婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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婚約披露会

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レイモンドの思い虚しく、婚約披露会が行われる。
公爵家は朝から目まぐるしい時間が流れていた。


レイモンドは王宮へは上がらずシルビアを迎えに行くまでの時間は珍しく暇を持て余していた。



その頃シルビアは王宮のアナスタージアに呼ばれていた。

『王妃、本日は婚約披露会の準備がございますので‥』


アナスタージアはニヤリと笑い


『存じてますわ。だからこそお呼び立てしましたのよ?』


そういうと、王宮に仕える侍女たちがゾロゾロと入ってきたのである。
驚くシルビアをよそにアナスタージアは


『だからこそ、メープル1の腕を持つ者を揃えましたの。貴女は今日1番の主役ですからね。美しく磨き上げるので時間がありません。さあ、早く!』



絶句するシルビア以外は、仕事に取り掛かる。アナスタージアも王妃自ら侍女の如く働きまわる。


『王妃、なりません!』


『黙りなさい。さあ、早く』


シルビアは為す術もなく人形の様になる。







アナスタージアはアレクセイと共に、披露会の準備を終えていた。アレクセイの瞳の色のドレスに宝石。2人仲良くお茶会をしていると扉がノックされた。


アナスタージアは自ら扉を開けて笑顔になる。


『ほら?やっぱり大成功だわ!ね?アレク!』


アレクセイも目を見開き言葉が出ない。


仕上げられたお人形、いやシルビアはいつものイメージとは異なり、アイスブルーのドレスに髪はハーフアップにし小花を散らしている。


『もはや天使か‥』


呟くアレクセイにシルビアは


『勿体無く存じます。』

深く膝を折ると。

『よい。でもびっくりしたよ、シルビア嬢だよね?』


アナスタージアは胸を張る。


『私の見立て通りだわ!この一式は私達からのお祝いだからね。さあ、レイモンドが来るまで3人お茶会をしましょう?』



‥3人お茶会って、私も?


有無を言わせず開かれた3人お茶会。
シルビアは産まれて初めて誰かを心待ちにした。

‥早く迎えに来て。



ようやくノックと共にレイモンドが入ってきた。


『アレク!入るよ~』


部屋に入るレイモンドはすぐさま固まる。


『レイ、わかる。私も固まったからね。』

アレクセイは首を縦に振り納得している。


『もはや天使だろ?』

アレクセイの問いにレイモンドは思わず頷く。

『天使以外、何者でもないな。』

アナスタージアは喜び


『さあ、あなたの婚約者よ。早く連れて帰りなさい!』


アナスタージアに追われるように2人は王宮を後にした。


馬車の中に広がる沈黙。


‥シルビアだよね?



‥やっぱり変よね?



2人の心は交差しながら、もつれていく。


『あ、あの。』

先に口を開いたのはシルビア。

レイモンドは瞳だけ動かす。

『どうした?』


『やっぱり、何か変ですよね?どうしましょう』


‥どうしましょうってどうしましょう。


『変ではないよ?』


『‥』


『いや、むしろその方が‥何て言うか‥良いと言うか‥天使?』


『て、天使?何が?』


『いや?あの、シルビア嬢が?』


『‥』


噛み合わない会話が繰り返される中、馬車は公爵家に到着した。



初めて踏み入れる公爵邸に驚きを隠せないシルビア。
流石筆頭公爵家。広さも豪華さも桁違いである。


控え室までエスコートされ、出ていこうとするレイモンドに
シルビア嬢は


『レイモンド様、申し訳ありません。』

頭を下げるシルビアに覚悟を決める。


『何が?‥シルビア嬢は心に決めた人でも居るのかな?』


縁談に乗り気で無かったシルビアには心に決めた人が居るのであろうと覚悟はしていた。
レイモンドはお決まりの王子様スマイル。


シルビアは驚き首を振る。


『そうでは無く‥レイモンド様こそ心に決めたお方がいらっしゃるのでは?』



‥は?何で?



レイモンドは頭を巡らせる。


『いつも私との時間は苦痛そうでございましたのでご無理をなさっているのかと。私もお父様に何度もご迷惑になる縁談はやめる様に働き掛けたのですが。私が至らぬばかりで今日を迎えてしまいました。』


申し訳無さそうに謝るシルビアにレイモンドの心は痛む。



『どうして君が謝るの?』

シルビアは首を傾げる。


『私の存在が、ご迷惑をお掛けしておりますので』


『だから何で?』

『‥。』

明らかに目が泳ぐシルビア。


目の前のシルビア・ランドルト候爵令嬢はレイモンドの想像とは異なり、今にも泣きそうな表情でありながら必死にそこに立っているように思えた。


『謝るのは君ではないだろう?』
声を上げるレイモンドにシルビアはビクッと肩を上げる。



『君は悪くない。私の覚悟が無かっただけだ。』

『覚悟を決めなければと言われるということは、どなたが私達の縁談で涙を流す方がいらっしゃるのでは?』


誰も居ない誰かを心配するシルビア。


『あ!名案がございました!私としたことが、バカでしたわ!ステファニー様のように修道院に入れば誰にも迷惑が掛かりませんのに!』

手を叩き合わせ、名案を喜び扉を出ていこうとするステファニーの腕を取り


『どこへ行くの?』


シルビアは満面の笑みで


『お父様の所へ!』


‥勘弁してくれ


『シルビア嬢、いやシルビア。君は私の婚約者だ。そんな所へ入って貰っては困るし、私は殿下のように許可はしないよ。それにね、修道院に入った令嬢を迎えにいくのは懲り懲りだよ‥』


『‥』


『シルビア、私と共にこれから歩んで行ってくれるね?』


『‥?』


『イヤなの?』



『‥えっと?私はどうなりますの?』



レイモンドは苦笑いになり


『シルビアは馬鹿なの?』

シルビアは目を見開いた。
馬鹿などと言われたのは産まれて初めてである。


『馬鹿ではありません!恐らく‥』

シルビアは頬を膨らませカオを背ける。

そのシルビアにこちらも驚き


『シルビア‥それは反則だわ。』


レイモンドも背を向けた。
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