婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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メープル王国の誤算

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『ステファニー嬢がロマニア王国で婚約者として認められ街中お祭り騒ぎだそうですよ。』

淡々と報告するレイモンドにアレクセイは黙ったまま窓の外を見つめている。


『そんなに外を見つめていても、ヴィクトリア嬢は戻ってはきませんよって、アレク。しっかりしろ。』


『ヴィクトリアはどうして‥』


『アレク、真実の愛は真実でなかっただけの事。それ以上でも以下でもない。お前はこの国の王太子だ。わかるな?どうしてしまった?完全無欠の王子様であろう。ここでいつまでもヴィクトリア嬢を待っていたとて始まらないさ。』


レイモンドは諭す様にアレクセイに声を掛けるが返答は無い。


レイモンドはイライラしていた。
ロマニア王国側近のフレディックに破れた感が半端なく経験したことの無い屈辱であった。

共に大きな大国であり歴史もさほど変わらない。
国の力は国王は当たり前ながら、その側近の力も大きいといわれる。

昔からロマニア王国のフレディックの事は意識していた。自分と同じタイプの計算高い男。
先月の謁見の際のステファニー嬢のドレス。

こちらで王太子妃教育を受けていたステファニー嬢のイメージを真っ向から覆す印象を我々に与えたのだ。それもアレクの、どストライクを射止めていた。

そして彼は私を見て、勝ち誇った様にニヤリと笑った。




メープル王国側近の自分がこれ程焦りを覚えているのに、仕える主は心ここにあらず。

いい加減にしてくれ!と叫びたいのはこちらである。


全くあの女狐。あの女さえ出て来なければ、自分の思い描く未来が開けていたのだ。
アレクもアレクだ。あんな女に入れ込んで何が真実の愛だ。こんなペラッペラの真実の愛がどこにあろうか。



王太子妃教育も一週間ともたず、逃げ出す令嬢がどこにいる。もう少し頑張れよ、女狐。

こんな事になるなら外交に出るのでは無かった。少しばかりの留守でここまでの代償を誰が予想できたであろうか。





レイモンドは窓の外を見つめるアレクセイに視線を移し、その背中をしばらくの間見つめていた。
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