冷酷皇帝とお花畑妃殿下

北帝国での交流会

カイザルとフランシスは各国から続々と訪れる王族を出迎えるべく朝から玄関で待ち構えていた。


何度も繰り返されるやり取りにカイザルは辟易としながら隣りのフランシスを見た。


…よくもまあ、変わらず。


束の間の２人の時間が訪れると伸びをするフランシス。首を回して肩まで回し出す。


…戦い前の戦士かよ。


じっとりとした視線にフランシスは


『カイ、貴方は征伐へ出かける際のあの意気揚々とした表情はどこへお忘れになったの？目が死んでますわよ？』

少し不貞腐れたカイザルは


『ファニーのように幾つもの仮面を持ち備えてないからね？それにこうゆう事はいつも兄上がやっていたんだ。』

もはや駄々っ子のようなカイザルが突然目に力をを宿した。その視線を追うようにフランシスも振り返ると同じように目を見開いた。


『ご無沙汰だね、カイザー。』


カイザルは久々となる兄、エマニュエルの雰囲気がどこか異なる違和感を覚えるもそれ以上に隣りにエスコートしている女性に驚きを隠せなかった。



『そんなに驚かないでよ。皇后を連れて交流会に出るのは普通だろ？』


…いやいやその普通をしてこなかったのはどこの誰？


ファビウスもまた後ろに控えながら心の中で突っ込んだ。



『ようこそお出で下さいました。』


フランシスはエマニュエルにカーテシーをするとマーガレットもカイザルへ向けて


『お招きありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。』


美しく膝を折った。


公式の場で大帝国の皇子が揃って皇帝となり並ぶ姿は初めてとなる為、各国も嬉しそうに眺めている。


フランシスとマーガレットはお茶会が開かれる庭へと移り、カイザルとエマニュエルは各国国王が待つ広間へと足を運んだ。


長い廊下を行くカイザルは少し前を行くエマニュエルに

『まさか、こっちとはな…？』

漏らした心の声にエマニュエルは振り返ると


『なに？こっちって？』

久々に見る眩しい王太子スマイルに苦笑いを浮かべるカイザルは


『義姉上だよ。てっきり幽閉でもしてるのかと思ってたんだ。』


エマニュエルは分かりやすく驚くもカイザルは

『ごめんごめん、そんなに驚かないでよ。誤解してた事は謝るよ。まさかの溺愛だとは思わなかったよ。それ故箱入りのように扱ってたんだね。ってか本当まさかのまさかだよ。兄上がね…』



ニヤニヤと笑うカイザルを怪訝そうに見ると

『その薄気味悪い笑いはやめろ。これから交流会なのだぞ。』

エマニュエルはプイッと前を向くとそのまま足早に会場へと向かった。