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二章
2ー40
「ごちそうさまでした。」
「美味しかったです。」
「「「にゃあ~。」」」
『トマト・・・マユのトマト。』
「うむ。また来るとええ。妻も楽しみにしておる。」
村長さんの家で、ユキさんの手料理をご馳走になった私たちは、一旦家に帰ってトマトの検証をしてみることにした。
村長さんの家の前では、ドアのところで村長さんが見送ってくれている。
「・・・っマユさんっ!!」
ん?
ユキさんの姿が見えないと思ったら、家の奥から何かをかかえてパタパタと走ってくる姿が見えた。
「・・・これっ!」
「えっ?」
息も絶え絶えにユキさんから渡されたのは、成猫ほどの大きさの壷だた。
思わず受け取るとずしりとした重みが両手にかかる。
見た目のわりに結構重い。いったい何が入っているんだろう。
「あのっ!味噌汁気に入ってくれたみたいだから、お裾分け。この中にはお味噌が入っているの。」
なんだろうと思っているとユキさんが説明してくれた。
どうやらこの壷の中にはお味噌が入っているらしい。
味噌汁がとても懐かしかったから嬉しい。
「ありがとうございます。お味噌、とても懐かしくて。だから嬉しいです。」
「そうよね。やっぱり馴染みのある味は懐かしいと感じるわよね。私もね、昔、村長さんの家で味噌汁を食べて懐かしくて泣いてしまったことがあるの。だからね、少しだけだけどお裾分け。」
ユキさんの実家は遠いのだろうか。
味噌汁を飲んで泣くほどに。
お米は二つ隣の村で作られていると聞いたから味噌も近くの村で作られているのかと思っていた。そうではないのだろうか。
「うむうむ。あの時のユキは可愛かったのぉ。今も可愛いがの。マコトと二人で味噌汁を飲んでわんわん泣いていたのぉ。」
「わ、忘れてくださいっ!50年も前のことなんてっ!」
優しい目でユキさんを見ながら昔を懐かしむ村長さんに、ユキさんは恥ずかしいのか両手で顔を覆って俯いてしまっている。
なんとも仲睦まじい夫婦なことか。
婚約破棄されたばかりの私にとっては少々辛く感じる。
でも、いつかは村長さんとユキさんみたいな夫婦になれたらいいなとは思うが、今のところ相手がいない。
「お味噌、ありがとうございます。あの、お味噌も朝市で購入できるんですか?」
村長さん夫妻の暖かいやり取りを横目に思い切って尋ねてみる。
お味噌もお米と同じで朝市で仕入れたのかと。
だが、村長さんもユキさんも首を横に振った。
「これはのぉ、ユキが作ったんじゃ。」
「私が、作ったの・・・。」
「え?」
どうやらこのお味噌はユキさんの手作りらしい。
というか、味噌って手作りできるの!?
「よかったら、今度お味噌の作り方教えてくださいっ!」
手作りできると聞いて思わずユキさんの白い両手を取ってお願いをしてしまった。
ユキさんは目をパチクリさせながら、ゆっくりと頷いた。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「私でよかったら、是非。いつも家にいるから、いつでも来てください。」
「ありがとうございますっ!」
「きゃっ!」
お味噌をもらえたことと、お味噌の作り方を教えてくれるという約束を取り付けられたことで嬉しくなった私は、思わずユキさんに抱きついてしまった。
ユキさんは驚いてはいたが、嫌がるそぶりは見せなかったのでよしとする。
村長さんは暖かく見守っていてくれていたが、マリアは何やら考えこんでいるようだった。
プーちゃんやマーニャたちに至ってはどうも早く家に帰りたいようで、しきりにこちらを見て「にゃあ。」と鳴いていた。
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