見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

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「……婿……どの?」

「く、クイーンコカトリスさまっ!リューニャの嫁は妾なのじゃ!!勝手にぴぃちゃん様の婿にしないでいただきたい。」

 シラネ様が呆然としながら言葉を吐き出す。やっぱりシラネ様もあまりにも突拍子もないクイーンコカトリスの言葉に頭がついていけていないようだ。
 トリスはトリスでなんだかクイーンコカトリスにくってかかっている。クリスはクイーンコカトリス……もといカトリリスが怖くないのだろうか。
 っていうか、ぴぃちゃん?え?オレ、ぴぃちゃんの婿に選ばれたの?え?
 トリスの言葉でオレがぴぃちゃんの婿に選ばれた可能性に気づいて、思わずぴぃちゃんを見た。すると、ぴぃちゃんは嬉しそうにオレに向かって「ぴぃっ!ぴぃっ!!」と鳴いた。

「……え?オレ、ぴぃちゃんの婿、なの?え?でも、ぴぃちゃん孵ったばっかりだし、オレまだまだ料理人見習いで、ぴぃちゃんを今後一生養っていくだけの甲斐性ないし、ぴぃちゃんまだヒナだし、成人してないし。むしろぴぃちゃんとオレって種族が違うし。え?無理じゃない?」

「妾の娘であるぞ。成長すれば人型にもなれるのじゃ。なにも心配することはないのじゃ。なぁに後、1ヶ月もすれば人型をとることができるじゃろて。」

 混乱しているオレに、カトリリスは面白そうに笑いながらぴぃちゃんが人型をとれるようになると教えてくれた。
 なんだ。それなら問題は……。

「いやいやいやいや!!問題大ありですよ!!オレは人間なんです!しかも見習い料理人という中途半端な職業で、蓄えもないし。そんなオレが嫁をもらうだなんて、そんな恐れ多いこと……。」

 そう。いくらぴぃちゃんが人型をとれるからと言ってまったく問題がないというわけではない。オレは見習い料理人という未熟な職業にしかついていない。この状態で誰かをお嫁さんにもらったところで養っていくことができない。

「……なんじゃ?そなた、ここにいる誰よりも強いのじゃぞ?冒険者になれば食うに困ることなどないであろう?それどころか豪遊できると思うのじゃが?」

 クイーンコカトリスが不思議そうに首を傾げる。

「オレは見習い料理人なんです!いつか王宮料理人になることを目指しているんです!冒険者にはなりませんよ。冒険者には……。」

 クイーンコカトリスにまでオレの職業は冒険者が適していると言い出す始末だ。まったく、オレは王宮料理人になりたいというのに。

「……まあ、よい。妾の娘はそなたを気に入っておるようじゃし、しばらく側に侍らせておくがよい。あまりにもそなたがふがいないようであれば、すぐに娘を取り戻しにくるから覚悟しておくのじゃぞ。」

 カトリリスはそう言うと、ぴぃちゃんにそっと近寄った。

「可愛い可愛い妾の娘よ。リューニャの元ですくすくと育つのじゃぞ。」

「ぴぃっ!!」

 カトリリスは嘴でぴぃちゃんの頭を撫でるように触る。
 ぴぃちゃんはそれをくすぐったそうにしながらも、嬉しそうに受け入れていた。

 っていうか、カトリリスさん。可愛い娘だというのならば、ご自分が育ててくださいと言いたいのはオレだけでしょうか。

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