ハチ切れ令嬢は、笑みを浮かべながら復讐する。

愛しい人達よ

グレイの剣がアイナに向いていて、怪我をするだろうと腹をくくって目をつぶったが…


“ん？あれ？”

アイナの肩に温もりを感じた。

目を少し開けてみると、目の前に兄・バイロンとアイナの肩を抱き寄せているレイモンドがいた。

バイロンはグレイの剣を素手で、とめていて、アイナは震えながら
「おっお兄様…血が…」
バイロンは振り向かず、グレイに

「我が妹に、何をする！殺されたいのか！！
グレイ・カールソン！！！」

グレイは、ブツブツと言っている。
「どいつもこいつも…私の邪魔をして…許されると思うなよ！！」

バイロンとレイモンドは目線を合わせ、レイモンドは、そっと前に出てアイナを守るように

「あなた、土地所有地で…領民の皆様達から、高額請求をしていますね？
あと薬の売買、女性の拉致監禁、婦女暴行と様々な大罪を犯しておりますが…あなたのお友達は捕まりましたよ？
残りは、あなた…一人だけです」

バイロンは、吐き捨てるように
「ハッ？やっぱりクソ野郎か！国の金をなんだと思っているんだ？」
と言う。

アイナは、バイロンとレイモンドを見ながら
“待って！お兄様とレイモンドは、骨董品の商人じゃないの？”
と考えているとレイモンドは、そっとアイナの手を握る。
“安心しろと言ってる？あとで、教えてくれるの？”


グレイは、バイロンとレイモンドを見ながら
「お前らは…何者だ？」
すると、こう言った。


「「国の外交官！いや、じき大臣かな？」」

貴族達は、ザワザワする。
アイナも驚いた。

グレイは
「ルメールなど、下級貴族だろ！！」
バイロンが、やれやれと大袈裟に
「おいおい！兄妹だけで、生きるのは大変だぜ？
両親は外国にいるしな！まぁ、もとよりお前とアイナの婚姻式には反対だったから…俺一人で何とかしようと思って言ってないんだよ！！んで、婚姻するのにも関わらず…うちの両親に、挨拶もしないアホには驚いた！
あとな…妹は、俺を家督として立てているが、俺より妹の方がピッタリなの知ってるか？
頭が違うんだよ！」

グレイは、ずっと…ブツブツと呟いている。


レイモンドは、グレイに
「アイナは、聡明で賢いから…おバカで金持ちの大臣の息子のお前に見合いの話が出て…はぁ～ここまでアホとは…」

アイナは
“いっいつも冷静なレイモンドが、バカとアホのフル活用してる！！？？？”

レイモンドは、アイナに“大丈夫だから”と頷き、手を放す。
少しずつグレイの方へ行き


「アイナ・ルメールは、お前になど渡さない！！」


アイナは、レイモンドの後ろ姿を見つめて
“…レイモンド…いつも私の事を支えてくれて…好きになってくれて…ありがとう…
伝えるね？
これが終わったら、伝えるね？”


皆の前で、宣言する。


そこにいた人達が「おぉ～」「さすがヴェセリー侯爵！！」「ルメール嬢、モテモテだな～」「ロマンス小説みたい！」
などと言っていた。

バイロンは少し笑みを浮かべながら、グレイにどんどん近づいていく。

「連行するので、来てもらおうか…」

と言うとグレイは、また暴走をした。



“伝えるね…
約束するね？”


グレイが、アイナの目の前にやってきて剣を振りかざしたのだ。

バイロンとレイモンドが、アイナに向かって叫ぶ。

「アイナー！！！避けろ！！」
「アイナー！！！！！」