リアナ3 約束の王国

西フロイデ

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3 黒の王

セラベス、探求の旅へ ②

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 朝食に下りていくと、またもその話だった。すでにほかの男性貴族からシーズンの申し込みが数件、あっているという。セラベスは釣り書きも見ずに断った。妹と違い、細身で小柄、銀髪の兄は、神経質なまでに整った顔に懸念をたたえて切り出した。
「だが、そうは言うけどな、セララ……」
「その呼び名はやめてと言ったでしょう!」兄の言いかけるのをさえぎって、ベスは金切り声をあげた。それでなくても、セラベス・セラフィンメアという名前は非常な佳人を連想させる。それに加えてセララなどというあだ名では、まるで自分が深窓のご令嬢のようではないか。いや、まあ、深窓のご令嬢であること自体は否定しないが、メレンゲでできたようなふわふわした華奢な美少女を連想させるようなあだ名は絶対に嫌だ。
「せめて、ベスと呼んでちょうだい」
 威厳を保つべく姿勢を伸ばして言うが、兄はため息をついただけだった。
「……セラベス卿」
「なんですか、ロギオン卿」
「同母の妹とはいえおまえも領主貴族、これまでたいがいの行いには目をつぶってきたが……」
「朝からお説教は結構よ」
「いいから聞け。兄はフラれた」
「まあ」
 兄のお節介をうざったく思ってはいるが、根は善良な妹のセラベスである。顔を曇らせて続けた。「残念なこと。たしか今季のお相手は、マノン嬢? よさそうなお方でしたのに」
 ロギオンはうろんな目で妹を見たが、あきらめたように続けた。
「容姿と言い性格と言い似ていない同士と思ってきたが、私もおまえも異性にモテないという点では絶望的に似ている」
「お兄さまはねぇ、顔がこう、塔にとじこめられている薄幸の美少女みたいな感じですし、剣も騎竜術も絶望的にヘタクソですし、塔にとじこめられている薄幸の美少女を娶りたい竜騎士ならともかく、女性のお相手にはねぇ……」
 妹に悪気はないのだが、兄ロギオンの頭には空想上の剣がぐさぐさと刺さった。なんとか気を取り直して言う。「と……とにかく」

「このままではテキエリス家も断絶かと、亡き父上母上にいかに申し開きすべきかと、日々慙愧ざんきに耐えない思いで過ごしてきたわけだが、そんな兄にも嬉しい知らせが届いたのだ」
「まぁ、本当ですか? お兄さま」
「王城への出仕だぞ。黒竜大公、いや違うか、デイミオン陛下みずからのお声がかりでな」
「まぁ、デイミオンさまの」
「そこは、おまえの、あー、貢献もあるわけだが」
 ベスにはもちろん察しがついた。シーズンの最中に別の女性に乗り換えるなどといった行為で、ベスにもテキエリス家にも多大なる不名誉を与えたわけだから、当然、彼女たちに対して何らかの償いがあってしかるべきだった。
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