王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚

文字の大きさ
20 / 23

20

しおりを挟む
 

「ふふっ。可愛いアリーチェ。混乱しているわよね。」

メリーチェがそう言って優しく微笑んだ。

確かに私は今、混乱をしている。

「あのね、アリーチェ。貴女と私の立場を交換しましょうと言っているの。」

「え?」

「私が男爵令息になって、アリーチェは侯爵令嬢になるのよ。それなら、貴女は私と結婚すれば育ての親も、産みの親も貴女の両親になるわ。」

メリーチェの言うことは理解できる。

理解はできるけれども、心が追い付かない。

私が、侯爵令嬢になる?

そして、メリーチェが男爵令息になる?

生活ががらりと変わってしまうではないか。

メリーチェはそれでいいのだろうか。

今までの生活が一変してしまうのに。

我が家は貧乏男爵家なのだ。

そんなところにメリーチェが住むの?

「メリーチェはそれでいいの?生活環境が一変してしまうわ。」

「構わないわ。私は元々侯爵家の養子なのよ。だから、元に戻るだけだわ。」

「うちは貧乏なのよ。今までのような生活はできないわ。」

「構わないわ。それでアリーチェが手に入るのならば苦にはならないわよ。」

「あーでも、アリーチェが侯爵令嬢になるのならば、私との婚約話が持ち上がるかもしれないな。」

メリーチェとの会話に割り込んできたのは、私たちを静観していたアルフレッド様だった。

「私としてはメリーチェと結婚したかったのだが。男に戻るということであれば私との結婚は国王が許さないだろう。今までだって、期間限定で私との婚約をおこなっているだけだったしな。そうなると国内で一番私の婚約者になる可能性が高いのは残念ながらアリーチェになる。」

「え?」

アルフレッド様の言葉は正直とても意外なものだった。

きっと、この世界に転生したんだと気づいた当初だったら、この結末には素直に喜んだだろう。

だって、憧れのアルフレッド様の婚約者になれるのだから。

だけれども、今はちょっと微妙な気持ちだ。

なぜならば、アルフレッド様のお心は今もメリーチェにあることがハッキリとわかっているからだ。

アルフレッド様はメリーチェの代わりに仕方なく私を選ぶだけ。

それがとても辛いものだった。

好きな人の心が私に向けられないのはとても虚しいだけだ。

それに、私は・・・この世界で生きてきて実際に気になってしまったのは、アルフレッド様ではなくメリーチェなのだ。

そのメリーチェが侯爵家から男爵家の養子になって言いとまで言ってくれて、私と婚約したいと言うのだ。

私は虚しい結婚生活よりも互いに心を通わせた結婚生活を送りたい。

「アルフレッド様。それはどうにかならないのですか?」

「ならんな。私に相応しい婚約者がアリーチェ以外に現れなければ無理だ。」

一難去ってまた一難。

「そんなもの。アルフレッド様の婚約者になりたいという方は大勢いらしゃいますよ。それに国内がダメならば国外という手もありますし。」

どうしようかと思っていると、メリーチェが手を差し伸べてくれた。

そうか、国外という手もある。

「・・・まあな。でも、私はメリーチェがいいんだよ。本当はね。だから、メリーチェに似ているアリーチェで妥協してもいいかと思ったんだけれども・・・。」

「ダメです。アリーチェは例えアルフレッド様であってもお渡しできませんわ。」

 

 

 

 

 

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。

ぽんぽこ狸
恋愛
 レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。  その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。  ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。  しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。  それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。  彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。

婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸
恋愛
 転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。  そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。  終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。  自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。  頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。  そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。

さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」 王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。 前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。 侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。 王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。 政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。 ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。 カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。

【完結】愛は封印?厄介払いの聖女は異国に輿入れさせられる

白雨 音
恋愛
双子の姉セリーヌと妹アンジェリーヌは、共にファストーヴィ王国を護る聖女だ。 この国では、二十歳を迎えた聖女は、王の選んだ相手と見合いをするのが通例だった。 セリーヌの相手は、第三王子クレマン。 交際は順調に進み、セリーヌは神にクレマンへの愛を誓う。 だが、クレマンが選んだのはアンジェリーヌだった。 その上、二人から悪評を付けられ、セリーヌは処罰を課せられる事に… 表向きは「異国の者との政略結婚」だが、実際は厄介払い、国外追放だった。 「神への誓いは神聖なもの、神に違背すれば、聖女の力も失う___」 他の者を愛する事を禁じられ、人生に絶望するセリーヌ。 異国への道中、無愛想で堅い《氷壁の騎士団長》との出会いで、 運命を受け入れようと前向きになるも、やはり、見ず知らずの者との結婚は恐ろしく…  異世界恋愛☆ 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

【完結】偽物の王女だけど私が本物です〜生贄の聖女はよみがえる〜

白崎りか
恋愛
私の婚約者は、妹に夢中だ。 二人は、恋人同士だった賢者と聖女の生まれ変わりだと言われている。 「俺たちは真実の愛で結ばれている。おまえのような偽物の王女とは結婚しない! 婚約を破棄する!」 お好きにどうぞ。 だって私は、偽物の王女だけど、本物だから。 賢者の婚約者だった聖女は、この私なのだから。

悪役令嬢は伝説だったようです

バイオベース
恋愛
「彼女こそが聖女様の生まれ変わり」 王太子ヴァレールはそう高らかに宣言し、侯爵令嬢ティアーヌに婚約破棄を言い渡した。 聖女の生まれ変わりという、伝説の治癒魔術を使う平民の少女を抱きながら。 しかしそれを見るティアーヌの目は冷ややかだった。 (それ、私なんですけど……) 200年前に国を救い、伝説となった『聖女さま』。 ティアーヌこそがその転生者だったのだが。

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

処理中です...