見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

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「し、師匠・・・。お、おはようございます。」


玄関のドアから入ってきたのは、シラネ様ではなく師匠でした。

まさか師匠がこんな朝早くからうちに来るとは思わなかった。なにか用があるのだろうか。


「おはよう。朝早くから悪いな。なに、リューニャが昨日美女二人と一緒にいたという知らせが入ったんだよ。リューニャは純粋だから騙されていないか確認しにきた。」


師匠はそう言ってオレをジッと見てきた。

美女二人ってシラネ様とトリスのことだろうか。確かにオレは昨日二人と一緒に帰ってきた。どうやらそれを誰かに見られていたらしい。

まあ、コソコソとするつもりもなく堂々と帰ってきたから当たり前と言ったら当たり前だが。隠す必要だって別にないし。

ま、まあ。唯一隠す必要があるとしたらトリスが実は色つきのコカトリスだったということくらいだ。


「そうでしたか。それはご心配をおかけいたしました。でも、オレ。騙されてはいないから安心してください。」


「そうか。ならよかった。それよりリューニャ。もう朝ご飯は食べたのか?」


おおっと。師匠ってば、急に話題を変えてきた。もっと突っ込まれるかと思ったらどうやらそうではないらしい。

もしかして・・・。


「昨日、コカトリスの卵が手に入ったんだろう?味見をしてあげるから一緒に朝食を食べようではないか。」


師匠はそう言ってニカッと笑った。師匠のやけに白い歯がキラリと光ったような気がした。


「そっちが目的ですね。師匠・・・。」


「ん?悪い女に騙されていないか確認する意味と半々だな。でも、リューニャは女の色香に惑わされていないようだからな。それならば、さっさと美味しいご飯を食べた方がいいだろう。」


「美味しいご飯って。師匠の作った料理の方が美味しいでしょ。」


「それでも、コカトリスの卵やバッファモーのミルクを使った料理には勝てぬよ。そうだろう?」


「まあ、そうですね・・・。」


確かに師匠が作ったとしても、コカトリスの卵やバッファモーのミルクを使ったオレの料理の味には敵わない。

それだけ普通の卵よりも、コカトリスの卵やバッファモーのミルクの方が素材の味自体が良いということだ。

オレは、もう一人前の朝食を作らなければならないことに気づいて「はあ。」とため息を一つついた。


「ん?なんだ、もう朝食が用意されているではないか。」


テーブルにはオレとトリスとシラネ様の分の朝食がセッティングされていた。

って、あれ?一人分ないぞ・・・。

そういえば、トリスの姿も先ほどから見当たらない。どうしたのだろうか。


「できたてだな。オレが来ることがわかっていたのか?」


師匠は嬉しそうにそう言うとさっさと椅子に座った。師匠の分じゃないとは言えそうにない雰囲気だ。


まあ、オレの分は別にコカトリスの卵を使った料理じゃなくてもいいから。あまりもので済ませればいいか。

シラネ様が帰ってきて自分の朝食だけなかったら機嫌が悪くなりそうだし。


それにしても、トリスはどこに行ったのだろうか。

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