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61 口は災いの元

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 ローサとルーカスは、エミールとケネスに会う事が出来た。

「ローサ! そのドレス似合っているわ」

「ありがとう。エミールのドレスも素敵ね。エミールに似合っているわ」

「ありがとう」

 四人が話していると、レティシアがやってきた。

「やっと見つけたわ。人が多くて」

「ええ、そうね。四学年集まるから」

「エミール達は、ミリウェイン会長に挨拶をした?」

「いいえ、まだよ」

「私は友人とさっきしてきたんだけど、よければ案内するわよ」

「ありがとう。お願いするわね」

 エミールとレティシアの話を聞いていたケネスは、エミールに話掛けた。

「じゃあ、僕とルーカスは友人の所に行ってくるよ」

「分かったわ」

「エミール。今日の君はすごく綺麗だから、知らない男に付いて行ってはいけないよ」

「ふふ。大丈夫よ」

「ローサとレティシア、エミールを頼んだよ」

「「はーい」」

 ローサは二人の会話を聞いて、日本人男子はこういう人が少ないのよねと、思っていた。

 ローサとエミールとレティシアは、ミリウェイン会長の所に向かった。
 ミリウェイン会長はすぐに見つかり、代表でローサが挨拶をする。

「ミリウェイン会長、お久しぶりです。先日はファンクラブに入会させていただき、ありがとうございました」

「会員が増えるは嬉しいの。こちらこそありがとう」

 ローサはさっそく、ジャパンについて聞いて見る事にした。

「あの、ジャパンって知っていますか?」

「……いいえ。知らないわ」

「そう、ですか……。ちなみになんですけれど、ファンクラブを作ったのはミリウェイン会長ですよね」

「ええ、そうよ」

「発想が豊かで、素敵ですね」

「まあ、ありがとう」

 ミリウェイン会長は、嬉しそうに笑った。

「ミリウェイン会長のドレス、鮮やかな色で似合っています」

「まあ、ありがとう。ふふ。オルブライト公爵令嬢のドレスも色が素敵ね。似合っているわ」

「ありがとうございます。お父様が買ってくれて、気に入っているんです」

「そうなの。色が特にオルブライト公爵令嬢に似合っているわ」

 ローサは思いの外ミリウェイン会長と話が弾み、調子に乗った。

「ありがとうございます。そう言えば、もうすぐ演目が変わるんですってね。今の演目は何度か観たので楽しみなんです」

 ローサの発言に、その場が静かになった。
 ミリウェイン会長も近くに居たファンクラブの会員の方々も、エミールもレティシアも困惑をした顔をしている。

「えっ……私、何か失礼な事でも……」

「オルブライト公爵令嬢……演目が変わるのは、どなたに聞いたのかしら? 劇団セレルニティは、まだ発表をしていないのよ」

 ミリウェイン会長は、鋭い目つきでローサを見た。
 ローサの体が強張った。

「あ、あの。友人がいるんです。劇団セレルニティに」

「へぇ、友人。その方はどなたかしら?」

 レイノス様ですとは、恐ろしくて言えないローサ。

「キラキラしていて、美しい子なんです。夢に向かって頑張っていて、応援したくなるんです」

 嘘は言っていない。男子にも美しいって言葉は使っていいだろうと、ローサは自分に言い聞かせた。

「まあ、そうなの。夢が叶うといいわね。きっと可愛らしい女の子なんでしょうね」

「可愛らしいと言うより、綺麗ですかね。オホホホ。では、そろそろ失礼しますわ」

 ローサは、エミールとレティシアを連れて逃げ出した。

 しばらく歩いた所でローサが立ち止まる。

「ローサ、急にどうしたの? えっ、顔色が悪いわよ。ちょっと大丈夫?」

 ローサの顔を見て驚いたエミール。
 エミールとレティシアが、ローサを心配しているとフレデリクが来た。

「どうかしたのか?」

「殿下……ローサの具合が悪そうなんです」

「ローサさん、大丈夫か?」

「ええ、少し気分が……」

 そこへ、ケネスとルーカスも来た。
 エミールから話を聞き、二人もローサを心配した。

「ローサさん、今日はもう帰った方がいい。送って行くよ」

「殿下。今日のエスコートは私です。私が送って行きます」

「だか。私もローサさんが心配だ」

 お互いに譲らない二人に、ローサが間に入った。

「フレデリク殿下、ありがとうございます。ですが、今日はエスコートをルーカスにお願いしておりますので、ルーカスと帰ります」

「……分かった」

 ローサはルーカスの腕に手を添えて、歩き出した。

 ローサは、ミリウェイン会長の先程の目を思い出し、自分が殺され時の記憶が蘇ってきた。

 もし、今一緒に歩いているのがフレデリク殿下だったら、具合が悪くなった原因を話せたのに……フレデリク殿下は私を心配をしてくれたかな?
 フレデリク殿下が私に優しいのは、ローサちゃんの体にたまたま私が入ったからよね。
 だって、フレデリク殿下はローサちゃんの事が好きなのんだもの……。
 頼り過ぎては、いけないわね。
 そうね。お父様とお母様とジョンウィルとエミールが私に優しいのも、私の事をローサちゃんと思っているから……何だか、悲しいな……。

 ローサが考え事をしながら歩いていると、ルーカスが心配をした声でローサに話掛けた。

「ローサ、大丈夫か?」

「ええ、ルーカス大丈夫よ。送ってくれてありがとう。ルーカスは今から会場に戻って楽しんでね」

「いや、それは大丈夫だ」

「ふふ。気にしなくていいのに。ありがとう」

「ああ」

 ルーカスはローサが寮の中に入るまで、見守っていた。
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