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節電!節電!!節電!!!
③
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「サーバーは熱くなりすぎるのが問題なんですよね?では、節電のため冬場のサーバールームの暖房は切ってしまってもよろしいですね?」
「ええっ!?」
「えっ……。」
夏場のエアコンの設定温度について数井さんはあっさりと折れて見せたが、今度はメールにも書いていなかったことを数井さんは言い出した。サーバーは熱に弱いと聞いたからだとは思うが、随分とまた極端な提案をしてくるものだ。
確かにサーバールームには常時人がいるわけではない。
安藤さんと私は驚きを隠せずに数井さんを見る。
「なにか不満がありますか?サーバーは暑さに弱いのでしょう?なら冬場は暖房をしなくてもよろしいのでは?サーバールームでの作業が発生したときだけ、暖房をつければよろしいのではなくて?」
私たちがなんで驚いているのかわからないようで数井さんは小首を傾げた。
そうか。パソコンや機械類に詳しくないとこういう思考に陥ってしまうのかと天を仰いだ。
「サーバーには適正温度というものがあります。寒すぎてもまたサーバーが故障に繋がってしまいます。機械は暑さにも寒さにも弱いんです。サーバールームに沢山のサーバーが設置してあるようなデータセンターですと冬場は暖房しなくともサーバーから発せられる熱で問題はないかもしれませんが、うちのような中小企業の数台しかないサーバーだと、暖房しないと寒すぎてサーバーが正常に稼働しない恐れがあります。」
安藤さんは数井さんに説明をする。
わかってくれるといいんだけど……。
「そう。サーバーは随分と繊細なのね。」
「そうなんです。ですので、冬場も暖房を入れていただければ……。」
「わかりました。では、他の部屋と同じく冬場は20℃の設定でよろしいかしら?」
「はい。構いません。」
冬場の暖房についても意外なほどあっさりと決まった。
安藤さんが穏やかな人で周囲に敵を作らないような性格だから、数井さんの印象もいいのかもしれない。
これが安藤さんじゃなく私が数井さんに説明していたら、「それ、本当なのかしら?」とか言われそうな気がした。
「今日はお時間を作ってくださりありがとうございました。」
「こちらこそ、サーバーについて教えてくださりありがとうございます。」
安藤さんが打ち合わせの終わりに数井さんに向かって礼を言うと、数井さんも素直に礼を言った。
ちょっと数井さんを見直したかも。
私たちは並んで会議室を出る。
と、そこに会議が終わったのを見計らったように磯野さんがやってきた。
「数井さんっ!夏場の冷房28℃って鬼でしょ!!冷房26℃にしてくださいよ!!」
「ダメですっ。」
「ええっ!!営業で外回りしてくると暑いんですよ!お願いしますって!」
「ダメですっ!」
数井さんは磯野さんの要望はきっぱりと一刀両断した。
しかし、磯野さんはなおも数井さんに食って掛かる。
「情報システム部の言い分は飲んだのに?情報システム部だけずるいっすよ!!」
「サーバーが故障したら会社の損失に繋がると判断いたしました。ずるではありません。正当な理由があったからです。」
「オレだって暑くて営業成績落ちちゃうんだからなっ!」
「……他の方も夏場の営業成績が著しく落ちるようなら考えます。では、仕事がありますので私はこれで失礼します。」
「数井さぁん。冷房!!」
颯爽と去っていく数井さんの姿がなんだかとても頼もしく見えたのだった。
「ええっ!?」
「えっ……。」
夏場のエアコンの設定温度について数井さんはあっさりと折れて見せたが、今度はメールにも書いていなかったことを数井さんは言い出した。サーバーは熱に弱いと聞いたからだとは思うが、随分とまた極端な提案をしてくるものだ。
確かにサーバールームには常時人がいるわけではない。
安藤さんと私は驚きを隠せずに数井さんを見る。
「なにか不満がありますか?サーバーは暑さに弱いのでしょう?なら冬場は暖房をしなくてもよろしいのでは?サーバールームでの作業が発生したときだけ、暖房をつければよろしいのではなくて?」
私たちがなんで驚いているのかわからないようで数井さんは小首を傾げた。
そうか。パソコンや機械類に詳しくないとこういう思考に陥ってしまうのかと天を仰いだ。
「サーバーには適正温度というものがあります。寒すぎてもまたサーバーが故障に繋がってしまいます。機械は暑さにも寒さにも弱いんです。サーバールームに沢山のサーバーが設置してあるようなデータセンターですと冬場は暖房しなくともサーバーから発せられる熱で問題はないかもしれませんが、うちのような中小企業の数台しかないサーバーだと、暖房しないと寒すぎてサーバーが正常に稼働しない恐れがあります。」
安藤さんは数井さんに説明をする。
わかってくれるといいんだけど……。
「そう。サーバーは随分と繊細なのね。」
「そうなんです。ですので、冬場も暖房を入れていただければ……。」
「わかりました。では、他の部屋と同じく冬場は20℃の設定でよろしいかしら?」
「はい。構いません。」
冬場の暖房についても意外なほどあっさりと決まった。
安藤さんが穏やかな人で周囲に敵を作らないような性格だから、数井さんの印象もいいのかもしれない。
これが安藤さんじゃなく私が数井さんに説明していたら、「それ、本当なのかしら?」とか言われそうな気がした。
「今日はお時間を作ってくださりありがとうございました。」
「こちらこそ、サーバーについて教えてくださりありがとうございます。」
安藤さんが打ち合わせの終わりに数井さんに向かって礼を言うと、数井さんも素直に礼を言った。
ちょっと数井さんを見直したかも。
私たちは並んで会議室を出る。
と、そこに会議が終わったのを見計らったように磯野さんがやってきた。
「数井さんっ!夏場の冷房28℃って鬼でしょ!!冷房26℃にしてくださいよ!!」
「ダメですっ。」
「ええっ!!営業で外回りしてくると暑いんですよ!お願いしますって!」
「ダメですっ!」
数井さんは磯野さんの要望はきっぱりと一刀両断した。
しかし、磯野さんはなおも数井さんに食って掛かる。
「情報システム部の言い分は飲んだのに?情報システム部だけずるいっすよ!!」
「サーバーが故障したら会社の損失に繋がると判断いたしました。ずるではありません。正当な理由があったからです。」
「オレだって暑くて営業成績落ちちゃうんだからなっ!」
「……他の方も夏場の営業成績が著しく落ちるようなら考えます。では、仕事がありますので私はこれで失礼します。」
「数井さぁん。冷房!!」
颯爽と去っていく数井さんの姿がなんだかとても頼もしく見えたのだった。
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