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二、一時帰国
(六)
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しかし、それらの記憶も、帰国した今となっては、遠い過去か、全く別世界のような感覚で脳裏に蘇っていた。まるで他人事のようだった。
「よく、がまんしてきたな。」と、布団の中に寝転がりながら、天井に向かって、つぶやいた。誰も、自分に、このような言葉をかけてくることはあるまいから、自分で自分を慰めてみたくなった。
しかし、同時に、「この程度のことは、人によっては大したことじゃないのかもしれない。」と思う自分もいて、自分の情けなさに気が滅入った。
世の中には自ら進んで海外に出て行く人は大勢いる。そういう人たちにとって、海外は、飛躍のチャンスであり、成功を勝ち取るステップである。彼らから見れば、海外出張の機会を偶然与えられたにも関わらず、それを苦にして早い帰国を切望する芳野の気持ちは理解できないであろうし、折角のチャンスをドブに捨てる馬鹿なやつと呆れているかもしれない。そう思うと、自分は平凡な人間として、世間に埋もれて終わる小さい人間なんだと嘆息した。しかし、すぐに、所詮、大抵の人間は、そういうものなのだと思いなおして、それ以上、考えることはやめにした。また、一週間後には米国に戻るのだ。くだらない事で思い悩んでも仕方ない。
芳野は、せっかくの一時帰国なのだから、行ける所には行っておこうと言う気持ちが起こって来た。しかし、いざ、どこに行こうかと言う段になって、はたと悩んでしまった。特に行きたいところが思い浮かばないのだ。こんなときは、とりあえず、鉄道会社のCMではないが、京都に行っておこうかと思った。京都に行けば、何かしら、見るところはあるだろうと。実に安直な発想であった。
そういえば、去年の秋に訪れた伏見稲荷大社はどうだろうか、と思い当たった。
日本全国至る所にあるお稲荷さんの総本社を、去年、初めて訪れたのだ。毎年、初詣の参拝者数上位に名を連ねる全国的に有名な神社だが、東京に住んでいる芳野には縁遠い神社でもあった。
去年参拝し米国出張の無事を祈願したから、今度は、無事、一時帰国できたことの報告に伺おうと、わざわざ伏見まで出向く理由も考え出してみた。
時計を見た。
今から、支度して、東京駅に向かえば、新大阪に向かう新幹線の始発に乗れる。京都には九時くらいには着くだろうか。たっぷりと時間ができる。ついでに他の神社も回ってこようかなどと思いを廻らした。
「よく、がまんしてきたな。」と、布団の中に寝転がりながら、天井に向かって、つぶやいた。誰も、自分に、このような言葉をかけてくることはあるまいから、自分で自分を慰めてみたくなった。
しかし、同時に、「この程度のことは、人によっては大したことじゃないのかもしれない。」と思う自分もいて、自分の情けなさに気が滅入った。
世の中には自ら進んで海外に出て行く人は大勢いる。そういう人たちにとって、海外は、飛躍のチャンスであり、成功を勝ち取るステップである。彼らから見れば、海外出張の機会を偶然与えられたにも関わらず、それを苦にして早い帰国を切望する芳野の気持ちは理解できないであろうし、折角のチャンスをドブに捨てる馬鹿なやつと呆れているかもしれない。そう思うと、自分は平凡な人間として、世間に埋もれて終わる小さい人間なんだと嘆息した。しかし、すぐに、所詮、大抵の人間は、そういうものなのだと思いなおして、それ以上、考えることはやめにした。また、一週間後には米国に戻るのだ。くだらない事で思い悩んでも仕方ない。
芳野は、せっかくの一時帰国なのだから、行ける所には行っておこうと言う気持ちが起こって来た。しかし、いざ、どこに行こうかと言う段になって、はたと悩んでしまった。特に行きたいところが思い浮かばないのだ。こんなときは、とりあえず、鉄道会社のCMではないが、京都に行っておこうかと思った。京都に行けば、何かしら、見るところはあるだろうと。実に安直な発想であった。
そういえば、去年の秋に訪れた伏見稲荷大社はどうだろうか、と思い当たった。
日本全国至る所にあるお稲荷さんの総本社を、去年、初めて訪れたのだ。毎年、初詣の参拝者数上位に名を連ねる全国的に有名な神社だが、東京に住んでいる芳野には縁遠い神社でもあった。
去年参拝し米国出張の無事を祈願したから、今度は、無事、一時帰国できたことの報告に伺おうと、わざわざ伏見まで出向く理由も考え出してみた。
時計を見た。
今から、支度して、東京駅に向かえば、新大阪に向かう新幹線の始発に乗れる。京都には九時くらいには着くだろうか。たっぷりと時間ができる。ついでに他の神社も回ってこようかなどと思いを廻らした。
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