72 / 72
婚約破棄から始まる物語
しおりを挟む
麻子が転生したこの世界。ヴィクトリアの人生を歩み始めてガラリと変わった麻子の人生。
なんの因果か、国母となりアレクセイの隣で微笑んでいる。ここまで来るのに決して平坦な道ではなかった。そんな事を思いながらヴィクトリアは今日も王太子妃執務室の番犬ルシャードと共に書類と格闘していた。
『ルシャード、そろそろお茶にしない?一息付きたいわ。』
ルシャードは振り返り時計を見ると驚いたように
『妃殿下、もうとっくにお昼も過ぎていますよ!お茶ではなく何か用意させましょう。』
『いいの、いいの。これ片付けちゃいたいもの。早めの晩餐にするから大丈夫よ?』
『私が大丈夫ではありませんから!』
ルシャードは簡単に食べられるサンドイッチを用意させると2人はソファへと移った。
『今から食事?』
ノックもせず入室してきたのはアレクセイ。手にはベビー用の玩具を持ち嬉しそうにヴィクトリアの隣に腰を下ろすと封を解いていく。
『殿下、昨日も申しましたがまだ男の子かも女の子かも分からないのですよ?気が早すぎますわ!それに毎日毎日…』
ヴィクトリアの小言を遮るようにアレクセイは
『だけどほら?可愛すぎるだろ?こんなの見たら欲しくなるだろう?』
振ると鈴が鳴る、現世で言ういわゆるガラガラである。嬉しそうに揺らすアレクセイにルシャードは真面目に問うた。
『妃殿下、これは殿下の玩具ですか?』
…んな訳あるかい!
ヴィクトリアは苦笑いを浮かべ、屈託なく笑うアレクセイを見つめていると何故だか心がポカポカとしてくるのである。
『殿下!』
クタクタになり憔悴しきっているレイモンドはフラフラとこちらもノック1つせず執務室に入ってきた。
『レイモンド、ノックくらいしろ!』
ルシャードの言葉にレイモンドはギロリと睨見つけると
『お前はいいよ。執務室にこもって書類と格闘中だろ?いかにも王太子妃の側近ではないか!』
『側近だからな?ってお前もだ』
レイモンドはルシャードの言葉に大袈裟なまでに驚きオーバーアクションを加え
『俺?俺が天下の王太子の側近なの?てっきり俺は殿下の荷物持ちだと思ってたよ!毎日毎日馬車に乗り切らない程買い漁り、だいたいね?何人お子が産まれるんだよ…』
アレクセイはレイモンドの苦情など耳にも入らないようにレイモンドの運んできた荷物の封を解いていく。
『ごめんなさいね、レイモンド。』
『妃殿下が謝る事ではありません。殿下の分までお昼も召し上がらず執務を熟しておられるのですから。殿下、安心してお出かけ下さい。』
アレクセイはルシャードの言葉は耳に入っていたようで満面の笑みを浮かべ
『そう?これでもやる事はやってるからね?』
…当たり前だろ?
レイモンドは執務室のソファに沈み足を放り出すと目の前のサンドイッチを頬張った。
その姿をヴィクトリアは嬉しそうに眺めながら己のまだ大きくなっていないお腹を擦った。
…みんなあなたの仲間よ。
まだ見ぬ我が子を思いながら3人の男たちの頬張る姿に笑みを送っていたのである。
…幸せってこういう事なのね。
やがてヴィクトリアは元気な男の子を産み、名をハインリッヒと名付けられた。ハインリッヒはアレクセイとヴィクトリアだけでなく側近2人の愛情を受け心身共に健やかに育てられたという。
このハインリッヒこそが後の英雄と崇め奉られる大皇帝となる事をこの時はまだ誰も知らない。
大皇帝の生みの親となったヴィクトリア。婚約破棄から始まる物語に転生して上書きされたおかげで誕生した奇跡の大皇帝である。その後の安寧はこの転生から始まったのは間違いない。そしてその末裔は今も尚、その血を受継ぎ子孫を残し続けているのである。
その姿を嬉しそうに天から見下ろす2人、アレクセイとヴィクトリアは今日も笑顔でエールを送ってくれている。
…幸せにね
なんの因果か、国母となりアレクセイの隣で微笑んでいる。ここまで来るのに決して平坦な道ではなかった。そんな事を思いながらヴィクトリアは今日も王太子妃執務室の番犬ルシャードと共に書類と格闘していた。
『ルシャード、そろそろお茶にしない?一息付きたいわ。』
ルシャードは振り返り時計を見ると驚いたように
『妃殿下、もうとっくにお昼も過ぎていますよ!お茶ではなく何か用意させましょう。』
『いいの、いいの。これ片付けちゃいたいもの。早めの晩餐にするから大丈夫よ?』
『私が大丈夫ではありませんから!』
ルシャードは簡単に食べられるサンドイッチを用意させると2人はソファへと移った。
『今から食事?』
ノックもせず入室してきたのはアレクセイ。手にはベビー用の玩具を持ち嬉しそうにヴィクトリアの隣に腰を下ろすと封を解いていく。
『殿下、昨日も申しましたがまだ男の子かも女の子かも分からないのですよ?気が早すぎますわ!それに毎日毎日…』
ヴィクトリアの小言を遮るようにアレクセイは
『だけどほら?可愛すぎるだろ?こんなの見たら欲しくなるだろう?』
振ると鈴が鳴る、現世で言ういわゆるガラガラである。嬉しそうに揺らすアレクセイにルシャードは真面目に問うた。
『妃殿下、これは殿下の玩具ですか?』
…んな訳あるかい!
ヴィクトリアは苦笑いを浮かべ、屈託なく笑うアレクセイを見つめていると何故だか心がポカポカとしてくるのである。
『殿下!』
クタクタになり憔悴しきっているレイモンドはフラフラとこちらもノック1つせず執務室に入ってきた。
『レイモンド、ノックくらいしろ!』
ルシャードの言葉にレイモンドはギロリと睨見つけると
『お前はいいよ。執務室にこもって書類と格闘中だろ?いかにも王太子妃の側近ではないか!』
『側近だからな?ってお前もだ』
レイモンドはルシャードの言葉に大袈裟なまでに驚きオーバーアクションを加え
『俺?俺が天下の王太子の側近なの?てっきり俺は殿下の荷物持ちだと思ってたよ!毎日毎日馬車に乗り切らない程買い漁り、だいたいね?何人お子が産まれるんだよ…』
アレクセイはレイモンドの苦情など耳にも入らないようにレイモンドの運んできた荷物の封を解いていく。
『ごめんなさいね、レイモンド。』
『妃殿下が謝る事ではありません。殿下の分までお昼も召し上がらず執務を熟しておられるのですから。殿下、安心してお出かけ下さい。』
アレクセイはルシャードの言葉は耳に入っていたようで満面の笑みを浮かべ
『そう?これでもやる事はやってるからね?』
…当たり前だろ?
レイモンドは執務室のソファに沈み足を放り出すと目の前のサンドイッチを頬張った。
その姿をヴィクトリアは嬉しそうに眺めながら己のまだ大きくなっていないお腹を擦った。
…みんなあなたの仲間よ。
まだ見ぬ我が子を思いながら3人の男たちの頬張る姿に笑みを送っていたのである。
…幸せってこういう事なのね。
やがてヴィクトリアは元気な男の子を産み、名をハインリッヒと名付けられた。ハインリッヒはアレクセイとヴィクトリアだけでなく側近2人の愛情を受け心身共に健やかに育てられたという。
このハインリッヒこそが後の英雄と崇め奉られる大皇帝となる事をこの時はまだ誰も知らない。
大皇帝の生みの親となったヴィクトリア。婚約破棄から始まる物語に転生して上書きされたおかげで誕生した奇跡の大皇帝である。その後の安寧はこの転生から始まったのは間違いない。そしてその末裔は今も尚、その血を受継ぎ子孫を残し続けているのである。
その姿を嬉しそうに天から見下ろす2人、アレクセイとヴィクトリアは今日も笑顔でエールを送ってくれている。
…幸せにね
13
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。
しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。
無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。
『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。
【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる