追放された聖女は毎夜金貨を数える~神の加護は本物です~

葉柚

文字の大きさ
40 / 44

38




 ツェペシュ宰相は屋敷を用意すると言った数日後に立派な屋敷を街の中心部に用意してくれた。
 もともと、ツェペシュ宰相が街に滞在するときに使用していた屋敷らしい。
 手入れの行き届いた庭がとても美しい。
 もちろん、内装もしかっかりとしており調度品も一流のものが揃っている。
 正直壊してしまったらどれだけの金額がかかるのか恐ろしい。
 壊さないようにすれば良いだけだが、あとであまりにも高価な品は引き取ってもらうようにツェペシュ宰相にお願いしようと心に決めた。
 
「ツェペシュ宰相が家を用意してくれたわ。良かったらみんなで一緒に住みましょう。」

 私は孤児のみんなを集めて声をかけた。
 孤児たちはそれぞれ自分でみつけた仕事をしている。まだ何人かは私の手伝いをと申し出てくれてはいるが、ほとんどは街でそれぞれ仕事……お手伝いをしている。
 初めて会ったときよりも孤児たちの目は輝いているように見える。
 
「え?もうみんなで一緒に住んでるよ?」

「うん。」

「空き家に勝手に住んでるだけだけどね。」

「そうそう。水は止められちゃってるけど、公園の水でなんとかなるし。」

「夜は暗くなったら寝ちゃうから灯がなくたって大丈夫だし。」

「今はあたたかいから布団がなくても大丈夫だわ。」

「寒いときは皆でくっついて寝てれば暖かいしね。」

「ご飯だって、今はお手伝い先でもらえるから暖かいご飯食べれるし。」

「そうそう。私たち不自由はしてないよ。」

 子供たちの言葉に私は目頭を押さえてその場に蹲った。
 まさか、そんなに大変な生活をしているとは思わなかったのだ。
 いや、住むところがないのだから普通の生活ではないと思っていたけれど。
 しかも、それを苦にも思っていないところが痛々しくて仕方がない。
 もっと子供らしく温かい生活を送らせてあげたいと心の底から思う。
 
「……あなたたちは私のこと少しは好きでいてくれるかしら?私はあなたたちのことが大好きよ。私は大好きなあなたたちと寝食を共にしたいと思っているの。もしよければ、寂しがりやな私を助けると思って一緒に暮らしてくれないかしら?」

 子供たちにあなたたちが暮らしている環境は過酷なのだと言葉で伝えることが憚られた。それに、精一杯生きてきた子供たちのために家を用意したなんて言えなかった。
 言ってしまったら、それは子供たちの生活を全否定したことになってしまう。
 
「「「「「サラスお姉ちゃん大好きだよ。」」」」」

「そんなに言うなら一緒に暮らそう!」

「うんっ!みんなで一緒に暮らせるならどこでもいいし。サラスお姉ちゃんが一緒ならもっともっと嬉しいし。」

 子供たちは口々に賛成の言葉を告げると私に飛びついてくる。
 まるで私の寂しさをうめてくれようとしているみたいで、また涙が零れてきた。
 辛い思いを沢山しただろうに、明るい子供たちになぜか涙が溢れてくる。
 
「サラスお姉ちゃん泣いてるー。」

「ほんとだー。もしかして、本当はわたしたちと一緒に暮らすのが嫌だったの?」

「違う。違うわ。みんなが優しいから感動して涙がでてしまったのよ。一緒に暮らしてくれるなんてとっても嬉しくて。」

「サラスお姉ちゃんってば泣き虫なんだからー。」

「あはは。そうだよね。泣き虫だよね。でも、いいのよ。泣き虫だって。さあ、そうと決まったら皆でお引越しをいたしましょう。」

「「「「「はーい。」」」」」

 子供たちはみんな元気に返事をした。
 それから私たちは子供たちが住んでいるという空き家に向かった。
 空き家は長年手入れがされていないことがうかがい知れるほど、外から見てもボロっとした雰囲気をまとっていた。
 窓のガラスが一枚なくなっていたり、欠けていたり、家の周りにはツタが蔓延っていてドアが開かなくなっている。子供たちはガラスが外れた窓から出入りをしていたらしい。
 木で作られた壁も隙間が空いており、風がスースーと吹き込んでくるし、屋根にもどこか穴が開いているのか、雨が降ると雨漏りがするらしい。
 私は窓から入れそうにないので、ドア付近を覆っているツタを借りてきた鎌で刈り取ってから中に入ったが、長年使用されていなかったドアはさび付いており、ドアを開けるのにも苦労をした。
 
「さあ、みんなの荷物をまとめましょう。」

 そう言ってはみるが、子供たちは孤児である。
 それぞれの荷物なんて子供たちの両手で抱えられるほどしかなかった。
 しかも、どれも年季が入っているのが見て取れる。
 私はまた泣きそうになった。でも、ここで泣いてしまうわけにはいかないので目に力を込めてグッと耐える。
 
「準備が出来たら新しいお家にいきましょうね。」






☆☆☆☆☆




「すっげーーーーっ。」

「こんなとこに住めるのっ!?」

「まるでお城だわぁ。」

「ほんと?ほんとにここに住んでいいの??」

「わぁ~~~~。」

 子供たちはツェペシュ宰相が用意してくれた屋敷を見てそれぞれ歓喜の声を上げた。



感想 0

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。 その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。 ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。 彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。 その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。 流石に、エルーナもその態度は頭にきた。 今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。 ※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」