不・死亡遊戯の成れの果て

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1st Stage / 脱出ゲーム

第5話:1st Stage / 脱出ゲーム・5

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「ウチはそんな感じ。アンタは?」
「あたしも大して変わらないかな? よく友達と一緒にビルから飛び降りるんだけど、あたしはどこからどれだけ飛び降りても全然死なないんだよねえー」
「それって友達は?」
「毎回死んでるよー」
「それっていいのかな?」
「いいんじゃない? あたしが生き残ってることは知らないまま死んでるはずだし」
「その補足はどういう意味?」
「心中したのに相手だけ生きてたら嫌じゃん、って意味だねえー」
「そんなもん? ウチはメンヘラ属性ないから知らんけど……」

 萌え様と手を繋いで長い通路を進む。
 そんなに仲良くなった記憶はないが、萌え様の方からするりと握られてからそのままだ。お互いに不死者だからといって身体に血が巡っていないということもなく、人肌の体温をちゃんと分け合っている。
 そして前方にはパタパタ飛んでいるクロケルの背中。後ろから見ても愛らしいマスコットのような小人妖精だ。
 部屋を脱出したあと、クロケルに先導されて扉の先の通路を歩き始めたのが三分ほど前。
 ビロードが敷かれた変わり映えのしない廊下には窓も扉もなく、ただひたすらに直進するばかりだ。ゲームによくある無限回廊のようで、この館は思ったよりも巨大らしい。

「なんか死神と契約したとか、不死のなんちゃらに呪われたとか、そんな感じじゃないんだよね。何となく死ななくて、それでも人生は続くんだよ」
「ねー。死なないってわかってるせいでちょっと死にやすくなった気はするけど」
「そうそう。危機管理能力が下がったせいでこんなデスゲームに巻き込まれてるのかも。てかアンタ、このデスゲームに来るまでのことはなんか覚えてない? 拉致されたとか眠らされたとかさ」
「全然。気付いたらきみと一緒に縛られてたよねえー」

 力ない共感を貰いつつ、三途もここで目覚める前の記憶を思い出そうとする。
 いつものように自室で徹夜のゲームを終え、今回は無事に肉まんを食べ歩いてからソファーで泥のように寝ていたはずだ。何もなければ夕日と共に目覚めていたはずが、代わりにここで柱に縛られていた。家に誰かが侵入してきた記憶も、車や飛行機で運ばれた記憶もない。
 いくら三途の睡眠が深い方だからといって、拉致されている最中もずっとスヤスヤ眠っていたとは思えない。睡眠薬的なものを密かに飲まされていたのか、家ごと運ぶとか途方もない手段で搬送されたのか。この館の不自然なほどのスケールを見ているとそのくらいは起きていてもおかしくはない気もした。

「死なないんだから何でもいいっちゃいいんだけど。てかクロケルはこれでいいわけ?」
「いいって何がだ?」

 クロケルがパタパタ飛びながら振り返って応じる。

「いや、不死者が参加してるのってさ。デスゲームにならないじゃん」
「おいらは書いてあるルール通りに進めるだけだからな」
「不死者でも構いませんって書いてあるの?」
「特に書いてないけど、書いてないってことは問題ないってことだろ。医者が参加していた場合とか総理大臣が参加していた場合とか、いちいち場合分けして書かないだろ?」
「それはそう」

 クロケルは二人の不死性を目の当たりにしたときですら全く気にする素ぶりを見せなかった。「おっ、二人とも無事に脱出したな」などと無難なコメントを残しただけだ。
 クロケルは思ったよりNPC的というか、ゲーム進行以外の事柄は全く管轄ではないらしい。ゲームのルールにさえ従っていれば他の一切を問わず、ルールに記載がない限りは不死ですらも特別扱いするような事態ではないのだ。

「どうしたもんかね」

 歩きながら天井を仰ぎ、身の振り方を考えてみる。デスゲームに参加する不死者としての。
 一応、三途だってあまり意味もなく死なないようにはしている。不死は最後の手段ではあるのだ。
 不死の原理は自分でも全くわからないし、カジュアルに死んでいると人生はつまらなくなる気がする。だから他の手段があるときはそちらを優先することにしている。脱出ゲームで当初は解錠を試みていたのもそのためだ。
 とはいえ、それは逆に言えば他の手段では筋が悪そうなら不死を解禁してもいいということでもある。死を徹底的に避けているわけでもないのだし、一度攻略手段として不死を使ってしまった以上、改めて封印し直すのも縛りプレイみたいで変な感じがする。
 正直なところ、この不毛なデスゲームを真面目な顔で続けるのが若干バカらしくもなってきていた。不死者が二人も参加している時点でデスゲームの「デス」という趣旨はもう崩壊している。現実問題、さっきのように三途と萌え様は大抵のルールやギミックを不死でゴリ押せてしまうだろう。

「てか、このデスゲームってウチら以外も参加してるの?」
「全部で八人だ。おいらたち進行役の妖精は全部で四人いて、妖精一人につき参加者二人ずつで最初のゲームを担当してるぞ」
「ふーん。今も同時進行中だったり?」
「ああ。この第一ステージにも八人が参加していて、部屋を脱出して一番最初に『禁断の果実』を食べたプレイヤーが勝ちになるんだ」
「そういえばさっきもそんなこと言ってたっけ。このゲームって脱出して終わりじゃなくて、その仰々しい名前のアイテムを入手するところまでが勝利条件なんだね。てことは今も一応ゲーム中なんだ」
「まあな。だから逃げ出そうなんて考えない方がいいぞ。リングが爆発するからな」
「へー」

 首に付いたリングを軽く引っ張ってみる。ボックスの殺傷力から察するに、このリングにも人一人くらいは簡単に殺せる火薬か何かが詰まっているのだろう。
 言うて死なないけどねえ、と言おうとしたあたりで急に廊下が曲がり、いきなり大きな部屋の前に着いた。

「この部屋だな。おいらはちょっと準備があるから先に入っててくれ」
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