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  メイドと護衛も私服を着ている。お兄ちゃんとお姉ちゃんみたいで新鮮だ。

  馬車から降りた。今はロンを肩に乗せている。
  さて、何処に行こうかしら?

  とりあえず、町の中を散策した。
  新しい雑貨屋さんが出来ていたので中に入る事にした。

  色々な小物があってかわいい。
  ふと、リボンが気になった。

  ロンにつけたらかわいいわよね。
  ピンクが似合いそうだなー。けれど、ピンクのリボンはつけさせてくれないだろうなー。

  とりあえず私はピンク色と緑色のリボンを買った。
  その後は昼食を食べた。
  
  町にある公園にも来た。
  ロンとのんびりしたいと言い、メイド達には少し離れてもらい、ベンチに座る。

「ふふふ。さっき綺麗なリボンを見つけました」

  私はロンにピンク色と緑色のリボンを見せた。

「両方共綺麗な色だな」

「気に入っていただけましたが?」

「綺麗だと思うぞ」

「では、プレゼントです」

  私はロンにピンク色のリボンをつけた。

「なっ、何をする。これでは女の子みたいではないか!」

「じゃあ、緑色にします?」

「どちらも、つけたくないのだが」

「今日の記念にと思ったのですが……」

「今日の記念……分かった。緑ならつけてもいいぞ」

  わーい!  やったね!

「ありがとうございます」

  私はロンに緑色のリボンをつけた。
  ロンの背中に緑色のリボンがついていて中々かわいい。

「ロン、似合っていますよ」

「そうか」

「これから行きたい場所はありますか?」

「そうだなー」

  ロンは考えている様子だった。
  すると、前から人がやって来た。

「アネモネ嬢?」

「まあ、デュラン様」

  えっと、要注意人物のメリベーン侯爵家の長男の弟で、ロイアン殿下の従者だったわね。

  ん?  ロイアン殿下の従者?
  ロンを押し付けて帰りたい。

「お出掛けですか?」

「ええ、まあ。よろしければお隣座ります?」

「ありがとうございます」

  そう言うとデュラン様は、私の隣に腰掛けた。

「デュラン様もお出掛けですか?」

  ロイアン殿下を探しに町に来たのだろか?

「ええ、まあ、そんな所です」

  あー、きっとロイアン殿下を探しているんだ!
  探し人はここにいますよー!

「デュラン様、ネズミはお好きですか?」

「ネズミ……まあ、好きか嫌いかと聞かれたら、好きですね」

「今、私ネズミを飼っていまして……」

「ほう」

  私はロンを手のひらに乗せて見せた。

「リ、リボン……」

  デュラン様は口元を手で覆い顔を背けた。
  デュラン様は笑いを堪えているのだろうか?
  ネズミにリボンをつけるのは、そんなにおかしな事だろうか?

「とてもかわいらしいネズミ様ですね」

「様?」

「ああ、いえ。リボンをつけているので、大変可愛がっているのかと思いまして」

「ああ、このリボンは今日のお出掛けの記念に買いました」

「そうなんですか」

「名前がロンって言うんですよ」

「ほう、ロンくんと言うのですね」

「あら、雄と分かったのですね。オーウェン様は雌と勘違いをしてしまったんですよ」

「そうなんですか」

  デュラン様は優しく微笑んだ。

「ところで、ネズミを飼いたくありませんか?」

「ネズミを飼う?」

「よろしければ、ロンをお譲りしますよ」

「えっと……アネモネ嬢はロンくんを大変可愛がっているのですよね」

「ロンの事は可愛いいのですが、ネズミを飼うのはとても大変だと学びました。私よりしっかりと育ててくれそうな方が見つかりましたら、お譲りしようと思っていましたの」

「ほう。申し訳ありませんが、私はこう見えて忙しい身でして……アネモネ嬢の方が適任に思えます」

  交渉は不成立ね。残念だわ。

「そうですか……分かりました」
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