マザーは二人に部屋の中央に置かれているソファーに座る様促すと、ロギアとアリア両名が腰を下ろすのを確認しそれから自らも腰を下ろした。
堂々と尚且つ気品あるマザーのその姿に、ロギアは話を上手く丸め込められない様注意はしようと心がける。しかし只でさえ人との関りを絶っていたせいか疑り深くなっておりそれすらもマザーには見透かされている空気がしてロギア自身気分が悪い。
「アンタには訊きたい事は山程ある」
「勿論、何処から話しましょうか」
ロギアは双方の身の安全を保障、ロギアの意向でもある水美夏夜の捜索、更に一番重要視していたアリアの自由、そしてアリアが定期的に受ける検査の詳細、一度桐ケ谷尊信から説明された事についても立て続けに訊いてみたが答えは桐ケ谷尊信と同じ事が返って来た。
「ええ、勿論よ。貴方達の安全の為にも監視するスタッフが付くでしょうけど、此の地域内においては貴方達の自由行動は約束出来ます。アリアさんの定期検査についても身体の負担にならない様日にちを決めるつもりですが……それも長時間かかる様な事などありません。検査を行う施設も事前に貴方達二人に見学して詳細な事もそこで把握して貰います。それと――水美夏夜さんの捜索の件ですが……現在、私が管轄する地域に居る全住民の生存、死亡に関する名簿を調べている段階です。もしそこに名前が無ければ同じ様に他の地域の代表とも取引をして名簿を取り寄せるつもりです。それで少しは力になるかと」
「――ああ……」マザーの説明を聞きロギアとアリアは頷く。
「勿論そこに無かった場合には貴方と相談し、もし賛同する者が居るのであれば独自に捜索部隊を結成……と様々な手段を試みていこうと考えています」
此処迄来ても疑うか、とロギアの中ではそう言う気持ちも無い訳では無かったが、荒んだ生活を送って来たロギアにとってはマザー本人から直接その事を訊く方が人伝に訊くよりかは多少胸に溜まった不安も解消出来き、アリアもマザーと対面で直接訊いた事でロギアと同じ様に多少の不安は取れた様だった。
「確かに貴方達が警戒するのは当然だと思います。けれどその不安に対しては今此処で私が何を言おうとも完全に取り除く事は出来ないでしょう。私に唯一出来る事はこのように時間を割き、話を訊き貴方達にとって安全な場所、情報と必要な食料を提供する事だけです。それで私達を信頼してくれる事を望むばかりでしょうか」
マザーは静かにそう答えロギアとアリアの目を交互に見据える。
不安、そしてマザー達に対し何処か未だに渦巻いている疑念をロギアは一旦咀嚼し現状を再確認する。自分達の要求は先程マザーが言った様に通っている。それもこちらが一方的に得をする条件で。
“流石に此処迄されて未だに疑うと言うのもどうなんだ? 確かに完全に信頼を寄せる事は出来ないが、それを言ってしまうときりがない。なら――徐々に深めていけば良い話だ”
「要求がきちんと通るのならこっちとしても助かる」
アリアの安全も確保できた、後これからは身の処し方を考えて行かなくてはならない。
流石にいつまでも食料や安全な場所を提供され続けるのはどうかしてる。それに何かしら行動をしていた方が個人的には落ち着き気楽と言う事もある。
「――そういえば、貴方達は何故世界がこうなってしまったかはご存知かしら?」
「さ、さぁ……」「……」
マザーの唐突な質問にアリアは曖昧に応え、ロギアは眉をひそめた。何故こうなった? それは単純に寄生虫が現れたから。現れた、いつから。アリアに関する資料に目を通した際父親が原因と言うのは大体だが想像はつくが――
”何故? いつから?”
疑問が頭に浮かび、二人は直ぐには返答出来なかった。
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