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夜会
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国際会議の夜会ともなれば、通常よりも盛大に行われる。慌ただしく時間が過ぎていく中、王宮に一台の馬車が到着した。
シルビア・ランドルト候爵令嬢の乗せた馬車が静かに止まると既にフリードリヒ殿下は正装でシルビアを待っていた。
馬車を降りるシルビアに手を差し伸べるフリードリヒ。
シルビアは手を重ねて降りる。
アナスタージアも既に準備が整いアレクセイを待っていると先にレイモンドが部屋に入ってきた。
『アレクはもう少し掛かるから待ってて。』
レイモンドは短く伝え、ソファに座る。
『お疲れのようね。精神的に。』
ニヤリと笑うアナスタージアにレイモンドは苛立ちを全面に出す。
『貴方も存分鈍いわね。完全無欠な側近でも女心は分からないのね。』
レイモンドはアナスタージアを睨み付ける。
『優秀な男はね、時には人間味を出した方が素敵なものよ?何を恐れているのかは知らないけれど、今の貴方はつまらない男だわ。
政略結婚など必要もない立ち場にいるくせに。要らないなら喜んで差し出しなさいよ。そして必要ならば全力で挑みなさい。アレクがおかしくなった時よりも今の貴方はおかしくなってるわ。何が貴方をおかしくしているのかしらね?』
珍しく厳しい口調のアナスタージアが語り終えるとアレクセイがやってきて
『また私のおかしくなった話しかい?死ぬまで語り継がれる勢いだね‥』
アナスタージアはアレクセイを見ると、満面の笑みとなり駆け寄る。
アナスタージアを胸に抱きアレクセイは言う。
『レイ、私はおかしくなっていた時、お前に助けてもらった。今回は私が助ける番だ。お前の好きなようにすれば良い。どちらでも責任は私が取る。』
そう言うとアナスタージアをエスコートし会場に向かった。
2人の後を負い、一足先に会場に入ったレイモンドはフリードリヒにエスコートされるシルビアを見つけた。先日の婚約披露の後ということもありメープル王国の貴族たちの興味を引くには格好の話題である。
シルビアは婚約者の瞳の色のブルーのドレスを身に纏ってはいるが、フリードリヒの瞳も碧眼である。
髪はアップに結い上げ、おくれ毛が悩ましい程色気が漂う。
控えめに開く背中は白く凛とし、そこに居るだけで周りの視線を釘付けにしている。
たまには見せる笑顔に思わずため息が漏れる。
隣のフリードリヒは満足気にシルビアを見つめる。
レイモンドは居た堪れなくなり視線を流した。
レイモンドはアレクセイの側に控え、己の仕事に没頭する。
アレクセイとアナスタージアのファーストダンスに会場が湧き上がる所で一息つく。
貴族らもダンスに入ったりしだし、レイモンドは会場全体を見渡すとフリードリヒがシルビアにダンスに誘っている所であった。シルビアは申し訳なさそうにドレスを少し上げると足首には包帯が巻かれていた。
‥怪我?レイモンドはシルビアの足首の状態を心から案じていた。気づいてやれなかった自分を責めた。
レイモンドは形ばかりとはいえ、婚約者として何もしてやれていなかった事を悔いた。恐れていたものの正体は既に分かっている。この国で1番の家臣でなければならないと幼き頃から言い聞かせていたレイモンドにとって、優秀なシルビアの存在が疎ましかったのだ。
しかしシルビアは優秀ではあるがサイボーグな様な人間ではなかった。真面目に賢明に努力する一人の令嬢である。凛としていながらも恐怖に目を泳がす事もあれば、子どもの様な笑顔で笑う事も知った。
レイモンドが頭を巡らせている中、無事夜会も終わりをむかえる。レイモンドは急いでアレクセイの側に控えるべく壇上に上がっていった。
夜会がお開きとなり執務室に戻り、いつもの様に2人で反省会をワインと共に行っていると、扉がノックされ側近の一人でもあるセバスチャンが顔を出す。
『殿下、フリードリヒ殿下がお目通りをとの事ですがいかがなされますか?』
2人は顔を合わせる。
アレクセイは
『すまないがこちらにお通ししてくれ』
アレクセイはワインを飲み干しフリードリヒを待つ。
やがて正装のままのフリードリヒがやってきて笑顔で話す。
『私も仲間に入れてくれ』
プライベートな空間であるため砕けた雰囲気の中、3人でワインを開けた。
『で?レイモンド殿はどうするの?』
ニヤリと笑うフリードリヒ。レイモンドはワインの力を借りてかフリードリヒを真っすぐ見据えながら答える。
『殿下のお話にありました様に、シルビア嬢の幸せを願いダリス大王国に送り出せる器は私には無いようです。』
フリードリヒはアレクセイに
『ねえ、私は一生妻帯出来ないのではないかな?』
自虐的に問うと
『そんな事‥ありますかね?』
笑うアレクセイ。
『私が求める令嬢はちっとも私を見てくれないよ。興味の無い令嬢は沢山求めてくれるのにね?どうゆう事?』
完全無欠の王子様は嘆くように言う。
レイモンドはフリードリヒに
『私の勝手を聞いて頂けるのですか?』
フリードリヒは心外という表情で
『私は何も無理矢理愛し合う2人を引き離す悪役になるつもりはないよ?素直にシルビア嬢を幸せにしたいと願ったまでだ。でもねシルビア嬢も政略結婚ではなく、君を求めているじゃない。シルビア嬢が幸せになるならそれでよいのだ。』
ワインを味わうフリードリヒはこうも続けた。
『彼女は私とダンスを踊らなかった。ファーストダンスだからね。婚約者と踊ってないから私とは踊れない。でも断わる事も出来ない。だからこそ怪我をしていたのだろ?
いじらしいじゃない?流石に私も我を忘れて持ってかれそうになったよ。私が常識人で感謝してくれ。そうでなかったら今頃ダリスに連れて帰っているさ。』
恐ろしい事を笑顔で語るフリードリヒに2人は固まる。
アレクセイは
『フリードリヒ殿、今回は私も助けられましたが、その他人への忖度が長けているとやはり妻帯出来ないかもですね。』
フリードリヒは苦笑いをしながら、
『うちの王妃にもよく言われるよ‥』
その後、フリードリヒは自分が立太子せず今の立ち場を自ら選んだ話しなどを話し3人は和やかな時間を過ごした。
翌日にはダリス大王国第一王子は笑顔で帰国されたのである。
シルビア・ランドルト候爵令嬢の乗せた馬車が静かに止まると既にフリードリヒ殿下は正装でシルビアを待っていた。
馬車を降りるシルビアに手を差し伸べるフリードリヒ。
シルビアは手を重ねて降りる。
アナスタージアも既に準備が整いアレクセイを待っていると先にレイモンドが部屋に入ってきた。
『アレクはもう少し掛かるから待ってて。』
レイモンドは短く伝え、ソファに座る。
『お疲れのようね。精神的に。』
ニヤリと笑うアナスタージアにレイモンドは苛立ちを全面に出す。
『貴方も存分鈍いわね。完全無欠な側近でも女心は分からないのね。』
レイモンドはアナスタージアを睨み付ける。
『優秀な男はね、時には人間味を出した方が素敵なものよ?何を恐れているのかは知らないけれど、今の貴方はつまらない男だわ。
政略結婚など必要もない立ち場にいるくせに。要らないなら喜んで差し出しなさいよ。そして必要ならば全力で挑みなさい。アレクがおかしくなった時よりも今の貴方はおかしくなってるわ。何が貴方をおかしくしているのかしらね?』
珍しく厳しい口調のアナスタージアが語り終えるとアレクセイがやってきて
『また私のおかしくなった話しかい?死ぬまで語り継がれる勢いだね‥』
アナスタージアはアレクセイを見ると、満面の笑みとなり駆け寄る。
アナスタージアを胸に抱きアレクセイは言う。
『レイ、私はおかしくなっていた時、お前に助けてもらった。今回は私が助ける番だ。お前の好きなようにすれば良い。どちらでも責任は私が取る。』
そう言うとアナスタージアをエスコートし会場に向かった。
2人の後を負い、一足先に会場に入ったレイモンドはフリードリヒにエスコートされるシルビアを見つけた。先日の婚約披露の後ということもありメープル王国の貴族たちの興味を引くには格好の話題である。
シルビアは婚約者の瞳の色のブルーのドレスを身に纏ってはいるが、フリードリヒの瞳も碧眼である。
髪はアップに結い上げ、おくれ毛が悩ましい程色気が漂う。
控えめに開く背中は白く凛とし、そこに居るだけで周りの視線を釘付けにしている。
たまには見せる笑顔に思わずため息が漏れる。
隣のフリードリヒは満足気にシルビアを見つめる。
レイモンドは居た堪れなくなり視線を流した。
レイモンドはアレクセイの側に控え、己の仕事に没頭する。
アレクセイとアナスタージアのファーストダンスに会場が湧き上がる所で一息つく。
貴族らもダンスに入ったりしだし、レイモンドは会場全体を見渡すとフリードリヒがシルビアにダンスに誘っている所であった。シルビアは申し訳なさそうにドレスを少し上げると足首には包帯が巻かれていた。
‥怪我?レイモンドはシルビアの足首の状態を心から案じていた。気づいてやれなかった自分を責めた。
レイモンドは形ばかりとはいえ、婚約者として何もしてやれていなかった事を悔いた。恐れていたものの正体は既に分かっている。この国で1番の家臣でなければならないと幼き頃から言い聞かせていたレイモンドにとって、優秀なシルビアの存在が疎ましかったのだ。
しかしシルビアは優秀ではあるがサイボーグな様な人間ではなかった。真面目に賢明に努力する一人の令嬢である。凛としていながらも恐怖に目を泳がす事もあれば、子どもの様な笑顔で笑う事も知った。
レイモンドが頭を巡らせている中、無事夜会も終わりをむかえる。レイモンドは急いでアレクセイの側に控えるべく壇上に上がっていった。
夜会がお開きとなり執務室に戻り、いつもの様に2人で反省会をワインと共に行っていると、扉がノックされ側近の一人でもあるセバスチャンが顔を出す。
『殿下、フリードリヒ殿下がお目通りをとの事ですがいかがなされますか?』
2人は顔を合わせる。
アレクセイは
『すまないがこちらにお通ししてくれ』
アレクセイはワインを飲み干しフリードリヒを待つ。
やがて正装のままのフリードリヒがやってきて笑顔で話す。
『私も仲間に入れてくれ』
プライベートな空間であるため砕けた雰囲気の中、3人でワインを開けた。
『で?レイモンド殿はどうするの?』
ニヤリと笑うフリードリヒ。レイモンドはワインの力を借りてかフリードリヒを真っすぐ見据えながら答える。
『殿下のお話にありました様に、シルビア嬢の幸せを願いダリス大王国に送り出せる器は私には無いようです。』
フリードリヒはアレクセイに
『ねえ、私は一生妻帯出来ないのではないかな?』
自虐的に問うと
『そんな事‥ありますかね?』
笑うアレクセイ。
『私が求める令嬢はちっとも私を見てくれないよ。興味の無い令嬢は沢山求めてくれるのにね?どうゆう事?』
完全無欠の王子様は嘆くように言う。
レイモンドはフリードリヒに
『私の勝手を聞いて頂けるのですか?』
フリードリヒは心外という表情で
『私は何も無理矢理愛し合う2人を引き離す悪役になるつもりはないよ?素直にシルビア嬢を幸せにしたいと願ったまでだ。でもねシルビア嬢も政略結婚ではなく、君を求めているじゃない。シルビア嬢が幸せになるならそれでよいのだ。』
ワインを味わうフリードリヒはこうも続けた。
『彼女は私とダンスを踊らなかった。ファーストダンスだからね。婚約者と踊ってないから私とは踊れない。でも断わる事も出来ない。だからこそ怪我をしていたのだろ?
いじらしいじゃない?流石に私も我を忘れて持ってかれそうになったよ。私が常識人で感謝してくれ。そうでなかったら今頃ダリスに連れて帰っているさ。』
恐ろしい事を笑顔で語るフリードリヒに2人は固まる。
アレクセイは
『フリードリヒ殿、今回は私も助けられましたが、その他人への忖度が長けているとやはり妻帯出来ないかもですね。』
フリードリヒは苦笑いをしながら、
『うちの王妃にもよく言われるよ‥』
その後、フリードリヒは自分が立太子せず今の立ち場を自ら選んだ話しなどを話し3人は和やかな時間を過ごした。
翌日にはダリス大王国第一王子は笑顔で帰国されたのである。
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