13 / 18
013
しおりを挟む
夏休みがすぐそこに迫り、荷物をまとめ、航空券も買った。
けれど一番の障害は——理光が僕の腰に腕を回し、決して放そうとしないことだった。
「兄さん、行かないでよ。帰っちゃったら、僕はどうすればいいの?」
顔を赤らめながら押し返す。
「早く離してよ、時間がなくなるから!」
それでも理光は離れず、逆に僕をベッドに押し倒し、強引に唇を奪った。
荒々しく、そして抑えきれないほどに。
「理光……ほんとに時間が……ないんだ……!」
必死に息をつきながら懇願すると、ようやく彼は唇を離し、僕の口元を軽く摘まんだ。
「兄さん、今回は見逃してあげる。帰ってきたら……覚悟してよ。」
そう言って荷物を持ち、空港まで送ってくれた。
僕が保安検査を通り抜けるまで、その場を動かずに立ちつくしていた。
ポケットの中でスマホが震える。
——『兄さん、帰ってきたら、僕に名分をくれる?』
返事は短く、『考えてみる』。
画面を閉じた瞬間、胸の奥に甘さが溢れた。
実家に戻ると、父に連れられて祖父母の家へ。
久しぶりに囲む団らんの食卓。
数日後は祖父の誕生日、その準備のため郊外に滞在することになっていた。
田舎の風景は穏やかで、近くの池には見事な蓮の花が咲き誇っている。
思わず写真を撮り、理光に送った。
すぐに返信が届く。
——『すごくきれい。でも僕にとって一番きれいなのは兄さんだよ。』
——『君を見たい。』
——『会いたい。』
池のほとり、誰もいない場所で僕は頬を赤らめた。
好きな人がいて、しかもその人も自分を想ってくれる——。
それだけで、なんて幸せなんだろう。
けれど一番の障害は——理光が僕の腰に腕を回し、決して放そうとしないことだった。
「兄さん、行かないでよ。帰っちゃったら、僕はどうすればいいの?」
顔を赤らめながら押し返す。
「早く離してよ、時間がなくなるから!」
それでも理光は離れず、逆に僕をベッドに押し倒し、強引に唇を奪った。
荒々しく、そして抑えきれないほどに。
「理光……ほんとに時間が……ないんだ……!」
必死に息をつきながら懇願すると、ようやく彼は唇を離し、僕の口元を軽く摘まんだ。
「兄さん、今回は見逃してあげる。帰ってきたら……覚悟してよ。」
そう言って荷物を持ち、空港まで送ってくれた。
僕が保安検査を通り抜けるまで、その場を動かずに立ちつくしていた。
ポケットの中でスマホが震える。
——『兄さん、帰ってきたら、僕に名分をくれる?』
返事は短く、『考えてみる』。
画面を閉じた瞬間、胸の奥に甘さが溢れた。
実家に戻ると、父に連れられて祖父母の家へ。
久しぶりに囲む団らんの食卓。
数日後は祖父の誕生日、その準備のため郊外に滞在することになっていた。
田舎の風景は穏やかで、近くの池には見事な蓮の花が咲き誇っている。
思わず写真を撮り、理光に送った。
すぐに返信が届く。
——『すごくきれい。でも僕にとって一番きれいなのは兄さんだよ。』
——『君を見たい。』
——『会いたい。』
池のほとり、誰もいない場所で僕は頬を赤らめた。
好きな人がいて、しかもその人も自分を想ってくれる——。
それだけで、なんて幸せなんだろう。
10
あなたにおすすめの小説
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。
雪 いつき
BL
凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。
二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。
それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。
「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」
人前でそんな発言をして爽やかに笑う。
発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。
異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜
一優璃 /Ninomae Yuuri
BL
異世界での記憶を胸に、元の世界へ戻った真白。
けれど、彼を待っていたのは
あの日とはまるで違う姿の幼馴染・朔(さく)だった。
「よかった。真白……ずっと待ってた」
――なんで僕をいじめていた奴が、こんなに泣いているんだ?
失われた時間。
言葉にできなかった想い。
不器用にすれ違ってきたふたりの心が、再び重なり始める。
「真白が生きてるなら、それだけでいい」
異世界で強くなった真白と、不器用に愛を抱えた朔の物語。
※第二章…異世界での成長編
※第三章…真白と朔、再会と恋の物語
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる