目覚めたら、婚約破棄をされた公爵令嬢になっていた

ねむ太朗

文字の大きさ
84 / 123

83 告白

しおりを挟む
 フレデリクはローサを膝の上に乗せたまま横向きにした。

「ローサさん」

 ローサが顔をあげるとフレデリクと視線が合った。
 ローサは恥ずかしくなり顔を背けようとするが、フレデリクに顎を押さえられて逃げられなくなった。

「ローサさん……好きだ」

 ローサは驚いた顔を一瞬したが、すぐに真顔になった。

「知っています」

 今度はフレデリクが驚いた顔をした。

「そうか。私の態度はわかりやすかったか」

「ええ。初めて会った日にも言っていたではありませんか」

 急に訳が分からなくなったフレデリク。

「どう言う事だ? 誰の話をしている」

 低い声を出したフレデリクにローサが怯えた。

「すまない。怖がらせるつもりなかったんだ。別の男の話をしているのかもと思ったらつい……」

「フレデリク殿下の話です。初めて会った日に言っていました。こんな事になってしまったが、私が好きなのは今でも君だけなんだ。でしたっけ?」

 フレデリクはようやく気付いた。

「ローサさん。この間言っただろう? 私はローサフェミリアと愉快な恋人達の輪に入る気はないって」

「でも、フレデリク殿下は今でもローサちゃんの事が好きなんですよね」

「違う。私が好きなのはローサさんだ」

「けれど……私の見た目はローサちゃんだから……」

 悲しそうな顔をしたローサをフレデリクは抱きしめた。

「確かに……ローサフェミリアの事をしばらくは想っていた。けれど、私が今好きなのはローサさんだ」

 ローサはフレデリクの肩を押して離れようとする。
 すかさずフレデリクは、ローサの腰に回してあった腕に力を入れて逃さないようにした。

「信じられない? でも今の私が好きなのはローサさんなんだ。少し抜けてる所も家族思いの所も、私に笑い掛けてくれる所も全て好きだ」

「……私も……フレデリク殿下の事が好きです」

 フレデリクはローサきつく抱きしめ、幸せを噛み締めた。

「ローサさん、好きだ!」

「はい。私もです」

 フレデリクはローサを離すと、目を見てもう一度言う。

「ローサさんが好きなんだ!」

「ええ。先程知りました」

「ああ。ローサさん、私はローサさんが好きだ」

「はい。存じ上げております」

「ローサさん……私はローサさ」

「もう、分かりました」

 ローサが途中で遮っても嬉しそうな顔のフレデリク。
 ローサはフレデリクの顔を見て、くすくすと笑った。

「ローサさん……キスしていい?」

「……はい」

 少し恥ずかしそうに返事をしたローサ。
 それから二人は長い口づけをかわした。

 屋敷から出た二人は手を繋いで歩く。
 ローサを寮まで送ったフレデリクは考え事をしていた。
 次に進むにはどうしらいいのだろうかと。

 両親を先に説得する。それともオルブライト公爵に先に……いや、まずはローサさんに結婚を申し込もう。

 フレデリクはローサを逃さずに、確実に手に入れる方法を考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

処理中です...