婚約破棄から始まる物語【完】

mako

文字の大きさ
24 / 76

側妃アナスタージア

しおりを挟む
レイモンドは数日で側妃候補として候爵令嬢を連れてきた。

驚きを隠せないアレクセイに

『アレク、私はそんなに無能ではないよ?知らなかった?
ステファニー嬢が戻って来ないと分かってから準備をしていたんだ。さあ、待たせているから準備をして。』


話についていけないアレクセイは

『待て待て、候爵令嬢とな?何か訳ありなら話してくれ。』


慎重になるアレクセイに

『いや、特に訳ありではないよ。ずっと留学していたからね。帰ってきた頃がちょうどアレクが真実の愛に侵されていた頃と合致しているだけだよ。』


嫌なことを思い出させられたアレクセイは

『ヴィラ候爵は?』

『候爵には予め話してあるよ。彼の王家への忠誠は本物だからね、そこは大丈夫。』

『令嬢の頭の中は?』

『既に王太子妃教育は終えている。とは言え公爵令嬢であったステファニー嬢とは比べてはならないよ?』


『当たり前だ。そこまでは期待していない。花が咲いて無ければ大丈夫だ。で?何が問題点なのだ?』


『だからさ、問題点なんて無いよ。アレク、お前はアレを基準に考えるからおかしくなるのだよ。元々はメープル王国王太子に嫁ぐ令嬢なのだからこれくらいが妥当だと思うけど?』


アレクセイの表情が久々に明るくなり

『レイ、お前は流石だね!』

『今更かよ‥』




2人は令嬢の待つ部屋へと向かった。



『待たせたね、王太子のアレクセイだ』

久々の完全無欠の王子様モードのアレクセイに

『アナスタージア・ヴィラと申します。』

候爵令嬢は美しいカーテシーをすると

『楽にしてくれ。』

アレクセイの声を聞き顔を上げた。

アナスタージアは令嬢とは思えない素朴な笑顔で笑った。

整った顔立ちでありながら、化粧っ気が無いのか幼く見えた。


『アナスタージア嬢は、側妃についてきちんと理解出来ているのかな?』

心配そうに問うアレクセイに


『はい、理解しております。失礼ながら、私が留学する前から王太子妃にはステファニー様と皆の周知の所でした。

しかし帰国してみればヴィクトリア様が王太子妃となられるとの事でした。無知の己を戒める為にヴィクトリア様の事を調べられるだけ調べてみました。

正直驚愕いたしました。私が国の事を語るのは烏滸がましい事でございますが、それでも私にとっての唯一の国。帰るべき国ですもの。誇れる国であって欲しいと願う事は罪ではないでしょう?


そんな時、レイモンド様よりお話しを頂きました。
殿下さえ、お嫌でなければ誠心誠意努めたく存じます。』



風貌からは予想も出来ない回答にアレクセイは目を見開いた。


『君は、私で良いのか?』

アナスタージアは首を傾げ


『殿下?何をおっしゃるのですか?この国、いえ私の留学していた国でも殿下の王子様ぶりに黄色い声を上げる令嬢は山程いらっしゃいましたよ?』


笑いをこらえていたレイモンドが

『我が国の王太子は、心の病に侵されご自分を見失っていらっしゃるのだ。』


アレクセイは2人を交互に見つめ、


『では、これからよろしく頼む。』

2人は最上級の礼を取った。


仕事の早いレイモンドの力を知ることになるのは直ぐにであった。

翌週には側妃が正式に発表され、アナスタージアは離宮へ入った。

国王と王妃への挨拶も済ませヴィクトリアに挨拶に向うアナスタージアにアレクセイは声を掛けた。


『アナスタージア、大丈夫?』

アナスタージアはキョトンとし

『何がですか?』

アナスタージアは才女ではあるが、天然の所もあるらしい。

その小さく華奢な背中を見送りアレクセイは小さく微笑んだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。  しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。  無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。  『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。 【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

悪役令嬢の役割は終えました(別視点)

月椿
恋愛
この作品は「悪役令嬢の役割は終えました」のヴォルフ視点のお話になります。 本編を読んでない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。 母親が亡くなった日、ヴォルフは一人の騎士に保護された。 そこから、ヴォルフの日常は変わっていく。 これは保護してくれた人の背に憧れて騎士となったヴォルフと、悪役令嬢の役割を終えた彼女とのお話。

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

竜皇帝陛下の寵愛~役立たずの治癒師は暗黒竜に今日も餌付けされ中!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリリアーナ・アンシーは社交界でも醜い容姿故にアザラシ姫と呼ばれていた。 そんな折、敵対する竜の国との平和条約の為に生贄を差し出すことになった。 その相手は純白の聖女と呼ばれるサンドラだったが国の聖女を差し出すわけにも行かず、リリアーナが身代わりを務めることになった。 辺境伯爵令嬢ならば国の為に働くべきだと泣く泣く苦渋の選択をした婚約者だったが体よくリリアーナを国から追い出し、始末する魂胆が丸見えだった。 王も苦渋の選択だったがリリアーナはある条件を付け了承したのだ。 そして決死の覚悟で敵国に迎えられたはずが。 「君が僕のお嫁さんかい?とりあえず僕の手料理を食べてくれないかな」 暗黒竜と恐れられた竜皇帝陛下は何故か料理を振る舞い始めた。 「なるほどコロコロ太らせて食べるのか」 頓珍漢な勘違いをしたリリアーナは殺されるまで美味しい物を食べようと誓ったのだが、何故か食べられる気配はなかった。 その頃祖国では、聖女が結界を敷くことができなくなり危機的状況になっていた。 世界樹も聖女を拒絶し、サンドラは聖女の地位を剥奪されそうになっていたのだった…

処理中です...