こじらせ王子とその妃【完】

mako

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兄弟水入らず

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兄弟3人揃って父である国王陛下と王妃と水入らずでの昼食を終え、三人はガセボでお茶を飲んでいた。


『悪いがそこの薔薇を少々見繕ってくれ。』

カールトンは侍従に声を掛けると後ろに控えるカールトンの側近ファビウスが事細かく花の種類を侍従に申し付けていた。

侍従はファビウスの指示を受け頷くとチラリとヨハネスを見た。ヨハネスは

『私はよい。』

短く答える。

『ところでエリーヌ嬢はいつ解放して差し上げるのですか?』

『エリーヌ嬢ではない、仮にもお前の義姉だぞ?』

間髪入れずカールトンが注意すると

『期間限定のそれも公爵令嬢でしょう?我々王族がそこまで気にしなくてはなりませんか?』

辛辣な返答にカールトンは

『そんな心無い言い方はやめろ。』

待ってましたの如くエリックは

『心無いのは兄上たちの方ですよ。あれほど優秀な令嬢をいいように使うだけ使って時が来ればポイとする事をお許しになっておられる。』

『いいように使おうなどとは』


『思っていなかったとしても現にそうなっておりますよ?』

カールトンは一瞬固まるも

『エリーヌはここを出たら修道院にはいるつもりなのだぞ』


『今度は慈悲もどきですか?それが彼女の人生設計ならばそれもよいでしょう。しかしあくまで設計中でしょう?時として心は変わるかもしれません。その判断をするのは兄上たちではなく彼女です。そもそも時が来て彼女ほどの者が修道院に入るとなればそれをさせた我が国の責任は大きいでしょうね。』


優雅にお茶を飲む末っ子を兄二人は黙って見つめていた。


『あっ、名案がありました。兄上さっさと契約を終了させてください。代わりに私の妃として迎え入れますよ。そして兄上のお飾りの妃は私が探してみせましょう!』


王子スマイルで語るエリックにヨハネスは

『彼女の気持ちはどうなる?』


『もとよりそんな物お考えになっていないでしょう?それに契約ではなくこれは政略結婚です。よくある話しですよ。』

・・・・。


『よろしいですね?』

エリックはカールトンに問う。


『・・・・。本気か?』


まっすぐ見据えるエリックは当たり前の如く頷いた。

『今はまだヨハネスの妃だ。』

そう言い残し花束を持って戻って行った。


その背中を追ってエリックもまたヨハネスに不敵な笑みを浮かべガセボを後にした。



『ロアン。悪いが花を摘んでくれ。』

ロアンは珍しく表情を明るく

『こちらではなく、温室に上等な薔薇がございますので!』

ヨハネスは小さく首を振ると

『いや、そこのかすみ草を頼む』

ロアンは不思議そうにヨハネスを見るもヨハネスの表情が見たことのない穏やかな表情の為、黙ってかすみ草を丁寧に摘んだ。

嬉しそうに戻ってきたロアンにヨハネスは

『悪いがそれをエリーヌに届けてくれないか?』

流石のロアンも思わず

『はぁ?』


『悪い、お前もエリーヌの事は良く思っていないのはわかっている』


・・・・いやいやそこじゃないだろ?殿下。


固まるロアンの肩にポンポンと手を置くと


『この借りは必ず返すから』

納得の表情でヨハネスはガセボを後にした。
残されたロアンは一人ポカンとしながら

・・・・どんだけ拗らせてんだよ。



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