見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

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「残念だが、冒険者登録されていない者には闘技場を使用する許可は与えられない。また冒険者と一般人の争いは禁止されている。ユージンよ。そんなことも忘れたのか?」

ユージンが言った受付からはそんな声が聞こえてきた。
どうやら闘技場は冒険者登録していないと使えないらしい。知らなかった。
というか、ギルドに闘技場があることも知らなかったんだけどね。

「あちゃー。そうだったわ。すっかり忘れてたわ。せっかくリューニャのすごさを知らしめるチャンスだったのになぁ。・・・ねえ、リューニャ。冒険者登録しない?」

シラネ様も闘技場の使用者に制限があることを失念してたのか。そうだよな。覚えてたらあんなこと言わないよな。
それにしても、オレに冒険者になれってそれは話が違うではないか。

「お断りします。オレは王宮料理人になりたいんです。」

「冒険者の方が向いていると思うんだけどな。」

オレは速攻で冒険者になることに対して却下をするが、シラネ様は残念そうにポツリとそう呟いた。
何度も言っているが、オレは冒険者には向いてないと思うんだけど・・・。どうして、そんなにシラネ様はオレを冒険者にしたいのだろうか。

「ははっ。残念だな。シラネ。おまえの選んだ男はとんだ意気地なしではないか。おまえにお似合いだな。まあ、冒険者じゃない男と戦うことは禁止されているんだ。オレもまだギルドに睨まれたくはないんでね。残念だが、勝負はなしだ。まあ、勝負したところでそんな腑抜けにオレが負けるとは思わないがな。」

ユージンはそう言ってオレのことを嘲笑った。
その笑い方になんだかちょっとムッとしてしまった。

「料理の腕じゃ負けません。料理で勝負しませんか?」

「はあ!?料理だとっ!!オレは料理人じゃないんでね。そんな勝負なんか受けるわけないだろう!!馬鹿にしているのか?それとも、おまえは冒険者が一流料理人並の腕でも持っていると思っているのか?馬鹿だろ?」

「そうですか。よくわかっていますね。オレは見習い料理人であって冒険者じゃありません。あなたと勝負してあなたが冒険者じゃないオレに負けたら笑いものですよね。だから、勝負しない方がいいんです。引き分けってことでいかがでしょうか?それに、オレも冒険者登録しないで済みますし。」

「引き分けだと!?この世界は冒険者が一番偉いんだっ!料理人と冒険者を一緒にするなっ!!」

「誰が決めたんですか?そんなこと。」

激昂するユージンに対して、オレは冷静に訊ねる。いつからこの国は、この世界は冒険者が一番偉くなったというのだろうか。

「はんっ!魔物がこの国を取り囲んでいるんだぞ!その魔物を倒して街を守っている冒険者が一番偉いに決まっているだろうっ!」

「本当にそうでしょうか?」

「ふんっ。弱くて守られることしかできない料理人見習いが何を言っている。」

「・・・・・・オレはあなたに守られるほど弱くはないと思います。」

ユージンのことは相手にせずに穏便に済まそうかと思っていたけれど、思わずそう発言してしまっていた。

「なんだとっ!!」

ユージンはオレの言葉に激昂したようだ。ドンッと床に足を打ち鳴らした。

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