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23 Side:信者B
Side:信者B
「売れねぇ……。」
最近、商品が全然売れない。
以前は飛ぶように売れていた商品が全く売れなくなってしまったのだ。
オレは高級志向の家具を売っているが、以前はあちらこちらからオーダーメイドでの家具の作成依頼が来ていたが、最近はオーダーメイドの家具作成依頼なんてお貴族様以外からは来なくなってしまった。
これも聖女様が代替わりしてからだ。
誰かが言っていたが、聖女様が代替わりしてから売り上げが減っているのは確かなことだ。どの店も軒並み不思議なほど売り上げが減ってきている。
オレが商売している高級志向の家具は主にお貴族様や、裕福な中流階級の人が買っていく。時々奮発して庶民が買っていくこともあるが、それは極まれだ。
お貴族様からの注文はそれほど減っていないが、中流階級の者からの注文は完全に無くなったと言っていいだろう。もちろん、庶民が店に足を踏み入れることはない。
「いったい全体何がどうなっているんだ……。この国は税金がクソ高ぇんだ。このままじゃあ、税金を支払うだけで生活すら難しくなっちまうじゃねぇか……。」
アイスビレッジ王国は税金が他の国と比べると20%ほど高かった。それでも、国民が豊かに暮らせていたのは、税金を払っても余りある収入があったからだ。
不思議なほどアイスビレッジ王国で商売をする者たちは儲かった。特に大聖堂にお布施を大量にしている者ほど儲けは多いと訊く。
それが、最近はどうしたことかどの店も売り上げが減り、税金をどう払おうか悩んでいるという。
まあ、オレなんかはお貴族様が相手だから、それほど売り上げは減ってはいないのだが、それでも確実に売り上げは減ってきており、今までのように贅沢な暮らしは難しくなった。
これが庶民を主に相手取っている商店なんかは日々の生活にも苦しくなってきているという話を聞いている。それでも、今までの売り上げで得た財産でなんとか凌いでいるということは聞いているが……。
そういえば、アイスビレッジ王国の菓子店で一番売り上げを上げていたホワイトブレスが店を畳んで、隣国に移住したという話を聞いた。
あのホワイトブレスが、だ。
王家ご用達の菓子店でもあったはずだ。
それなのに、店をさっさと畳んで隣国に移住したとか。
それほどまでに経営状況が悪かったのだろうか。
まあ、あの店は王家ご用達であったと言っても王家に卸すような高級菓子は少しで、あとは庶民向けの格安のお菓子ばかりを売っていたから、庶民がお財布の紐をぎゅっと閉めたことにより売り上げが低迷していたのだろう。
それなりに賑わっていたのに……と残念に思う。
だが、それも明日は我が身に降りかかる可能性がある。
このまま誰も彼もの商売の売り上げが低迷していけば、お貴族様だって財政状況が辛くなっていくことだろう。今はまだ庶民と、中流階級の者たちが影響をくらっているが、お貴族様だってこのままというわけにはいかない。
皆が露頭に迷う前に国が税金を下げるか、なんらかの対策をしてくれればいいのだが……無理だろうな、とオレは頭を抱えた。
この国には聖女がいるからだ。
聖女がいるからこの国は栄えた。
それは誰もが知っている事実だ。
国は聖女の加護だよりで今まで来たから、このような事態は経験したことがないはずだ。つまり、すぐに国が対策してくれるとは限らない。
オレたちの商売だって聖女の加護のおかげで他の国よりも有利になっていると聞いたことがある。まあ、所詮は眉唾物だと思っていたが、聖女が代替わりしてからこうも売り上げが顕著に低迷しているところを見ると、聖女の加護は確かにあったのではないかと思う。
そうして、今の聖女は明らかにおかしい。
前聖女の代替わりはかなり急だった。まだ20歳にもならない聖女がいきなり代替わりをしたのだ。
なんらかの陰謀があったのではないかと、王国中の誰もが口に出していた。もちろん、大聖堂の目があるので声を大にしては言えないが、口々に噂している。
「……オレも早々にこの国に見切りをつけるべきか。」
隣国での商売の宛はないが、いくつか伝手はある。
隣国ですぐに店を開くことはできないだろうが、この国で手をこまねいているよりは、隣国に移住した方が良いような気がしてきた。
商売人はとても鼻が効くのだ。
オレの脳がこの国はもう危険だと訴えている。
今日、明日にでもこの国を出ていくか……もしくは大聖堂に行き代替わりした聖女を戻してほしいとお願いしに行くか。
選択肢は二つに一つに思えた。
だが、後者は一人で訴えたとしても、大聖堂側は無視をするだろう。つまり、後者をおこなうためには賛同者を増やし、時期を見計らう必要がある。
簡単なのは前者だ。
だが、聖女様の加護で商売がうまくいっていたのに、聖女様のいない隣国で商売がうまく行くかはわからない。
どちらにしろリスクは多いのだ。
それならば、今までお世話になっていた聖女様を追い出したであろう大聖堂に物申しに行くか。
失敗すれば、オレはこの国にいられなくなるだろうが……。
オレはまず商売仲間に内密に話を切り出してみることにした。
こうして水面下で反大聖堂派の動きが徐々に強まっていくのだった。
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