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かすみの秘密③

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「いいから言われた通りにしなさい」

剣城は健斗のマンションに車を走らせた。

その頃、拓真が仕事に出かけたのを見送って、かすみはベッドに潜り込んだ。

そのタイミングで、インターホンが鳴った。

誰だろう、拓海さん、忘れ物かな。

かすみは重い身体を起こしてインターホンに応対した。

インターホンに映し出されたのは、この間拓真とキスをしていた妖艶な美女梨花だった。

梨花さん、拓真さんに会いにきたの?

かすみは仕方なく返事をした。

「はい」

「健斗はいる?」

「仕事に行って留守です」

「そう、花園かすみさんよね、私、真山梨花、健斗の婚約者よ、開けてくれる?」

婚約者?やっぱりそうなんだ。

かすみはなんの用なのか嫌な予感が脳裏を掠めた。

ドアを開けると、梨花と共に一人の男性が梨花の後ろに立っていた。



「お話があるの、入れてくださる?」

梨花はかすみが返事をしないうちにずかずかと部屋に入ってきた。

梨花の後ろのいた男性は、かすみに一礼して、挨拶をした。

「真山組若頭の剣城と申します、突然の訪問をお許しください」

「ご丁寧にありがとうございます、花園かすみと申します、どうぞお入りください」

梨花は勝手に入りソファに腰を下ろしていた。

「今、お茶を淹れます」

「お茶はいいから、座ってくださる?」

梨花はかすみの健斗の妻のような態度に苛立ちを覚えていた。

「短刀直入に言うわ、健斗は私と結婚するの、だからここから出て行ってちょだい」

かすみは思っていた通りの梨花の言葉に落ち着きを見せていた。

梨花は言葉を続けた。

「あなた、もうすぐ死ぬんでしょ」

梨花の言葉にかすみは驚きを見せた。

堪らず剣城は梨花に向かって言葉を発した。

「お嬢、言葉を謹んでください」

「何、本当のこと言って何が悪いの?」

なんでこの人は私の病気のこと知ってるの?



「なんでそのことを知ってるのか、驚いている見たいね、教えてあげる、
あなたは癌を患っている、再発したらもう終わりなんでしょ、それに子宮全摘出手術を受けていて、もう子供は生めないんでしょ、それなのに、よくも健斗の側にいられたものね、
お荷物なだけのあなたは健斗にとって迷惑なだけよ、健斗の前から姿を消して」

梨花は思いのたけをかすみにぶつけた。

そして、とどめを刺すかのように言葉を続けた。

「全て、健斗は知ってるわ」

「えっ、どうして」

「私が健斗に教えてあげたの、健斗びっくりして、戸惑ってたわ、その内あなたに、
別れを告げると思うから、その前に出て行ってあげて、健斗を思っているなら、
自ら出て行くのが愛情でしょ、あなたはもう女じゃない、健斗の側にいるなんて、
許されないことよ」

梨花は罵声を浴びせた。

かすみは愕然とした。

拓真さんは私が子供を生めないこと、そして命が短いことを知っている。

かすみは自分に子宮がないことだけは、拓真に知られたくなかった。

女ではなくなったような気がするからだ。

かすみはがっくり肩を落とした。

「お嬢、もうその辺でよろしいんじゃないでしょうか、帰りましょう」
剣城は梨花に帰るように促した。

「そうね、言いたいことは全部言ったから、気が晴れたわ、早く出て行ってね」

梨花は剣城と共にマンションを後にした。




剣城ははじめてかすみを目の当たりにして、健斗が熱を上げてる気持ちがわかった。

お嬢が太刀打ち出来ないわけだ。

全く真逆のタイプだからだ。

車の中で梨花はそのことに気づきもせず、勝ち誇った表情を見せた。

剣城は梨花を送って行ったあと、梨花に罵声を浴びせられたかすみが気になり、

健斗のマンションに戻った。

かすみは梨花に言われた言葉を噛み締めていた。

梨花さんの言う通りだな。

そんな時、インターホンが鳴った。

誰だろう。

インターホンの画面には剣城が映し出された。

えっ、剣城さん?

かすみはすぐにドアのオートロックを解錠した。

「どうされたのですか」

「お嬢が大変失礼致しました」

「わざわざそれを言うために、きて頂いたのですか」

剣城はちょっと照れ笑いをした。

その時、かすみはぐらっとめまいを感じ、倒れた。



剣城はかすみの身体を支えた。

呼吸が乱れて、緊急を要することが伝わった。

剣城は救急車を呼び、かすみを救急搬送した。

そして、春日部コーポレーション社長春日部拓真に連絡した。

「かすみさんが救急搬送されました、すぐに向かってください」

「かすみが……」

なぜ、真山組若頭剣城が、拓真は色々聞きたいことはあったが、まずはかすみが運ばれた病院へ向かった。

大館も向かった。

かすみはしばらく入院することになった。


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