早朝のバス停

斐川 帙

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(二)

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 すっとそよ風が吹いた。ちょっと冷たい。
 スマホを背広の内ポケットから取り出して、時刻表示を見ると午前七時二十分だった。まあ、大体、いつも通りの時間だ。ただ、今日は若干、家を出るのが遅かったので、バス待ちの列の最後尾になったが、いつも乗るバスは七時三十分なので、全然、余裕はある。朝は道が混んでいることもあって、五分程度遅れてくることも多い。

 近くの路肩には花がたくさん置かれていた。ただ、ほとんどの花は少ししなびて来ていて、そこに置かれてから日が経っていることを示していた。
 最近、ここで大きな事故があったのを思い出した。五、六人の死者が出たらしい。老夫婦が乗っていた車がハンドル操作を誤ってバス停に突っ込みそうになって、そのまま市役所通りに飛び出して、通りかかった乗用車に突っ込んだらしい。老夫婦はもちろん、巻き込まれて小学生の子供も亡くなったとか。近所のおばさんたちが、そんな内容の話をしているのを耳にしたことがある。年取ったら免許返納しないとだめよねえと、おばさんたちは眉をひそめながら、ひそひそ、話していた。私は、今時珍しく運転免許を持っていないので、その話が聞こえてきたときは、自分には関係ない話だなと感じたのを覚えている。

 私は今、工作機械の専門商社の情報システム部門に勤めている。この会社は、規模はそれほど大きくないが、歴史はまあまあ古くて、戦後すぐの昭和三十年代初頭に創立したそうだ。ただ、私は中途入社組で、昔のことはよく知らない。
 この会社に入る前は、コンピュータメーカでインフラ系のエンジニアをしていた。メーカだが、システム開発も請け負っていて、私はシステム構成やネットワーク構成などのインフラ系の設計を仕事にしていた。そこで十年ほど、勤めて、今の会社の情報システム部に転職した。メーカ時代はハードウェアに関しては自社製品を優先する縛りがあったので、やりにくいところがあったが、この会社では、自社に導入するシステムについては、自由に製品を選定できるので、単純に機能や価格だけで比較検討できて、やり甲斐があった。

 今、担当している直近の作業は、今度、全社的に導入しようとしている会計システムの調査である。各部門でバラバラに管理しているデータを一元的に管理するために、全面的に一つのシステムで入れ替えようとしていた。現状は、各部門で管理しているデータを、中央の会計システムで扱いやすいように各部門でデータを加工して、中央の会計システムに転送して処理するという形で運用しており、これを、今度は、データの入力から単一の会計システムでカバーしようと目論んでいた。私の所属する情報システム部門は、このプロジェクトの実行部隊として、コンサル会社にも協力してもらって、実現方式や既存製品の調査検討などを行っていた。その後、実現方式や導入製品、システムの要件などが固まったら、外注先を探して、開発を依頼すると言う流れになる。

 現時点では、実現方式に関しては、既存製品を軸にして、それをカスタマイズする形で周辺システムを開発して、実現する方式で話が進んでいた。その中で、現在の私の担当作業は、核となる既存製品の候補を三つに絞って、機能や価格などの調査、比較検討の結果をまとめた資料の作成で、今日は、その中間結果をプレゼン資料にまとめる作業を進める予定だった。
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