かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日は待ちに待った、アリスと二人で会う日。
  お昼過ぎにアリスが来てくれる事になっている。

  馬車の音が聞こえたので、ロンを肩に乗せて外に出た。

「アリス、いらっしゃい」

「アネモネ、お待たせしましたわ」

  うーん、待っていたよー。
  何日もね。アリスさん、ごめんなさい。アリスにはロンの運命の人になってもらいまーす。
  アリスにチュチュとしてもらって、ロイアン殿下とはさようならー。ふふふ。

「ちょっと、何一人で笑っているのよ」

「ううん。何でもない。全然待ってないわ。我が家まで来てくれてありがとう」

「ええ」

  私はアリスを自室に招いた。
  メイドはお茶とお茶菓子を用意すると退出して行った。

「肩に居る子がロンちゃん?」

「そうそう。ロンちゃんじゃなくて、ロンくんよ」

「雄なのね」

  アリスは私の肩の上に居るロンをじっと見ていた。
  今日はロンが嫌がったので、リボンをつけていない。

「アリスが嫌じゃなければ、ロンをテーブルの上に下ろしていいかしら?」

「ええ、勿論よ」

  アリスの許可を貰ったので、ロンをテーブルの上に移動させた。

「ロン、お友達のアリスよ」

「アリスと申します。ロンくんよろしくね」

「チュー!」

「まあ、かわいいわ。まるで言っている事が分かっているみたいね」

  人間ですから……。

「そうなの。ロンは賢いのよ」

  これは、いい感じかも。 

「良ければロンを触ってみる?」

「いいの?」

「勿論よ。毎日お風呂に入っているから綺麗よ」

「毛並みもとても綺麗だものね」

  ロンはアリスの方に近づいて行った。
  アリスがロンの背中をそっと撫でる。

「まあ、かわいい」

  いい感じね。二人はお似合いね。
  あれ?  なんか複雑。
  あっ、これが嫁入り前の父親の気持ちね。なるほど!

「ふふ。良かったら手のひらに乗せてみて」

「いいの?」

「勿論よ。ロンは噛んだりしないから大丈夫よ」

  キスは迫って来るけれどね。
  アリスはロンを手のひらに乗せた。

「金色って珍しいわね、何処で出会ったの?」

「そうなの。珍しいわよね。屋敷の前で会ったわ」

「まあ、そうなの。森から迷い込んで来たのかしら?」

「たぶんそうじゃないかしら?」

  きっと、森で迷って出てきた時には、ネズミになっていたのよね。

「いいなー、私もペットを飼いたいなー」

  その言葉、待っていましたわ! 

「よろしければ、ロンをお譲りしますよ」

「それはさすがに出来ないわ」

「えっ、何故?」

「アネモネがロンくんを可愛がっているのを知っているもの。そうね、私も飼うならネズミにしようかしら、そうしたらロンくんにお友達が出来るわね」

  ロンを可愛がっていたのは、ずっと前。ロイアン殿下だと知る前なの。
  あー、しまった。困った。

「アリスもネズミを飼うの?  なら、ロンを是非!」

「ふふふ。アネモネったら……そんな事を言ったらロンくんが悲しむわよ。ほら、なんだか寂しそうよ」

  ロンは私の顔をじっと見ていた。
  うっ、そんな目で見られたら、心が痛いじゃない。

「ロンくん、アネモネの所にお戻り」

  アリスはそう言うとロンをテーブルの上に下ろした。
  ロンは私の所に真っ直ぐ戻って来る。

  うっ、かわいい。
  くそう!  今日はアリスにロンをお持ち帰りしてもらおうと思っていたのに。
  罪悪感で胸が苦しかった。

「ほら、アネモネもそんな顔をするなら、譲るなんて言ってはいけないわ」

「分かったわ」

「ほら、ロンくんをギュっとしてあげるのよ」

  私はロンを両手で掬った。

「ごめんね。ロン」

「チュー」
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