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五、深草別業
(二)
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熊鷹社からはまっすぐ下りの参道を下りていき、来るときは奥社奉拝所から登って来たのだが、今度は、そちらを経由せず、そのまま下って行った。十石橋を渡ったところで右に曲がり、権殿の脇まで歩いてきた。そのとき、お守りや御札などが並べられているところが目に入った。折角、参拝したのだから、お守りなどを購入しようと思い立ち、ここで二人とは別れることにした。それで、その旨伝えると、二人は、軽く頭を下げて、大鳥居の方角に去って行った。その後ろ姿を見送りながら、変わった人たちだったなと、すこし、別れが惜しい気もしたが、今日中に自宅に帰るつもりだったので、いつまでも付き合っているわけにもいかない。ただ、気になったのは、とても奇異な恰好をしている二人なのに、周りにいる参拝客や観光客は一切注意を払わない様子なのだ。改めて不思議だと感じつつも、彼らは巫女さんか何かだと思い込んでいるかもしれず、そう考えると、神社の境内の光景としては、そんなにおかしなことではないと思っているのかもしれない。
芳野は、陳列されている色とりどりのお守りに目移りしながら、いくつかを手に取って、若い巫女さんに手渡して、購入した。それをリュックに入れると、楼門をくぐって、大鳥居に向かって白い参道を駅に向かって歩いた。そして、大鳥居を抜けて「伏見稲荷大社」と穿たれている石の巨大な標柱のもとで一休みしようとしたところ、目の前に、いつの間にか、あきおぎが立っていた。びっくりした芳野は、帰ったんじゃなかったのか?と、周りを見回した。稲荷駅の駅前の道路脇に二両の網代車が牛に繋がれて停車しているのが目に入った。
網代車とは、竹を削った薄板や檜皮で編んだ網代で作った屋形に、彩色を施し文様を描いた生地を張った牛車で、最も一般の常用に使われた牛車である。側面には物見と呼ばれる小窓がついている。
牛のそばには、浅黄の水干に黄橡の小袴を穿いた中年男性と、牛車を挟んで、烏帽子を被った狩衣姿の若い男が立っていた。中年の男の方は、手に笞を持っていて、頭には何も被らず、お尻にまでかかる長い垂髪を首の辺りで結っていた。足元を見ると裸足だった。若い男の方は、白の狩衣に縹の指貫を穿いて太刀を佩いており、襟元から覗く単は萌黄で、足には草鞋を履いていた。奥の一両の周りにも人が立っていたが、そちらはよく見えなかった。
もちろん、芳野には、牛車が網代車と言う種類であることも、彼らの服装の種類も色の名前も分からない。芳野が思ったのは、牛車が置いてあって、平安時代風の服装をした男が「いる」くらいである。
芳野は、陳列されている色とりどりのお守りに目移りしながら、いくつかを手に取って、若い巫女さんに手渡して、購入した。それをリュックに入れると、楼門をくぐって、大鳥居に向かって白い参道を駅に向かって歩いた。そして、大鳥居を抜けて「伏見稲荷大社」と穿たれている石の巨大な標柱のもとで一休みしようとしたところ、目の前に、いつの間にか、あきおぎが立っていた。びっくりした芳野は、帰ったんじゃなかったのか?と、周りを見回した。稲荷駅の駅前の道路脇に二両の網代車が牛に繋がれて停車しているのが目に入った。
網代車とは、竹を削った薄板や檜皮で編んだ網代で作った屋形に、彩色を施し文様を描いた生地を張った牛車で、最も一般の常用に使われた牛車である。側面には物見と呼ばれる小窓がついている。
牛のそばには、浅黄の水干に黄橡の小袴を穿いた中年男性と、牛車を挟んで、烏帽子を被った狩衣姿の若い男が立っていた。中年の男の方は、手に笞を持っていて、頭には何も被らず、お尻にまでかかる長い垂髪を首の辺りで結っていた。足元を見ると裸足だった。若い男の方は、白の狩衣に縹の指貫を穿いて太刀を佩いており、襟元から覗く単は萌黄で、足には草鞋を履いていた。奥の一両の周りにも人が立っていたが、そちらはよく見えなかった。
もちろん、芳野には、牛車が網代車と言う種類であることも、彼らの服装の種類も色の名前も分からない。芳野が思ったのは、牛車が置いてあって、平安時代風の服装をした男が「いる」くらいである。
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