たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

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フランツ帝国の目論見

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安堵しているオリヴィアに衝撃が走ったのはその翌日。朝からアレクセイは帝国に召喚されていて留守にしているアナリス王宮が騒がしくなっていた。

オリヴィアは気にしながらも執務に追われていると側近のレオナルドが飛び込んできた。


『妃殿下!』

『どうしたの?そんなに慌てて。』


オリヴィアが微笑むと


『そんな女神の様に微笑んでいる場合じゃありません!ジュリラン王女が前触れなくこちらにいらしておりますよ!』


『そんな化け物みたいに言わなくても…ステファニーお姉様が?でもどうして?』


オリヴィアは首を傾げながらステファニーの待つ謁見の間へ急いだ。


ステファニーは見るからに怒りを露わにしている。


…レオナルドの表現はあながち間違いではなさそうね。



『お姉様、ようこそいらっしゃいました。どうされました?』


ステファニーは後ろに控えるレオナルドを顎で使いお茶のおかわりを要求した。オリヴィアは申し訳なさそうにレオナルドに目配せをするとレオナルドは小さく頷いた。


『単刀直入に言うわ。間違いだったの。』


…。どこが単刀直入なのかしら。

黙りこくるオリヴィアに


『帝国は私達2人のうちの残り者を取らされたと思い込んでいるのよ。』


…?


『だから、アナリス大王国が先にオリヴィアを娶るとなり残った私が帝国に嫁ぐと思ってるの!』


『…?いけないのですか?』


『本当わからない女ね。帝国の皇太子ともあろうお方がアナリス如きの残り者を娶らされるのよ?そりゃ拗ねるわよ。』


『まさか、そんな事で。』


『そのまさかなの。男同士のプライドって怖いのよ?』


…そんな訳ないわ。


『でしたら事の詳細をお話しになればよいのでは?あくまで残り者ではなければ良いのでしょう?』


ステファニーはイライラしながら

『とにかく、貴女がフランツ帝国に嫁ぐのよ。』


『『はぁ?』』


オリヴィアとオリヴィアの後ろに控えるレオナルドの声がきれいに重なった。


『何も驚く事はないわ。そもそも政略結婚なのですからどちらに嫁ぐかなんて問題ないわ。』


…お姉様、あれほどアナリス大王国を毛嫌いしていたではありませんか…


『とにかく決定事項なの。』

…そんな勝手に

オリヴィアはレオナルドを見る。

『助けを求めても無駄よ。今日お兄様が帝国に入ってるのはね、その事なのよ。皇帝はオリヴィアが嫁ぐならば正妃にすると言ってるの。』


『そんな!無茶です!それに私は既にアナリス大王国の王太子妃ですよ。』


『そんな事分かってるわよ。それを承知で帝国はジュリランから迎える王女が貴女ならば正妃にするって言ってるの。本当拗らせた男は困るわよね?』


『お姉様が嫁いではいけないのですか?』


オリヴィアの言葉にステファニーは怒りを露わに

『私だと側妃になるの!拗ねてるから仕方ないのよ。ジュリランの為に貴女は帝国の皇太子妃になるのよ!』


『お姉様は?』


『決まってるじゃない、本意じゃないけどアナリス大王国の王太子妃になるしかないでしょう。』


…。


混乱するオリヴィアにステファニーは


『さあ、早速だけど執務室に案内してちょうだい。』


『何故ですか?』


『全く、グズね。執務に取り掛かるに決まってるわ!私の力を見せつけてやるわ!』


…。


『さあ、早く!』



『お姉様…。お姉様もお分かりでしょう?王太子妃の執務室には我が国の貴族でさえ許可なく出入りはできませんのよ?それを他国のそれも王族が入れる場所ではありませんよ。』


ステファニーは真っ赤になりながら


『偉そうに!何?アナリス王太子妃で無くなるのが惜しいのね?帝国ならばもっと贅沢が出来るわよ?さぁ。』


…。


黙りこくるオリヴィアに


『貴女、まさか王子様にメロメロになってるんじゃないわよね?ったく、あんな外面だけの男に逆上せちゃって恥ずかしくないの?』 


…。


『ったく使えないわね…』

ステファニーはレオナルドに視線を流すと


『貴方、そこの貴方よ!』


レオナルドは黙ったままだ。


『早く案内なさい!』


ステファニーは扉を開けると

『王女、許可なくご案内することは出来かねます』


レオナルドは動かない。


ステファニーはレオナルドを睨みつけると


『たいした根性ね。後で後悔するわよ?まあいいわ。明日には分かる事だから。』


そう言うと謁見の間を後にした。




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