62 / 76
孤児院視察
しおりを挟む
孤児院に到着した馬車は静かに停車する。
中に入ると子どもたちが静かに絵本を読んでいる。
普段は元気に子どもたちは、外を走り回っている。今日も晴天のどろんこ日和である。
シルビアとフリードリヒ率いる一行は中に入ると孤児院の職員が満面の笑みでフリードリヒに挨拶し奥の椅子に促す。
シルビアは読書をしている風の子どもに、声を掛けた。
『ねえ、ロン?今日はお外で遊ばないの?』
ロンは顔を上げると小さな声で
『今日は王子様が来るから駄目なんだって』
シルビアは首を傾げ
『どうして?』
『よくわからないけど。いい子にしていないと補助金が多く貰えないんだって。』
シルビアは大きく溜息をついた。
『‥ロン、それでいいの?私はせっかく元気な姿を見て頂きたくてここに来たのよ?』
ロンは悲しそうに俯いた。
シルビアが見渡すといつもの雰囲気はどこにもなく、静まり返る室内。こんな視察は意味など無い。シルビアは悲しげに目を閉じた。
『では、みんないつも通りにしてくれ。』
フリードリヒ王子が声を上げると子どもたちは
『いいの?』
と満面の笑みで顔を上げた。
フリードリヒ王子は腕まくりをし、輪の中に入ると
『私も仲間に入れてくれ!』
慌てふためく職員にシルビアが
『殿下の仰せの通りに』
とフリードリヒを止めに入る職員に言うと
『全く女のくせに。理屈こきは黙ってくれ』
フリードリヒは側近を呼び寄せ耳打ちをし、シルビアに声を掛けた。
『さあ、シルビア嬢も一緒に!いつもの様にお願いする』
フリードリヒの笑顔に促されシルビアは心が軽くなり子どもたちと外に出た。
フリードリヒは少年のように楽しそうに子ども達と一緒になって遊んでいる。
『さあ、シルビア嬢もおいで!』
フリードリヒはシルビアに手を伸ばす。
シルビアは戸惑いながらも差し伸べられた手に手を重ねた。
シルビアは気づいたら時間を忘れて楽しんでいた。日頃の公爵夫人教育で忘れかけていた笑顔を取り戻すかのように。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りも暗くなり始めた頃シルビアはハッとする。
『殿下。申し訳ありません。時間が大分押してしまいましたわ。』
申し訳なさそうに謝るシルビアにフリードリヒは
『私が誘ったのだからシルビア嬢は悪くないさ。でもいつからぶりだろうか。時間を忘れるひとときなんて。楽しかったよ。ありがとう、シルビア嬢。』
そう言うとシルビアをエスコートしながら馬車に戻った。
『殿下、殿下はどうして子ども達の様子がいつもと違う事に気が付かれたのですか?』
シルビアは窓の外に目をやるフリードリヒに声を掛けた。
フリードリヒは微笑みながら
『私でなくても分かるよ。シルビア嬢が選んだ場所にしては、何かが違う様な気がしただけだよ。』
フリードリヒは優しく答えると再び窓の外に目を移した。
兎にも角にも、視察は大成功で幕を閉じた。
中に入ると子どもたちが静かに絵本を読んでいる。
普段は元気に子どもたちは、外を走り回っている。今日も晴天のどろんこ日和である。
シルビアとフリードリヒ率いる一行は中に入ると孤児院の職員が満面の笑みでフリードリヒに挨拶し奥の椅子に促す。
シルビアは読書をしている風の子どもに、声を掛けた。
『ねえ、ロン?今日はお外で遊ばないの?』
ロンは顔を上げると小さな声で
『今日は王子様が来るから駄目なんだって』
シルビアは首を傾げ
『どうして?』
『よくわからないけど。いい子にしていないと補助金が多く貰えないんだって。』
シルビアは大きく溜息をついた。
『‥ロン、それでいいの?私はせっかく元気な姿を見て頂きたくてここに来たのよ?』
ロンは悲しそうに俯いた。
シルビアが見渡すといつもの雰囲気はどこにもなく、静まり返る室内。こんな視察は意味など無い。シルビアは悲しげに目を閉じた。
『では、みんないつも通りにしてくれ。』
フリードリヒ王子が声を上げると子どもたちは
『いいの?』
と満面の笑みで顔を上げた。
フリードリヒ王子は腕まくりをし、輪の中に入ると
『私も仲間に入れてくれ!』
慌てふためく職員にシルビアが
『殿下の仰せの通りに』
とフリードリヒを止めに入る職員に言うと
『全く女のくせに。理屈こきは黙ってくれ』
フリードリヒは側近を呼び寄せ耳打ちをし、シルビアに声を掛けた。
『さあ、シルビア嬢も一緒に!いつもの様にお願いする』
フリードリヒの笑顔に促されシルビアは心が軽くなり子どもたちと外に出た。
フリードリヒは少年のように楽しそうに子ども達と一緒になって遊んでいる。
『さあ、シルビア嬢もおいで!』
フリードリヒはシルビアに手を伸ばす。
シルビアは戸惑いながらも差し伸べられた手に手を重ねた。
シルビアは気づいたら時間を忘れて楽しんでいた。日頃の公爵夫人教育で忘れかけていた笑顔を取り戻すかのように。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りも暗くなり始めた頃シルビアはハッとする。
『殿下。申し訳ありません。時間が大分押してしまいましたわ。』
申し訳なさそうに謝るシルビアにフリードリヒは
『私が誘ったのだからシルビア嬢は悪くないさ。でもいつからぶりだろうか。時間を忘れるひとときなんて。楽しかったよ。ありがとう、シルビア嬢。』
そう言うとシルビアをエスコートしながら馬車に戻った。
『殿下、殿下はどうして子ども達の様子がいつもと違う事に気が付かれたのですか?』
シルビアは窓の外に目をやるフリードリヒに声を掛けた。
フリードリヒは微笑みながら
『私でなくても分かるよ。シルビア嬢が選んだ場所にしては、何かが違う様な気がしただけだよ。』
フリードリヒは優しく答えると再び窓の外に目を移した。
兎にも角にも、視察は大成功で幕を閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
青天の霹靂ってこれじゃない?
浦 かすみ
恋愛
贅沢三昧でとんでもない王妃だった私、国王陛下の(旦那)から三行半を突き付けられた!
その言葉で私は過去を思い出した。
第二王妃からざまぁを受ける羽目になった私だが、おや待てよ?
それって第一王妃の仕事もうやらなくていいの?
自分磨きに独り立ちの為に有効使わせてもらいましょう!
★不定期更新です
中盤以降恋愛方面の話を入れていく予定です。
誤字脱字等、お見苦しくてすみません。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
妻の私は旦那様の愛人の一人だった
アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。
そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。
貴方は酷い人よ。
羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。
私は生きる屍。
貴方は悪魔よ!
一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定ゆるいです。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる