四阿(あずまや)

斐川 帙

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(四)

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テーブルをはさんで正面にショートボブの丸顔の女の子が座っていた。
ノースリーブの濃いくれないのワンピースを着ていて、胸元には淡い黄色の小さなリボンがついていた。
目はぱっちりとして澄んだ瞳がこちらを凝視している。

周りを見ると、雨は治まり、満開の紅梅が咲き誇っていた。

ときどき、女の子は明滅する。
意識が朦朧としてきたのかと疑った。

女の子は、寄り添い、もたれ掛かり、なついてくる。
女の子は、手を握り、体温を確かめるように頬にあてる。
女の子は、にっこりと笑みを浮かべて、唇を重ねた。
甘い香りがたゆたう。

ふと、気づくと、咲き誇っていた梅の花は一輪だけになっていた。
女の子はいなかった。

君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をも知る人ぞ知る

ふと、脳裏にこの歌が浮かんだ。
一輪だけ残った梅の花を見つめた。

雨が穏やかになって来た。

相変わらず雷は轟き、あちこちで閃光が走るが、あきらかに雨脚は弱まっていく。
穏和になった雨脚に、雨は小雨となる。
やがて、日が差した。

公園の職員の女性がやってきて、そろそろ閉門の時間だと告げる。
フェンスの入り口が閉まるようだ。
急いでリングノートとペンをかばんにしまい、その場から立ち去った。

八月の午後四時は、まだ日は高く、曇天は退潮して青空がそこかしこに覗き、陽光が空を明るくしていた。


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