『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

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婚約破棄から始まる物語

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麻子が転生したこの世界。ヴィクトリアの人生を歩み始めてガラリと変わった麻子の人生。

なんの因果か、国母となりアレクセイの隣で微笑んでいる。ここまで来るのに決して平坦な道ではなかった。そんな事を思いながらヴィクトリアは今日も王太子妃執務室の番犬ルシャードと共に書類と格闘していた。


『ルシャード、そろそろお茶にしない?一息付きたいわ。』


ルシャードは振り返り時計を見ると驚いたように

『妃殿下、もうとっくにお昼も過ぎていますよ!お茶ではなく何か用意させましょう。』


『いいの、いいの。これ片付けちゃいたいもの。早めの晩餐にするから大丈夫よ?』


『私が大丈夫ではありませんから!』


ルシャードは簡単に食べられるサンドイッチを用意させると2人はソファへと移った。




『今から食事?』


ノックもせず入室してきたのはアレクセイ。手にはベビー用の玩具を持ち嬉しそうにヴィクトリアの隣に腰を下ろすと封を解いていく。


『殿下、昨日も申しましたがまだ男の子かも女の子かも分からないのですよ?気が早すぎますわ!それに毎日毎日…』


ヴィクトリアの小言を遮るようにアレクセイは


『だけどほら?可愛すぎるだろ?こんなの見たら欲しくなるだろう?』


振ると鈴が鳴る、現世で言ういわゆるガラガラである。嬉しそうに揺らすアレクセイにルシャードは真面目に問うた。


『妃殿下、これは殿下の玩具ですか?』


…んな訳あるかい!


ヴィクトリアは苦笑いを浮かべ、屈託なく笑うアレクセイを見つめていると何故だか心がポカポカとしてくるのである。



『殿下!』

クタクタになり憔悴しきっているレイモンドはフラフラとこちらもノック1つせず執務室に入ってきた。


『レイモンド、ノックくらいしろ!』


ルシャードの言葉にレイモンドはギロリと睨見つけると

『お前はいいよ。執務室にこもって書類と格闘中だろ?いかにも王太子妃の側近ではないか!』


『側近だからな?ってお前もだ』


レイモンドはルシャードの言葉に大袈裟なまでに驚きオーバーアクションを加え

『俺?俺が天下の王太子の側近なの?てっきり俺は殿下の荷物持ちだと思ってたよ!毎日毎日馬車に乗り切らない程買い漁り、だいたいね?何人お子が産まれるんだよ…』


アレクセイはレイモンドの苦情など耳にも入らないようにレイモンドの運んできた荷物の封を解いていく。


『ごめんなさいね、レイモンド。』


『妃殿下が謝る事ではありません。殿下の分までお昼も召し上がらず執務を熟しておられるのですから。殿下、安心してお出かけ下さい。』


アレクセイはルシャードの言葉は耳に入っていたようで満面の笑みを浮かべ


『そう?これでもやる事はやってるからね?』


…当たり前だろ?


レイモンドは執務室のソファに沈み足を放り出すと目の前のサンドイッチを頬張った。



その姿をヴィクトリアは嬉しそうに眺めながら己のまだ大きくなっていないお腹を擦った。


…みんなあなたの仲間よ。


まだ見ぬ我が子を思いながら3人の男たちの頬張る姿に笑みを送っていたのである。


…幸せってこういう事なのね。



やがてヴィクトリアは元気な男の子を産み、名をハインリッヒと名付けられた。ハインリッヒはアレクセイとヴィクトリアだけでなく側近2人の愛情を受け心身共に健やかに育てられたという。


このハインリッヒこそが後の英雄と崇め奉られる大皇帝となる事をこの時はまだ誰も知らない。



大皇帝の生みの親となったヴィクトリア。婚約破棄から始まる物語に転生して上書きされたおかげで誕生した奇跡の大皇帝である。その後の安寧はこの転生から始まったのは間違いない。そしてその末裔は今も尚、その血を受継ぎ子孫を残し続けているのである。

その姿を嬉しそうに天から見下ろす2人、アレクセイとヴィクトリアは今日も笑顔でエールを送ってくれている。


…幸せにね






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