婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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孤児院視察

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孤児院に到着した馬車は静かに停車する。

中に入ると子どもたちが静かに絵本を読んでいる。
普段は元気に子どもたちは、外を走り回っている。今日も晴天のどろんこ日和である。


シルビアとフリードリヒ率いる一行は中に入ると孤児院の職員が満面の笑みでフリードリヒに挨拶し奥の椅子に促す。

シルビアは読書をしている風の子どもに、声を掛けた。

『ねえ、ロン?今日はお外で遊ばないの?』

ロンは顔を上げると小さな声で

『今日は王子様が来るから駄目なんだって』

シルビアは首を傾げ

『どうして?』

『よくわからないけど。いい子にしていないと補助金が多く貰えないんだって。』


シルビアは大きく溜息をついた。

『‥ロン、それでいいの?私はせっかく元気な姿を見て頂きたくてここに来たのよ?』

ロンは悲しそうに俯いた。

シルビアが見渡すといつもの雰囲気はどこにもなく、静まり返る室内。こんな視察は意味など無い。シルビアは悲しげに目を閉じた。


『では、みんないつも通りにしてくれ。』

フリードリヒ王子が声を上げると子どもたちは

『いいの?』

と満面の笑みで顔を上げた。

フリードリヒ王子は腕まくりをし、輪の中に入ると

『私も仲間に入れてくれ!』

慌てふためく職員にシルビアが

『殿下の仰せの通りに』

とフリードリヒを止めに入る職員に言うと


『全く女のくせに。理屈こきは黙ってくれ』

フリードリヒは側近を呼び寄せ耳打ちをし、シルビアに声を掛けた。

『さあ、シルビア嬢も一緒に!いつもの様にお願いする』

フリードリヒの笑顔に促されシルビアは心が軽くなり子どもたちと外に出た。


フリードリヒは少年のように楽しそうに子ども達と一緒になって遊んでいる。

『さあ、シルビア嬢もおいで!』 

フリードリヒはシルビアに手を伸ばす。
シルビアは戸惑いながらも差し伸べられた手に手を重ねた。

シルビアは気づいたら時間を忘れて楽しんでいた。日頃の公爵夫人教育で忘れかけていた笑顔を取り戻すかのように。




楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りも暗くなり始めた頃シルビアはハッとする。


『殿下。申し訳ありません。時間が大分押してしまいましたわ。』

申し訳なさそうに謝るシルビアにフリードリヒは

『私が誘ったのだからシルビア嬢は悪くないさ。でもいつからぶりだろうか。時間を忘れるひとときなんて。楽しかったよ。ありがとう、シルビア嬢。』


そう言うとシルビアをエスコートしながら馬車に戻った。



『殿下、殿下はどうして子ども達の様子がいつもと違う事に気が付かれたのですか?』

シルビアは窓の外に目をやるフリードリヒに声を掛けた。

フリードリヒは微笑みながら

『私でなくても分かるよ。シルビア嬢が選んだ場所にしては、何かが違う様な気がしただけだよ。』

フリードリヒは優しく答えると再び窓の外に目を移した。


兎にも角にも、視察は大成功で幕を閉じた。

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