婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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結婚式

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レイモンドは予定より半年も早くに結婚式を行う様に手配を変更した。

メープル王国ではアレクセイとヴィクトリアと結婚式も前倒しとなっていた。国王と側近の仲の良さであろうか。

それでもやはり公爵家では日々翻弄させられているのは間違い無い。

シルビアは執事に申し訳なさそうにしていると

『そんな事は気になさらず立派なお子さまをお産みになられます事だけに注力してください。』


相変わらずのポーカーフェイスだが、誰よりもシルビアを案じてくれている事をシルビアは知っていた。


シルビアは全てを執事に任したまま結婚式を迎える事になった。


結婚式とオメデタと2重の喜びに包まれ滞り無く結婚式は終わりを告げた。

レイモンドはシルビアを気遣い、その後の夜会は行わず身内だけで過ごす事にした。

アレクセイとアナスタージア。友好国であるロマニア王国のレオナルドと側近のフレディック。そこにもう一人ステファニーの侍女であるメアリー嬢まで何故か今回同行している。



和気あいあいと流れる時間の中、アナスタージアはメアリーに声を掛けた。


『ステファニー様のお加減はいかがですか?』

ロマニア王国はステファニーが王子を産みお祭りモードとなっていた。無表情な国王レオナルドの姿はもうどこにも無く
毎日デレデレになっているとの事。


『お元気にしていらっしゃいます。』

微笑むメアリー嬢にアナスタージアは何気に問う。

『貴女はステファニー様のお側についていらした方よね?』

メアリーは当然という表情で

『左様でこざいます。』

アナスタージアは続ける。

『今回は‥?』

またもメアリーは当然という表情で

『妻
として同行いたしました次第でございます。』

固まるメープル一同。
サッと視線はレオナルドに集まる。

『いやいや私ではない。私の妻は生涯ステフだけだ。』





次に視線がフレディックに集まるとフレディックは笑いながら


『私しかいないよね?』


‥。


『えっ?フレディック殿は妻帯していたのか』

驚いたレイモンドに

『いや、先週の事だよ。今回こちらに伺うのに同行させたくてね。』


‥。

追いつかないメープル一同。

『既にメアリーのお腹には子どももいるしね。』



『は?』

声を上げるのはアレクセイ。


今回のレイモンドと同じような境遇であるが、レイモンドは国を挙げて結婚式を終えている。そこに平然と参列しながらも既に自分は結婚式を終えていると?


『いやいや結婚式はメアリーと2人だけで誓いを立てただけだからね。だれも招待などしていないんだ。』



‥。


『フレディック殿は公爵家だったね?失礼ながらメアリー殿は?』


レイモンドは困惑気味に問う。

『侯爵家でございます。』


『は?』

またも声を上げるアレクセイ。


『すまない、頭が追いつかない。一回整理させてくれるか?』

アレクセイは頭を抱える。

アナスタージアはメアリーに

『お身体は大丈夫なのですか?』

『はい、これくらい大丈夫でしょう?』


‥大丈夫でしょう?って大丈夫なの?



メアリー嬢はロマニア王国の侯爵令嬢であった。侯爵家には8人の子どもが居て自由に育てられたせいか、メアリーは比較的自由な身であったという。

侯爵家の3女であるメアリーは婚約者候補よりも、孤児院や修道院への慈善活動に力を注いでいたという。

そこで出会った一人の女性。
メアリーは直ぐに只者でない事を察知し、調べていたのだ。

ステファニーの正体を誰よりも早く掴んでいたフレディックの情報元はここであったのだ。


『私は、メープル王国国王がおかしくなられたおかげでステファニー様と出会い、ステファニー様に感銘を受け侍女として王宮に上がりましたの。』


いわゆるフレディックが力を使った公私混同である。


『そして今回はステファニーさまの祖国での式ですもの。お腹に子がおろうとも是非に参列したく早めに式を終えましたの。』


何ともいろんな意味で合意的なメアリーにメープル一同は驚きを隠せない。

レイモンドは恨めしそうにフレディックに言う。


『何だか身軽な公爵令息だね。』

同じような境遇でありながらレイモンドは公爵家上げて翻弄しながらようやく結婚式を終えたのだ。

『え?普通だけど?』

フレディックは言うが、レオナルドは

『レイモンド殿、すまない。そなたが普通だと思うぞ?』

その様子を他人事のように眺めるメアリーにシルビアが問う。


『その、メアリー様は政略結婚では無いという事ですね?』


メアリーは当然の様に


『そもそも結婚自体に興味などございませんでしたから。』


目を丸くするメープル一同。

『で、ですがこうして今や公爵夫人ですのよね。』

同じ立場のシルビアは食い付く。

『まあ、今では立場的にステファニー様の侍女を離れ公爵夫人ですよね?』

‥何故疑問符付きなのかしら?


困惑気味のメープル一同を面白そうに眺めるフレディック。


アレクセイは真面目にレオナルドに問う。


『ロマニア王国では、コレが普通なのか?』

『いやいや、例外だよ。』

呆れた様に答えるレオナルド。

『でもまあ、二人揃ってこうだからな‥』

納得させるように言うレオナルド。


男同士、何とか納得させる様に着地させるも女同士はそうもいかない。


アナスタージアとシルビアはメアリーと席を移し尋問する。


『あの、いつからフレディック様とは?』


『え?幼き頃から知ってますが?』


『そうでは無く、愛を‥その感じたのは?』

『愛?』


『だって政略結婚では無いのでしょう?でしたら真実の愛なのですわよね?』


『そうなのですか?』


‥そうなのですかって?

固まる二人。


『お子さまがお腹にいらっしゃるということは、その、アレですわよね?』

アナスタージアは真面目に問う。


アナスタージアはなかなか子どもを授からないのを案じており、それ以外にも授かる方法があるのかを問いたかった。


『それは、それ以外にございませんもの。』

これまた当然の如く話すメアリー。


ガックリと肩を落とすアナスタージア。
まだまだ突っ込むシルビア。

『でも、その政略結婚のつとめではなく、真実の愛を確かめるでもなく、その、お子さまをお作りに?』

ここまでくると、恥じらいも何もなくなってきている。

『はい、一応公爵夫人ですからね?』


シルビアは納得したかのように

『政略結婚みたいな事ですわね?』


するとメアリーは平然と

『いいえ、違いますわ。私はフレディックでなければ結婚などしませんでしたし、フレディックの子どもでなければ作りませんでしたわ。』

固まる2人。

‥話が堂々巡りしている。
‥文化の違いかしら?
‥。


『元気なお子さまを楽しみしておりますわ』


もう、訳がわからないがここで無理くり着地させたアナスタージア。


それでもフレディックとメアリーは幸せそうに映る。愛の形はそれぞれである。




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