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サンライズ王国第2王子
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『何故…?』
ヴィクトリアの心の声が広間に響いた。振り返るアン王女にヴィクトリアは
『王女、私は貴女と共に過ごした時間の中で貴女の素晴らしい所を沢山見てまいりましたわ。それの全てが嘘だとは思えないのです。』
『嘘ではありませんわ。全て本来の私。先ほど貴女が言ったのですよ?処刑部屋へは自分で入り込んだと。それを我々がお助けしましたのよ?貴女の側に居た私と何ら変わらないわ。
だから貴女をお守りした茶会の件も、命を掛けた私に全て嘘などと言い放った失礼な態度。
本来貴女は私に謝罪しなければならない立場。ですが私も隣国の王女。そこは勘弁して差し上げるのよ?』
呆気に取られる一同をお構いなしにアン王女ペースで進んでいく時間。
『毒など無かったわ。流石の私でもアレクセイの子どもが宿っているかもしれないヴィクトリアに毒など…。』
力なく言葉を紡ぐヴィオランテにアン王女は
『ほらね?どこまでも私に罪をきせるおつもりのようね?メープル王国は。』
この期に及んで、怯むことなく立ち回るアン王女はある意味凄い。流石は社交界を渡り歩く王女である。
『あれは狂言だよ。』
今更ながらとでも言うようにアレクセイが口を開いた。
『貴方、その場にいなかったじゃない!』
『まぁね。でも母上の命によって保管されていたカップからも茶からも毒性は反応していない。そこは厳重に調査してあるから。だからこそ君たちへ辿り着く事が出来たんだから。』
アン王女は知り尽くしたように語るアレクセイに少し怯んだものの、
『だったら良かったじゃない?』
…?
…?
…?
『ね?だから君との話しは疲れるんだ。だったら何で倒れたりしたの?』
『念には念をよ。あそこで私が倒れる事によって妃殿下から危険を遠ざけただけ。』
『ならば何故そう言わなかった?さっきまで散々ヴィクトリアに恩を着せてたじゃない?ってか君の話しは虚言だらけだ。』
境地に陥ったアン王女は声を荒げ
『寄って集って何なのよ!2日も拘束されてこんな屈辱的な思いをして、ただじゃ済まないですからね!とにかくサンライズ王国に帰して!』
『帰して!ってね。こちらも早くお帰り頂きたいよ。まだなの?』
アレクセイはレイモンドに問うた所で広間の扉が開かれた。
『サンライズ王国ルドルフ王子がいらっしゃいました。』
衛兵により両開きの扉が開かれるとあの彫刻像のようなルドルフ王子が颯爽と現れすぐにアレクセイの前まで歩みを進めると跪き頭を垂れた。
『遅れまして申し訳ありません。』
『遅いよ…。後は任せるから早く回収していってよ。』
アレクセイはアン王女に視線を投げた。
『お兄様!迎えに来て下さいましてありがとうございます!私、もう耐えられませんわ。』
華やかな笑顔でルドルフ王子に駆け寄るとルドルフ王子はアン王女の手を振り払った。
『お前を迎えに来たのではない。これからお前の暮らす場所へと連れて行くために来たのだ。』
『は?』
理解が追いつかないアン王女は
『お兄様?これから戻り次第、山のように溜まっている執務に励みますわ!』
『執務は溜まってはいない。』
アン王女は不思議そうに
『溜まっていない?私が留守にしていたのに?お兄様が代わりに?』
『いや、兄上の婚約者殿が担ってくれている』
『『『婚約者?』』』
これには皆仲良く声が揃って驚いた。
『婚約者ってどういう事?妻帯するって事は後継者となるって事?そんな…!一大事ですわ。こんな所さっさと出て戻りましょう!』
『アン、静まれ。兄上は既に立太子されているのだ。我が国の後継者は兄上1人なのだ。私は兄上を支える。それにお前が戻る場所は王宮ではない。お前はもう王族ではない。肝に銘じよ。』
『王族ではない?』
ルドルフ王子が護衛騎士へ顎を上げる。それと同時に一斉にアン王女を捕らえた。
『ちょっと!何するの!離しなさい!』
暴れる王女を迅速に回収すると騎士団は広間を後にした。
『兄上より書状を預かり受けました。』
アレクセイはめんどくさそうに受け取ると
『君の兄上は時に図々しいからね?ったく、この借りは高いからね?』
ルドルフ王子は口角を上げながら
『承知しております。』
それだけ言うとヴィクトリアに軽く頭を下げ再度アレクセイに跪き頭を垂れた。
『ご配慮痛み入ります。』
アレクセイは苦笑いをしながら手を振ると
『前途多難だけど頑張って』
ルドルフ王子を送り出した。
ヴィクトリアの心の声が広間に響いた。振り返るアン王女にヴィクトリアは
『王女、私は貴女と共に過ごした時間の中で貴女の素晴らしい所を沢山見てまいりましたわ。それの全てが嘘だとは思えないのです。』
『嘘ではありませんわ。全て本来の私。先ほど貴女が言ったのですよ?処刑部屋へは自分で入り込んだと。それを我々がお助けしましたのよ?貴女の側に居た私と何ら変わらないわ。
だから貴女をお守りした茶会の件も、命を掛けた私に全て嘘などと言い放った失礼な態度。
本来貴女は私に謝罪しなければならない立場。ですが私も隣国の王女。そこは勘弁して差し上げるのよ?』
呆気に取られる一同をお構いなしにアン王女ペースで進んでいく時間。
『毒など無かったわ。流石の私でもアレクセイの子どもが宿っているかもしれないヴィクトリアに毒など…。』
力なく言葉を紡ぐヴィオランテにアン王女は
『ほらね?どこまでも私に罪をきせるおつもりのようね?メープル王国は。』
この期に及んで、怯むことなく立ち回るアン王女はある意味凄い。流石は社交界を渡り歩く王女である。
『あれは狂言だよ。』
今更ながらとでも言うようにアレクセイが口を開いた。
『貴方、その場にいなかったじゃない!』
『まぁね。でも母上の命によって保管されていたカップからも茶からも毒性は反応していない。そこは厳重に調査してあるから。だからこそ君たちへ辿り着く事が出来たんだから。』
アン王女は知り尽くしたように語るアレクセイに少し怯んだものの、
『だったら良かったじゃない?』
…?
…?
…?
『ね?だから君との話しは疲れるんだ。だったら何で倒れたりしたの?』
『念には念をよ。あそこで私が倒れる事によって妃殿下から危険を遠ざけただけ。』
『ならば何故そう言わなかった?さっきまで散々ヴィクトリアに恩を着せてたじゃない?ってか君の話しは虚言だらけだ。』
境地に陥ったアン王女は声を荒げ
『寄って集って何なのよ!2日も拘束されてこんな屈辱的な思いをして、ただじゃ済まないですからね!とにかくサンライズ王国に帰して!』
『帰して!ってね。こちらも早くお帰り頂きたいよ。まだなの?』
アレクセイはレイモンドに問うた所で広間の扉が開かれた。
『サンライズ王国ルドルフ王子がいらっしゃいました。』
衛兵により両開きの扉が開かれるとあの彫刻像のようなルドルフ王子が颯爽と現れすぐにアレクセイの前まで歩みを進めると跪き頭を垂れた。
『遅れまして申し訳ありません。』
『遅いよ…。後は任せるから早く回収していってよ。』
アレクセイはアン王女に視線を投げた。
『お兄様!迎えに来て下さいましてありがとうございます!私、もう耐えられませんわ。』
華やかな笑顔でルドルフ王子に駆け寄るとルドルフ王子はアン王女の手を振り払った。
『お前を迎えに来たのではない。これからお前の暮らす場所へと連れて行くために来たのだ。』
『は?』
理解が追いつかないアン王女は
『お兄様?これから戻り次第、山のように溜まっている執務に励みますわ!』
『執務は溜まってはいない。』
アン王女は不思議そうに
『溜まっていない?私が留守にしていたのに?お兄様が代わりに?』
『いや、兄上の婚約者殿が担ってくれている』
『『『婚約者?』』』
これには皆仲良く声が揃って驚いた。
『婚約者ってどういう事?妻帯するって事は後継者となるって事?そんな…!一大事ですわ。こんな所さっさと出て戻りましょう!』
『アン、静まれ。兄上は既に立太子されているのだ。我が国の後継者は兄上1人なのだ。私は兄上を支える。それにお前が戻る場所は王宮ではない。お前はもう王族ではない。肝に銘じよ。』
『王族ではない?』
ルドルフ王子が護衛騎士へ顎を上げる。それと同時に一斉にアン王女を捕らえた。
『ちょっと!何するの!離しなさい!』
暴れる王女を迅速に回収すると騎士団は広間を後にした。
『兄上より書状を預かり受けました。』
アレクセイはめんどくさそうに受け取ると
『君の兄上は時に図々しいからね?ったく、この借りは高いからね?』
ルドルフ王子は口角を上げながら
『承知しております。』
それだけ言うとヴィクトリアに軽く頭を下げ再度アレクセイに跪き頭を垂れた。
『ご配慮痛み入ります。』
アレクセイは苦笑いをしながら手を振ると
『前途多難だけど頑張って』
ルドルフ王子を送り出した。
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