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86 音楽鑑賞

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 大劇場に到着すると中に入って貴賓席に座った。
 三人が着席をしてからしばらくすると楽器演奏が始まった。

 ローサは、私が居た世界とほとんど変わらない楽器を使っているんだなと思った。

 素晴らしい演奏に聞き入っている三人。
 しかし、しばらくするとローサがうとうとし始めた。

 フレデリクはすぐに気づきローサを肘で突く。

「ローサさん。公爵令嬢は外でうとうとしないよ。貴賓席だから誰に見られているか分からない。もう少しだから頑張って」

 フレデリクは小声でローサに話しかけた。

「は、はい」

 ローサが睡魔と戦う事数十分。なんとか起きたまま最後まで演奏を聴く事が出来た。
 その間フレデリクは愛おしそうに、うとうとするローサを見つめていた。

「素敵な演奏でしたね」

 ローサの目はしっかり覚めたようで当たり障りない感想を述べた。

「おう。迫力があったよな」

 ローサとレイが話している様子を少し離れた席からじっと見つめる人物がいた。

「あれは……オルブライト公爵令嬢とたぶん第二王子よね。もう一人は……? あのヒゲは変装に見えるけれど、まさかね」

 その人物は訝しげにローサ達を見ていたが、三人共その視線に気づかない。

 大劇場から出たローサ達。

「この後どっか寄りたい所でもあるか?」

「ドウバナちゃんに会いたい!」

「えっ。ローサさんまた行きたいの?」

「ええ。だって会ったのは先週ですよ。ドウバナちゃんが寂しがっているわ」

「……植物は寂しがらないよ」

「ドウバナちゃんって?」

 戸惑った顔のレイ。

「ドウバナちゃんは、動物食い花の事よ。とって可愛いの」

「可愛いかはともかく、植物の動物食い花だ」

「ドウバナちゃんは可愛いわよ!」

「それはローサさんだけかもしれないからね」

「まあ。フレデリク殿下は意地悪ね。ドウバナちゃんはあんなに可愛いのに」

「最近のローサさんはドウバナちゃんばかりだから」

「あら、やきもちですか? フレデリク殿下かわいいー」

「……」

 ローサはムスッとして黙ったフレデリクの頬を指で突いた。

「ふふ。フレデリク殿下は可愛いですね」

「おい。お前ら人前イチャつくなよ」

 面白くなさそうに言ったレイ。
 パッとフレデリクから離れたローサ。

「コホン。で、動物食い花って何?」

「動物食い花は動物食い花よ」

「ローサさん。それ説明になっていないから。動物を食べる花だ」

「動物を食べる花? それ花?」

「ええ。花よ」

「見た方が早いかもしれないな」

「そうね。ドウバナちゃんに会いに行きましょう!」

 ローサ達は植物園に向かって歩き出した。
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