こじらせ王子とその妃【完】

mako

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ムヌク王太子妃として

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着飾った王太子妃や王妃が集まる中、招待国のルリネット妃はにこやかに微笑んでいる。


キャサリンはムヌク王国と記されている席に付き、視線を流す様に回りを観察していた。


‥ヤバい。久しぶりに緊張するわ。


ルリネット妃の話が終わると、お茶会と称する社交が始まった。


王妃、王太子妃としての立場は国の力と比例しているが、それと同じくらい王妃、王太子妃の生まれ国までも大きな後ろ盾となる。

ダリス大王国のルリネット妃はヴェルヴァス王国の元王女。文句の付けようの無い肩書である。

和やかな時間が流れる‥というのは建前であり正確には足の引っ張り合いのようなところも否めない。


王妃や王太子妃は、自国の貴族らから選ばれる国もあれば他国の王族や貴族から選ばれることもある。

ここにいる王妃らの中でも元王女はそれほど多くはない。だからこそ勘違いする元王女らが居る。

もちろん元王族という事は他国との社交に長けているというのはある。生まれながらの王族は伊達ではない。

そんな中、ルリネット妃の祖国、ヴェルヴァス王国のソフィア妃は大人しい性格からか一部の王妃から槍玉に上がっていた。


『まあ、ソフィア妃。あまり無理なさらなくてもよろしくてよ?』


『まだ国際交流には慣れていらっしゃらないのでは?』


キャサリンは遠巻きから眺め顔を歪める。


‥うわっ。

ソフィア妃はルリネット妃の義姉にあたる為表立っての攻撃は無いものの、大人しい性格をいい事にマウントを取る王妃らがソフィア王妃を囲っている。


キャサリンは回りを見渡すも、どこも似たりよったりの事をしている。


‥くだらないわ。

キャサリンが一人お茶を飲んでいるとソフィア様がどうやって逃げ出してきたのか、キャサリンの陣取るスイーツの並べられているテーブルまで来て軽く会釈をし席についた。


‥ソフィア様もスイーツに目がないのね♡

すると逃がすまいと先程の王妃らまでもスイーツのテーブルまで来て腰を下ろした。


‥うわっ何で?やるなら向こうでやってよ。



『まあ、大王国のスイーツは見事ですわ!』

『芸術品ですわね!』


社交辞令が並べられていたかと思うと一人の王妃がソフィア様に声を掛けた。


『ソフィア妃は他国のスイーツでは何がお好みですの?』


‥。

俯くソフィア様に


‥ガツンと言ってやれよ。


『あらあら、ヴェルヴァスのスイーツしかご存知なかったかしら?』




押し黙るソフィアを横目に


『そんな訳ございませんわ!王族ならば幼い頃から他国交流がございますもの。私なんてアルバ王国のマカロンには目がなくて』

とはしゃぐ王妃に

『あら?ソフィア妃は王族ご出身ではございませんもの。』

‥はいはい、それが言いたいのよね?ってかそれが何なん?


むかっ腹が立ってきたキャサリンは徐ろに咳払いをすると


『あら、そういえばキャサリン様も王族ご出身でしたわよね?』


仲間入りさせられそうになるキャサリンはにっこり微笑み


『そういえばも何も私は確かに王族出身ですが、今となっては私はムヌク王国王太子妃、ただそれだけですわ。』

その一言に喜ぶ王妃たちは


『他国交流は身体に染み込んでらっしゃるわよね。』


当たり前の様に言う。キャサリンは

『でも、まあお好みのスイーツなんてどうでもよくないですか?スイーツは万国共通でどれも美味ですもの』


そこに噛みつく王妃呆れた様に


『あら、キャサリン様はまだお若いのね。何もスイーツの事を申し上げているのではございませんわ。例えですもの。』


ニヤリと笑う王妃。


‥コイツ!


『例えでしたか。ではスイーツを例えにして王族出身ではないソフィア妃に何が言いたいのですか?』


キャサリンはカップをソーサに優雅に置くと王妃相手に問うた。


真っ赤になる王妃は黙ったままキャサリンを睨み付けているのでキャサリンは尚も続ける。


『私はムヌク王国王太子妃ですが、自国の事はまだまだこれから知っていく事が幾つもありましょう。

ですがソフィア王妃は既に自国については誰よりもご存知のはず。それは国にとって力強い王妃でしょうね。』

静かに顔を上げるソフィアと真っ赤に憤る王妃たち。


『まあ、ムヌク王太子妃ともあろうお方が自国の事をご存知ない?』


徴発する王妃に


『いえ、今私が知っている事が全てかもしれませんし、まだほんの1割程度かもしれません。全体がわからない今ではそれがどのくらいなのかは誰にもわかりませんわ。

それにこれからムヌク王太子妃として経験した事を肉付けしていく事こそに意味があると私は思っておりますわ。この考えは王女として培ってきた経験から申しておりますが?』

キャサリンは珍しく険しい表情で王妃を見ると、パッと王妃の顔が明るくなった。不思議に思ったキャサリンが振り返ると、そこにはルリネット妃が微笑んでいた。


『賑やかそうですがどうかされましたか?』

我先にと王妃らが立ち上がり

『意見交換をしておりましたら少々力が入りすぎましたわ!』


‥意見交換か?これが。なんとも低俗だが?


王妃らはここぞとばかりにスイーツを褒め称えルリネット妃を独占した。


キャサリンは大きく息を吐き、宝石の様に輝くショコラを笑顔で口に運んだ。


‥最高♡








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