こじらせ王子とその妃【完】

mako

文字の大きさ
28 / 94

ムヌク王太子妃として

しおりを挟む
着飾った王太子妃や王妃が集まる中、招待国のルリネット妃はにこやかに微笑んでいる。


キャサリンはムヌク王国と記されている席に付き、視線を流す様に回りを観察していた。


‥ヤバい。久しぶりに緊張するわ。


ルリネット妃の話が終わると、お茶会と称する社交が始まった。


王妃、王太子妃としての立場は国の力と比例しているが、それと同じくらい王妃、王太子妃の生まれ国までも大きな後ろ盾となる。

ダリス大王国のルリネット妃はヴェルヴァス王国の元王女。文句の付けようの無い肩書である。

和やかな時間が流れる‥というのは建前であり正確には足の引っ張り合いのようなところも否めない。


王妃や王太子妃は、自国の貴族らから選ばれる国もあれば他国の王族や貴族から選ばれることもある。

ここにいる王妃らの中でも元王女はそれほど多くはない。だからこそ勘違いする元王女らが居る。

もちろん元王族という事は他国との社交に長けているというのはある。生まれながらの王族は伊達ではない。

そんな中、ルリネット妃の祖国、ヴェルヴァス王国のソフィア妃は大人しい性格からか一部の王妃から槍玉に上がっていた。


『まあ、ソフィア妃。あまり無理なさらなくてもよろしくてよ?』


『まだ国際交流には慣れていらっしゃらないのでは?』


キャサリンは遠巻きから眺め顔を歪める。


‥うわっ。

ソフィア妃はルリネット妃の義姉にあたる為表立っての攻撃は無いものの、大人しい性格をいい事にマウントを取る王妃らがソフィア王妃を囲っている。


キャサリンは回りを見渡すも、どこも似たりよったりの事をしている。


‥くだらないわ。

キャサリンが一人お茶を飲んでいるとソフィア様がどうやって逃げ出してきたのか、キャサリンの陣取るスイーツの並べられているテーブルまで来て軽く会釈をし席についた。


‥ソフィア様もスイーツに目がないのね♡

すると逃がすまいと先程の王妃らまでもスイーツのテーブルまで来て腰を下ろした。


‥うわっ何で?やるなら向こうでやってよ。



『まあ、大王国のスイーツは見事ですわ!』

『芸術品ですわね!』


社交辞令が並べられていたかと思うと一人の王妃がソフィア様に声を掛けた。


『ソフィア妃は他国のスイーツでは何がお好みですの?』


‥。

俯くソフィア様に


‥ガツンと言ってやれよ。


『あらあら、ヴェルヴァスのスイーツしかご存知なかったかしら?』




押し黙るソフィアを横目に


『そんな訳ございませんわ!王族ならば幼い頃から他国交流がございますもの。私なんてアルバ王国のマカロンには目がなくて』

とはしゃぐ王妃に

『あら?ソフィア妃は王族ご出身ではございませんもの。』

‥はいはい、それが言いたいのよね?ってかそれが何なん?


むかっ腹が立ってきたキャサリンは徐ろに咳払いをすると


『あら、そういえばキャサリン様も王族ご出身でしたわよね?』


仲間入りさせられそうになるキャサリンはにっこり微笑み


『そういえばも何も私は確かに王族出身ですが、今となっては私はムヌク王国王太子妃、ただそれだけですわ。』

その一言に喜ぶ王妃たちは


『他国交流は身体に染み込んでらっしゃるわよね。』


当たり前の様に言う。キャサリンは

『でも、まあお好みのスイーツなんてどうでもよくないですか?スイーツは万国共通でどれも美味ですもの』


そこに噛みつく王妃呆れた様に


『あら、キャサリン様はまだお若いのね。何もスイーツの事を申し上げているのではございませんわ。例えですもの。』


ニヤリと笑う王妃。


‥コイツ!


『例えでしたか。ではスイーツを例えにして王族出身ではないソフィア妃に何が言いたいのですか?』


キャサリンはカップをソーサに優雅に置くと王妃相手に問うた。


真っ赤になる王妃は黙ったままキャサリンを睨み付けているのでキャサリンは尚も続ける。


『私はムヌク王国王太子妃ですが、自国の事はまだまだこれから知っていく事が幾つもありましょう。

ですがソフィア王妃は既に自国については誰よりもご存知のはず。それは国にとって力強い王妃でしょうね。』

静かに顔を上げるソフィアと真っ赤に憤る王妃たち。


『まあ、ムヌク王太子妃ともあろうお方が自国の事をご存知ない?』


徴発する王妃に


『いえ、今私が知っている事が全てかもしれませんし、まだほんの1割程度かもしれません。全体がわからない今ではそれがどのくらいなのかは誰にもわかりませんわ。

それにこれからムヌク王太子妃として経験した事を肉付けしていく事こそに意味があると私は思っておりますわ。この考えは王女として培ってきた経験から申しておりますが?』

キャサリンは珍しく険しい表情で王妃を見ると、パッと王妃の顔が明るくなった。不思議に思ったキャサリンが振り返ると、そこにはルリネット妃が微笑んでいた。


『賑やかそうですがどうかされましたか?』

我先にと王妃らが立ち上がり

『意見交換をしておりましたら少々力が入りすぎましたわ!』


‥意見交換か?これが。なんとも低俗だが?


王妃らはここぞとばかりにスイーツを褒め称えルリネット妃を独占した。


キャサリンは大きく息を吐き、宝石の様に輝くショコラを笑顔で口に運んだ。


‥最高♡








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

【完結】どうやら時戻りをしました。

まるねこ
恋愛
ウルダード伯爵家は借金地獄に陥り、借金返済のため泣く泣く嫁いだ先は王家の闇を担う家。 辛い日々に耐えきれずモアは自らの命を断つ。 時戻りをした彼女は同じ轍を踏まないと心に誓う。 ※前半激重です。ご注意下さい Copyright©︎2023-まるねこ

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【私の好きな人が婚約者に捨てられそうなので全力で阻止させて頂きます】 入学式で困っている私を助けてくれた学生に恋をしてしまった私。けれど彼には子供の頃から決められていた婚約者がいる人だった。彼は婚約者の事を一途に思っているのに、相手の女性は別の男性に恋している。好きな人が婚約者に捨てられそうなので、全力で阻止する事を心に決めたー。 ※ 他サイトでも投稿中

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...