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1 雪と灰のなかの婚姻
スノーフォール ⑥
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……がちゃがちゃとカトラリーの音がするのを、ぼんやりと聞いている。いつの間に食事の席についたのか、わからない。また同じ制服、違う顔の兵士だった。
「デイミオンはどこ?」
「存じません、陛下」
リアナはフォークを手に取り、無感動にうなずいた。
「スープをお温めになりますか?」
首を横に振る。「デイミオンを呼んで」
兵士は何ごとかを答えた。が、うまく聞き取れない。
兵士が退室するまで、リアナは何をするでもなく、食卓の上を眺めていた。
そして、(何もかもが、とても冷たそうだわ)と思った。サラダの葉野菜にはきらきらと小さな白い粒がきらめいていた。ポタージュは雪の日の泥土のようにさくさくしている。鶏は凍っていて、ナイフが肉を通らなくなっていた。あきらめてナイフを置こうとするが、ふと思い出して、テーブルの脚に刻みを入れた。忘れないようにしなくちゃ。でも、何を?
目の前に、雪の結晶がゆっくりと舞い降りているのが見えた。息をのむほどに精緻な、それぞれに違った形をしている。
腕を差し出すと、雪片が落ちてきて、肌の上に長い間とどまっていた。身体中を蔦のように覆う黒い紋様と、白い雪の結晶の取りあわせに、リアナはしばらく見とれていた。音を立てるものもない冬の森みたい。
部屋のなかを、まるではじめて目にする光景のように、ゆっくりと見まわす。彼女は、白と黒と、その間のあらゆる灰色の色あいだけがある世界にいた。
次に兵士がやってきたとき、リアナはもう、テーブルに並べられた食事には興味を持てなくなっていた。
「お腹がすいたわ」リアナは呟いた。
並べはじめられていたカトラリーが落ちて、高く金属的な音が部屋中に鳴り響いた。兵士の心臓は、猟師に見つかった兎のように跳ねまわっている。リアナは鼻を動かして、その温かく甘い血の香りを吸いこんだ。
「お腹がすいたわ」リアナは繰りかえした。「喉が渇いたの」
男は真っ青な顔で、もごもごと不明瞭な言葉を口にした。それが不始末への謝罪ではなく、助けを求める祈りだということにも気がつかないうちに、兵士は逃げるように退室した。
部屋の中に、季節はずれの雪が降りつづけている。
「デイミオンはどこ?」
「存じません、陛下」
リアナはフォークを手に取り、無感動にうなずいた。
「スープをお温めになりますか?」
首を横に振る。「デイミオンを呼んで」
兵士は何ごとかを答えた。が、うまく聞き取れない。
兵士が退室するまで、リアナは何をするでもなく、食卓の上を眺めていた。
そして、(何もかもが、とても冷たそうだわ)と思った。サラダの葉野菜にはきらきらと小さな白い粒がきらめいていた。ポタージュは雪の日の泥土のようにさくさくしている。鶏は凍っていて、ナイフが肉を通らなくなっていた。あきらめてナイフを置こうとするが、ふと思い出して、テーブルの脚に刻みを入れた。忘れないようにしなくちゃ。でも、何を?
目の前に、雪の結晶がゆっくりと舞い降りているのが見えた。息をのむほどに精緻な、それぞれに違った形をしている。
腕を差し出すと、雪片が落ちてきて、肌の上に長い間とどまっていた。身体中を蔦のように覆う黒い紋様と、白い雪の結晶の取りあわせに、リアナはしばらく見とれていた。音を立てるものもない冬の森みたい。
部屋のなかを、まるではじめて目にする光景のように、ゆっくりと見まわす。彼女は、白と黒と、その間のあらゆる灰色の色あいだけがある世界にいた。
次に兵士がやってきたとき、リアナはもう、テーブルに並べられた食事には興味を持てなくなっていた。
「お腹がすいたわ」リアナは呟いた。
並べはじめられていたカトラリーが落ちて、高く金属的な音が部屋中に鳴り響いた。兵士の心臓は、猟師に見つかった兎のように跳ねまわっている。リアナは鼻を動かして、その温かく甘い血の香りを吸いこんだ。
「お腹がすいたわ」リアナは繰りかえした。「喉が渇いたの」
男は真っ青な顔で、もごもごと不明瞭な言葉を口にした。それが不始末への謝罪ではなく、助けを求める祈りだということにも気がつかないうちに、兵士は逃げるように退室した。
部屋の中に、季節はずれの雪が降りつづけている。
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