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5 悪魔現る

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「楽しませる……確かに約束したけれど……」

 ローサは困った顔をして悪魔を見た。

「何? 私が目の前に現れる事に不満があるのだな。では、仕方がないがローサフェミリアの身体と今入っている中身を、元通りの別々にするしかな……」

「不満なんてない!!」

 悪魔が話をしている途中で、ローサは大きな声で遮った。

「なら良い」

「悪魔さんに会えて心強いです」

「心にもない事は言わないで良い」

「……すみません」

 ローサは直ぐに開き直り悪魔に質問をした。

「所で何かご用?」

「ずっと上から見ていたのだが、直接介入した方が楽しそうだから降りて来てやったぞ」

「要するに婚約破棄された少女の人生を見るのは中々の娯楽だが、近くで見る方がより楽しそうだから降りて来たと言うこと?」

「まあ、そんな所だ」

 そう言うと悪魔はニヤリと笑った。

「所でローサフェミリアの記憶の整理は終わったのか?」

「うーん。それが、フレデリクとレティシア・ファウストの関係に違和感を覚えて……ローサちゃんの記憶だとフレデリクとの関係は悪くは無かったの。むしろ普通の恋人同士のような感じね。それが、いきなりの浮気でしょう? 婚約破棄をする程だから本気よねー。急に心変わりしたフレデリクに少し違和感が……それに、ローサちゃんの記憶だと第二王子はそこまで頭が悪く無いような……ローサちゃんは、フレデリクの事が好きだから良く見えてしまったのかしら?」

「ほう。なるほど。第二王子フレデリクは王太子の最有力候補だからな」

「えっ? 第二王子なのに?」

 ローサは目を丸くした。
 それを見た悪魔は近くにあったソファに腰掛け、足を組んで座った。

「第二王子は王妃の子ども。第一王子は側室の子どもだ」

「ああ、なるほど」

「まあ、王太子はまだ決まっていないから、あくまで最有力候補にすぎないが」

「そう言えば第一王子は、今何処に居るの?」

「ティグレール学院を卒業し、ブノワーズ共和国にある学院に留学中だ」

「そうなのね」

 王位に近いフレデリクは、公衆の面前で婚約破棄なんてするのだろうか?
 それとも、トラブルを起こして王太子に選ばれないようにしたかったのかな?

 ローサは腕を組んで悩み始めた。

「まあ、フレデリクが学園に来たら話しをして見るが良い」

「相手は王子様よ。簡単に話せる訳が無いでしょう? それにやつは、ローサちゃんの敵よ、敵!」

「そうか、敵か」

「そう! それからレティシア・ファウストも敵」

「敵は他にいそうだが……まあ良い。今日の所は失礼する」

 悪魔はそう言うと、ローサの前からすっと姿を消した。

「えっ? ちょっと、聞きたい事が……」

 ローサは何を知っていそうな悪魔に聞こうとしたが、間に合わなかった。
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