貴方に嫌われたくなくて【完】

戸惑うリディアンネ

それからアルフォンスとマーガレットの婚約は間もなくして発表されまたも社交界を賑わした。


『リディアンネ様、よくもそう毎日毎日噂の渦の中に自ら乗り込んでいけますね？』


連日街に出るリディアンネにジュールが苦言を呈した。


『どうして？私は何も悪い事をしていないわ！サエラ王女として帝国を学んでいるだけよ？』



『学んでって。それならばサエラ王国に戻られては？貴方がいつまでもここに居る意味ってありますか？』


至極まっとうである。



…。



『分かったわよ。しばらくは大人しくしてるから…』


リディアンネは窓から広がる町並みを眺めていた。



そもそも何故アルフォンスに推し活していたのであろうか？リディアンネは暇を持て余しそんな事を考えていた。


確か…年に１度の交流会。アルフォンスと皇太子が話しているのを聞いたのだ。

その時確かに２人はサエラ第３王女をリディアンと呼んでいたのを聞いた。だからかつての初恋の男の子をアルフォンスだと確信したのである。

まさか帝国皇太子とは思うまい。皇太子ならば他国に訪問して知らない女の子と勝手気ままに遊べる訳がないからだ。


…これからどうしたらよいのかしら


リディアンネはチームリディアンネも解体され、そばにはジュールしか話し相手も居ない。そのジュールは口を開けば嫌味しか吐かない。


…やれやれ。






そんな日々が続いていた時に、タウンハウスに皇太子がやって来た。


『そろそろさみしくなる頃だろうと思ってね。』


にこやかに出されたお茶に手を掛けるユリウスに

『別にさみしくなんてしておりませんが？ただ暇をしているだけですわ！』


『そうなの？いつもさみしそうにしているってジュールから聞いたから』


リディアンネは後ろに控えるジュールを睨みつける。


…お前の主は私であろうが？



ジュールは大袈裟に笑顔をリディアンネに返す。



…。こいつ。



『今日はね、アルとマーガレットの挙式の招待状を持ってきたんだ。』


…おいおい


『殿下、私が出席するのは？』


『うん、憚られるよね？だけど敢えて出る事によってお互いの為になると思うんだ。』


…私だけは好奇な眼に晒されるわけね？


リディアンネは怪訝そうにユリウスを見ると



『無理にとは言わないよ。ただ君の覚悟を確認したくてね？』


…何の覚悟よ。



リディアンネは爽やかに微笑むユリウスを睨みつけながら


…皇太子スマイルになんかやられないんだから！


心の中で闘志を燃やしたのである。