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しおりを挟む貴族の集う晩餐会で、奇妙なオブジェが振る舞われた。
アイアン・メイデンを模した鉄の人形。その胸元から生々しい突起だけが露出している。赤く尖った、人間の乳首だけが。
失笑を誘う下品で滑稽な人形は、歓談の合間に片手間で弄ばれた。触れるか触れないかの距離で先端を擦る。形が変わるほど引っ張り、芯を押し潰すように捏ねる。所詮人形だ。反応がないことに客は飽き始めていたが、指先に挟んで擦りつぶした際に微かな唸りが鉄を震わせた。そうすると、だれがその音をより大きく引き出せるかとささやかな遊戯が始まり、人形の周囲に人だかりができ始めた。乳首に潤滑油が垂らされる。そうしてぬるぬると根元から扱き上げるように嬲る指。震える乳頭を爪でカリカリと掻く指。止まらぬ愛撫に鉄は悲鳴に震え、その度に下卑た嘲笑で場が沸いた。
散々に手淫で弄ばれた後、両の突起は媚毒を塗られ、そのまま放置された。
王子のために造られた人形は、隙なく彼の体を包んでいた。更にハーネスで関節を鉄肌に固定されている王子は身を捩ることはおろか、快感に悶えようとも満足に痙攣することもままならない。あまりはしたない声で晩餐会の雰囲気を壊すでないと口枷を嵌めており、なにも見えない、抵抗もできない、彼はただ呼吸のみを許された人形だった。
ここにきた当時は慎ましかった乳首も今や淫猥に肥大し、些細な愛撫にすら反応するそれを絶頂へ導くのはとてもたやすかった。肉棒はあえて戒めていないので、鉄の中に充満する精の香りは王子の嗅覚までを犯していることだろう。
さんざんと焦らされた突起を、不意に筆先に突かれる。敏感な突起をぬるぬると筆に撫でられ、充血しきった乳首が更に赤みを増す。複数の筆に上下左右から嬲られて、しかし反応が僅かに漏れる震えでしか汲み取れないからこそ、客はそれを引き出そうと躍起になる。一方でどれだけ悶絶し、気をやろうが止めるすべのない王子の人知れぬ惨めさは囲む者の興を煽った。
宴が終わった後、鉄の人形を開いた。
性の香りが立ち込める。扉の内側には白濁が散り、王子は意識が朦朧としているようだった。陰茎はだらりと萎れていたが、媚毒を塗りたくられた突起は未だ固く勃起しており、乳頭に指を当てると拘束されたからだをぶるぶると震わせた。また少し育っただろうか。最後にニップルクリップで散々遊ばれたせいかもしれない。きつく締めたそれを、ぴん、と指で弾けば鉄が震える。しばらくそうして繰り返し弄ばれ、最後に乱暴にはぎ取られた。痛みに近い刺激を与えた突起は敏感に腫れあがっており、今日はこのまま終わりにしようかとも考えていたが、せっかくいい状態にある性器を見逃すのも勿体ない。
壺から蟲を取りあげると、王子の目が見開いた。口枷に制限された呼吸がひどく乱れる。しかし自分を見据える視線に気がつくと、震える呼吸を鎮め、動揺が滲んだ瞳を隠すようにこちらを睨みつけた。
なんて健気な……王が見たら、手を叩いて喜びそうな態度だった。
突起に液を塗る。これは蟲の餌だった。表面が硬質なその蟲は、裏側には無数の足をもつ。やわらかいが芯のあるその足の感触は絶妙で、指先に歩かせるだけでぞわりと鳥肌が立ち、咄嗟に振り払いたくなる代物だった。餌を塗布した場所に蟲をおけば、蟲はその場所に張りつき、ぢゅうぢゅうと吸いついた上で無数の足を一斉に轟かせる。その実、蟲の足は舌でもあった。分泌液を吐き出しながら無数の舌で舐め回し、餌をしゃぶりつくす。性器のような敏感な箇所に蟲を貼りつけたなら、常人であれば筆舌尽くしがたい快感に半狂乱となるだろうが。これは王子のお気に入りだった。
いつも喜んで射精されますね、と声を掛けながら肩口に蟲を落とす。蟲は餌の香りを伝い、肌を伝う。動揺を見せまいと項垂れていたくせに、鎖骨を這う蟲の感触に王子の身体はあからさまに強張り、拘束具を軋ませた。そうして蟲が媚毒の残る乳首へたどり着いた瞬間、喉を潰すような唸り声を上げた。ぬちゅ、ぬちゅ、と淫猥な水音が鳴り響く。こちらからは見えないが、その裏側では腫れた突起が吸い上げられ、千の舌で舐めしゃぶられている。拘束具を引き千切らんばかりに全身の筋肉を強張らせ、狂うような性感から逃れようとしているが、すべて無駄な足掻きであった。肌は更に紅潮し、微かな痙攣から絶頂が見て取れた。
餌を味わう特性のせいか、捕食が終わるまで三時間はかかる。調教師は一歩後ろに身を引き、精の尽きた陰茎をビクビクと震わせながら快感に悶える王子でなく、鉄の人形へと視線を移した。
せっかくオーダーメイドで作らせたのだ。今度は下にも穴をあけ、陰茎と睾丸まで露出させてもいいかもしれない。
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