見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

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「リューニャは、規格外だな・・・。」


「奇遇ね。私もそう思うわ・・・。」


「妾もじゃ。まさか、リューニャが天使の楽園に行ったことがあるとはのぉ。」


師匠も、シラネ様も、トリスも言うことがひどい。オレのどこが規格外だというのか。オレはただの見習い料理人なのに。

しかも、何年経っても王宮料理人になれないような見習い料理人だ。オレが規格外なわけがない。

オレが規格外だったら、もうすでにオレは王宮料理人になっていることだろう。


「って、トリスどこに行ってたんだ?」


「ふむ。客人が来たようじゃから隠れておったのじゃ。さすがに裸で客人の前に出たらまずいのであろう?リューニャのことを考えて隠れておったのじゃが・・・。でてきてもよかったであろうか?」


いつの間にかトリスが会話に入ってきた。どこに行っていたのかと訊いてみると隠れていたという。

確かに。シラネ様の服じゃ嫌だと裸でいたからなぁ。結構トリスってば気が利くではないか。

それにしてもシラネ様も素早いな。

オレに気づかれることなく、トリスに服を渡しただなんて・・・。

ん?

でも、シラネ様はここに来たときにはまだ両手に袋を持っていたよな。

あ、あれ?

もしかして、オレがシラネ様と話している間にこっそりトリスがここに来て着替えを持って行ってたのか。

恐るべし。トリス。

全然気配を感じなかったよ。


「・・・リューニャ?裸とはこれいかに?」


「あ・・・。」


トリスとオレの会話を聞いていたらしい師匠がこめかみをヒクヒクと動かしながらオレに訊ねてきた。

顔は笑っているけれども低い声と全然笑っていない目が、師匠の怒りの大きさを伝えているようだ。


「いや。これにはふかぁ~い訳がありまして・・・。」


オレは師匠にトリスとシラネ様に会った経緯を事細かく話すことになってしまった。

そして、その全てを聞いた師匠はその場で頭を抱え込んでしまった。


「・・・まさか、コカトリスが人化するだなんて・・・。まさか、聖女様に似ていると思っていたら本物の聖女様だったなんて・・・。」


師匠は肩を落としたまま、オレの家を出て行った。きっと、お店の開店準備で忙しいのだろう。

お客様を迎えるまでにはいろいろと準備が必要だから。でも、師匠とっても疲れているように見えたな。

オレの家を出るときは、心なしか身体が左右に揺れていたような気がする。

もしかして、仕事が忙しいのかな。

確かに、元王宮料理人というだけあって、師匠の料理はどれもこれも一級品の料理ばかりだ。

見た目も味も食材も一級品だ。

それだけに、師匠の料理を食べたいと足を運んでくるお客の数は多い。時々は休んでいるようだが、それでもやはり体力的にキツいのかもしれない。

オレも師匠の弟子として、空いている時間は師匠の手伝いをした方がよさそうだ。

まあ、今日はシラネ様との先約があるから、シラネ様の用事が終わったら師匠のところに行ってみようかな。


★★★



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