稲荷詣で

斐川 帙

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三、伏見稲荷

(十二)

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 この稲荷鎮座由来記は、空海の弟子である真雅しんがが著したものなので、記述には仏教説話的な色合いが濃く滲み出ている。例えば、原文では、稲荷神が「化度けど利生りしょう方便ほうべんめぐらす」と書かれているが、これは神仏習合した稲荷神(荼枳尼天だきにてん)の仏教側から見た解釈で書かれているものである。ちなみに、「化度」とは、衆生しゅじょう(生きとし生けるものすべて)を教化きょうけ(仏の道に導くこと)して済度さいど(苦しみから救うこと)することであり、「利生方便を廻らす」とは、衆生に利益りやくを与えようとあらゆる手を尽くすと言う意味である。
 実際のところ、狐が稲荷神の眷属となった経緯は、明らかになっているわけではないが、狐が田の神の使いとされていた民間信仰が広く存在していたことがわかっているので、それが、狐が眷属とされた過程に関わっている可能性はあるかもしれない。

 伏見稲荷大社では、現在、一年を通じて、様々な祭礼、神事を執行しているが、その中でも五月の稲荷祭(還幸祭)と並んで、毎年二月の初午の日に催行される初午大祭は、平安時代の頃から多くの参詣者で賑わう大祭である。
 初午の日とは、どういう日かと言うと、昔は、日ごとに十二支と十干の組合せを順に割り振っていたのだが、例えば、天長四年正月十九日にはかのと、つまり、十干の辛と十二支の巳、その翌日の一月二十日はみずのえうまというようにである。二月の初午というのは、この割り振りで、二月で最初に午が振られる日を指す。従って、初午大祭は毎年開催される日が変わる。
 この初午大祭の起源についてはいくつかの史料で触れられているが、中でも神祇拾遺の記述に依ればこのようなものである。

二月初午の御祭礼は、和銅年中(七〇八~七一五)に、稲荷山三ヶ峰に神が御鎮座された時が偶々二月初午の日であったので、これにちなみ、今、この日をもって恒例の祭事を挙行し奉るものである。
(神祇拾遺)
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