こじらせ王子とその妃【完】

mako

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マルクスの思い

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3人はマルクスが目を開けるまでいつまで静かに待った。

どのくらいの時間が流れたであろう。マルクスは重い瞼を上げた。



『血でしょうか…。貴方の言う通り彼は我々の誇りであります。ですがその誇りだけでは生きてはいけません。多くの家臣の生活を守る為にはそこにしがみついていても始まらない。

他国で一から始めるには公爵家として栄えた一族ですからなかなか厳しい物があったのでしょう。分裂もあり裏切りもありバラバラになっていく様が資料として残っておりました。

紆余曲折を経てどうにか形を取り戻した頃に生まれた私はこれらを学ぶ事が最初でしたから。』



懐かしそうに語るマルクスの話を静かに聞く3人。


『隠居した後に必ずこのムヌク王国に入りこの目でこの国を見てみたいと思いここに今おります。』



『して、この国はどうであった?』


ヨハネスの言葉にマルクスは少し微笑み


『行き届いている。民の為に細かい所まで配慮がなされておりその礎を築いたのが我らの英雄であるかと思うと忘れかけていた誇りを取り戻したりもした。だからこそなかなか行政では手の届かないスラムについては微力ながら力になりたいと思ったのだと思う。』

3人は一斉に頭を下げた。


『お止め下さい。王族が簡単に頭を下げてはなりませんよ。それに私はムヌク王国王族を誤解しておりました。

これほど華やかな国に於いては我らの英雄の事など無かった事になっているのだ。もちろんこの国の安寧はこの国の統率者の力。ですがそこに我らの英雄の力も少しはあるはずではないのか?それを忘れて無かった事にするこの国を恨んでもおりました。』

静かに語るマルクスに

『我々は王族です。簡単には頭を下げたりはしない。簡単ではなく頭を下げたのです。恥ずかしながら私は生まれながらのムヌク王国王族です。今回のお話しは存じませんでした。波乱の時期を越えて尚も繁栄を続けるという簡潔に纏められた流れたこそ記憶にはございますが…申し訳ない。』


ヨハネスが再び頭を垂れた。

『いえ。そのように仰って頂けるだけで我が家の誇りは尚も持ち続けられるでしょう。素晴らしく賢明な王女が嫁いで来られたムヌク王国はこれから先も安泰ですね。』


キャサリンを嬉しそうに眺めるマルクス。


『はい、私も今回改めてそのように感じました。』


ヨハネスもまたキャサリンを嬉しそうに眺めていた。



…。ヨハネス様、だから怖いんだけど?

キャサリンの心の声を聞いたかのようにマルクスは笑い出すと


『王太子妃殿下、貴女は私の…いえ我が家の恩人です。私にまた生きる喜びを与えて下さった。ここまでして頂いたのです。お礼をしないわけにはいきませんね。』


エリーヌに視線を流すとマルクスは笑顔で頷くと


『エリ、その娘と会わせてくれるかい?我が家にお迎えし必ずやムヌク王国第3王子妃として恥じない令嬢となり王宮へ上がってもらうよ。』


エリーヌは笑顔を咲かせると


『おじいさんありがとう!』


…。おじいさんって貴族だぞ?


ヨハネスは怪訝そうにエリーヌを見つめていた。



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