137 / 155
七、三条烏丸の御所
(三十六)
しおりを挟む
このまま戦っても、間違いなく斬り殺されるだろう。
一人が斬りかかってきて、対応したところを、もう一人が足元を薙ぎ払ってくる。それで足を斬られて倒れこみ、歩けなくなったところで、乗っかられて首を落とされる。そんな風に、芳野は、自分が殺される場面を想像して、抵抗する気力を失いかけた。
「おい、どうだ?見つかったか?」
声が聞こえた方を見ると、先程の騎馬武者が一騎、戻ってきていた。長刀の武者たちは、思わず芳野から視線を外して振り返った。この機を逃すまいと、芳野は、急いであきおぎのもとに向かうと、手を取って、築地塀の方へ引きずるように走って逃げた。それに気づいた長刀の武者の一人が芳野を追いかけた。騎馬武者は、それを見て、追いかける武者を呼び止め、
「その男はいい。放っておけ。それより信西を探せ。未だに見つかってないみたいだぞ。」
「逃げられたんじゃないのか?」
「わからんが、見つかるまでは探し続けるぞ。信西一味を討つのは、右衛門督様の強い御意思だ。左馬頭様の厳命でもある。討ち漏らしたら、坂東武者の名折れだ。」
「しかし、北の対の中を散々探したが、それらしいやつは、どこにもいなかったぞ。」
「怪しいやつは、全員、射捨てたつもりだが、まだ、生き残ってるってことか?」
その時、武者たちの脇を、萎烏帽子に直垂の男、数人が走って逃げて行った。更に、狩衣に烏帽子を被った、院庁の官人と思われる男たちも、逃げて来た。
院庁とは、院宣や院庁下文などの文書の発行や管理、所有する荘園の管理などを行う院の家政機関である。院の御所には、院庁の役人がいて、院庁の官舎として使用された建物も存在していた。
騎馬武者は、逃げる官人等に気づくと、素早く矢を番えて、狩衣の官人の一人を射た。そして、続く矢で、二人目の官人を射た。矢は、首に刺さり、もう一人は腹に刺さった。官人は、転んで呻いた。長刀の武者が近寄って、長刀を放り出すと、倒れている官人に馬乗りになって、腰刀で首を切り裂き、とどめを刺した。もう一人の武者も腰刀を抜いて、もう一人の倒れている官人の胸に刺した。
騎馬武者は、二体の屍に近づくと顔を確認して「違うな。」と呟いた。そして、「首を取って、後で確認してもらってくれ。」と言い置いて、その場を去った。
この間に、直垂の男たちは、逃げ去った。
長刀の武者の一人は官人たちのとどめを差し終えると、急いで、逃げ去った男たちを追いかけて、背後から足を薙ぎ払った。長刀は、逃げる男たちのうち一人の脛を後ろから切断する感じで入り、払われた男は、脛から持ってかれるようにして転んだ。ふくらはぎに深い刀創を負って、大量に出血した。もう一人の男は、形振り構わず走ったが、地面を這う巨木の根に躓いてもんどりうって転んだ。転んだ時に転石に額を打ったようで血が滲んでいた。長刀の武者は、すかさず長刀で頭部を打った。ごつんと鈍い音がして、転んだ男は頭を抱えてもがき苦しんだ。武者は長刀を男の腹に突き刺して、抜いた。大量の血が流れて、男は段々と動かなくなっていった。
「こいつらも首を取っておくか。」と言う声が聞こえた。
一人が斬りかかってきて、対応したところを、もう一人が足元を薙ぎ払ってくる。それで足を斬られて倒れこみ、歩けなくなったところで、乗っかられて首を落とされる。そんな風に、芳野は、自分が殺される場面を想像して、抵抗する気力を失いかけた。
「おい、どうだ?見つかったか?」
声が聞こえた方を見ると、先程の騎馬武者が一騎、戻ってきていた。長刀の武者たちは、思わず芳野から視線を外して振り返った。この機を逃すまいと、芳野は、急いであきおぎのもとに向かうと、手を取って、築地塀の方へ引きずるように走って逃げた。それに気づいた長刀の武者の一人が芳野を追いかけた。騎馬武者は、それを見て、追いかける武者を呼び止め、
「その男はいい。放っておけ。それより信西を探せ。未だに見つかってないみたいだぞ。」
「逃げられたんじゃないのか?」
「わからんが、見つかるまでは探し続けるぞ。信西一味を討つのは、右衛門督様の強い御意思だ。左馬頭様の厳命でもある。討ち漏らしたら、坂東武者の名折れだ。」
「しかし、北の対の中を散々探したが、それらしいやつは、どこにもいなかったぞ。」
「怪しいやつは、全員、射捨てたつもりだが、まだ、生き残ってるってことか?」
その時、武者たちの脇を、萎烏帽子に直垂の男、数人が走って逃げて行った。更に、狩衣に烏帽子を被った、院庁の官人と思われる男たちも、逃げて来た。
院庁とは、院宣や院庁下文などの文書の発行や管理、所有する荘園の管理などを行う院の家政機関である。院の御所には、院庁の役人がいて、院庁の官舎として使用された建物も存在していた。
騎馬武者は、逃げる官人等に気づくと、素早く矢を番えて、狩衣の官人の一人を射た。そして、続く矢で、二人目の官人を射た。矢は、首に刺さり、もう一人は腹に刺さった。官人は、転んで呻いた。長刀の武者が近寄って、長刀を放り出すと、倒れている官人に馬乗りになって、腰刀で首を切り裂き、とどめを刺した。もう一人の武者も腰刀を抜いて、もう一人の倒れている官人の胸に刺した。
騎馬武者は、二体の屍に近づくと顔を確認して「違うな。」と呟いた。そして、「首を取って、後で確認してもらってくれ。」と言い置いて、その場を去った。
この間に、直垂の男たちは、逃げ去った。
長刀の武者の一人は官人たちのとどめを差し終えると、急いで、逃げ去った男たちを追いかけて、背後から足を薙ぎ払った。長刀は、逃げる男たちのうち一人の脛を後ろから切断する感じで入り、払われた男は、脛から持ってかれるようにして転んだ。ふくらはぎに深い刀創を負って、大量に出血した。もう一人の男は、形振り構わず走ったが、地面を這う巨木の根に躓いてもんどりうって転んだ。転んだ時に転石に額を打ったようで血が滲んでいた。長刀の武者は、すかさず長刀で頭部を打った。ごつんと鈍い音がして、転んだ男は頭を抱えてもがき苦しんだ。武者は長刀を男の腹に突き刺して、抜いた。大量の血が流れて、男は段々と動かなくなっていった。
「こいつらも首を取っておくか。」と言う声が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる