リアナ3 約束の王国

西フロイデ

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1 雪と灰のなかの婚姻

デイミオンの目覚め ③

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(行かなければ……リアナが今、俺を必要としているはずだ)

 起き上がろうとすると、「いけません!」と慌てた声が降ってきた。
妖精罌粟エルフオピウムがまだ効いているのです。急に動かれては……」
 〈癒し手〉の言うことは本当らしく、身体を動かそうとしてもほとんど力が入らない。呪詛の代わりにうめき声が漏れた。
(なぜ、そんな薬を)
 握った拳を振りおろすだけの力もないのが悔しい。リアナはあのとき、デーグルモールかもしれないと不安に怯えながら、それでも彼に打ち明けようと勇気を振り絞っていたというのに、自分がいま側に行かなくてどうするんだ? 

「エンガス卿を呼んでくれ。状況が聞きたい……」
 だが、その言葉が終わらないうちに、当の本人が入ってきた。続き間のほうに待機していたのだろうか。彼は〈癒し手ヒーラー〉の長なので、それ自体はおかしなことではなかった。

 老人は無言で寝台の近くに立つと、若いヒーラーに二、三の指示を与えた。ヒーラーはうなずいて立ちあがり、彼を手伝いはじめる。

「痛みのほうはいかがかな」
「大事ありません」
 〈癒し手〉に助けてもらいようやく上半身だけ起きた状態だったが、デイミオンはそっけなく答えた。エンガスは相変わらず読めない表情をしている。

 ヒーラーが血と膿で汚れた繃帯を脇台に置くと、エンガスは王太子の傷をあらためにかかった。
「死んでもおかしくなかった。肺が大きく傷ついていて……生きているのが不思議なくらいだ」
「だが、生きている」
 デイミオンは強がったが、生皮を剥がれるような痛みにうめいた。ヒーラーが、傷口にあてた布を剝がしたのだ。

「それより、王は? エサル卿の部隊が陛下を救出したのでしょう? 卿から報告がほしいのですが」

「王はご無事だ。
 デイミオンは、その言葉に悪い予感がした。
? どういうことです?」
を衆目にさらすわけにもいかないだろう」エンガスは含みのある言いかたをした。「先だっても警告したはずだ。ほかならぬあなたが、ご存知なかったとは言うまい」
 デイミオンは平静を装いつつも、内心、激しく動揺した――エンガスの言葉がなにを指しているにせよ、なにかとてつもなく恐ろしいことが、彼の知らないところで起こってしまったのだとわかった。

「――リアナの状態は……」
 二つの心臓が激しく鼓動するのを感じた。呼吸が浅く、早くなる。
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