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王妃様に呼ばれたのは私なのに妹までついてきました
しおりを挟む翌日、私は王妃様からの呼び出しにより、急遽王宮に行くことになった。
私が王宮に行くということを嗅ぎつけたアルフォネアが、何故だか一緒に王宮に行くと言って聞かなかった。昨日お父様に窘められたばかりだと言うのに。
王宮に着くと王妃様付きの騎士に王室の庭に案内された。
「王妃様が間もなくいらっしゃいます。ステファニー様とお付きの方はこちらで座ってお待ちください。」
庭に用意されていたテーブルに案内された。騎士は椅子を引くと私に座るように促した。
「ええ。ありがとうございます。」
私は椅子にお礼を言ってから椅子に座ろうとする。
「ありがとうございますわ。」
だが、私より早くアルフォネアが騎士が引いた椅子に座ってしまった。
私はギョッとしてアルフォネアを見る。
王妃様に呼ばれたのは私なのに。
騎士もびっくりしたように、アルフォネアと私を交互に見た。
「私の妹のアルフォネアですの。」
「ああ。そうでしたか。これは大変失礼いたしました。お二人でいらっしゃるということでしたので、てっきり侍女がいらっしゃるのかと思っておりました。今、椅子をもう一脚用意いたします。庭を見ながらお待ちください。」
「いえ。こちらこそ、事前にお伝えせずに大変失礼をいたしました。お手数をおかけいたしますわ。」
騎士は一度私に会釈してその場を後にした。どこからか椅子を調達してくるのだろう。
アルフォネアは椅子に座りながら辺りを珍しそうに見回している。
私はその間庭を見ることにした。
「綺麗ね……。」
庭には王妃様が好きなのだろうか淡いピンク色の薔薇、淡い紫色の薔薇、白い薔薇が咲き誇っていた。
「そうだろう。母上は淡い色合いの薔薇が好きなんだ。」
「そうなんですね。とても綺麗に咲き誇っておりますわ。」
「君が気に入ったのなら、母上の許可を得てくるからいくつか持って帰るといい。」
「いえ。そんなことは出来ませんわ。切ってしまったら薔薇が可哀想ですわ。このまま咲かせておいてくださいませ。」
「ここにある薔薇は見てもらうために咲き誇っているのだ。君みたいな花を愛でる心がある人の元に行くのは本望だろう。」
「まあ。ありがとうございます。……え?」
綺麗に咲き誇っている薔薇を見ていると誰かが話かけてきた。
あまりにも自然に話しかけられたものだから、私は相手の顔も見ずにそのまま会話を続けていた。
そしてしばらく会話をした後に、誰かが側にいるということに気が付いた。
「る、ルーンファクト様。」
気が付けば横にルーンファクト様がいた。澄み切った青色の瞳が私を見て柔らかく微笑む。
「驚かせてしまったかな。ステファニー嬢。ここで母上を待っていると聞いたので来てみた。」
「いいえ。お会いできて光栄ですわ。ルーンファクト様。」
「私もだよ。なかなか君に会いにいけなくてすまない。」
「いいえ。ルーンファクト様がお忙しいのは存じております。こうして会いに来てくださっただけでも嬉しいのです。」
ルーンファクト様は時期王として王様の執務を手伝っている。一部の執務については王様から全権を移譲されたとも聞いている。
「……昨日、私が君の屋敷に行ったことは知っているのかい?」
ルーンファクト様は少しバツが悪そうに私に尋ねられた。
「いいえ、昨日はルーンファクト様はいらっしゃっておりませんわ。従者の方に私へのプレゼントを持って行くようにお命じになったのでしょう?もっともその従者の方は私と妹を間違えたようですわ。」
「ああ。そうだね。直接伺いたかったのだが、仕事がいそがしくてね。……あいつは、君と妹を間違えたのか。仕方のないやつだ。あいつには会ったのか?」
「ええ。妹といるところを見かけましたわ。直接会話もさせていただきました。」
「……はぁ。それにしても、君はあいつと私の違いがわかるのかい?」
「ええ。ルーンファクト様とはまったく違いますわ。お声も、その目の色も。」
ルーンファクト様はそっくりさんと見分けがついた私に驚いたように声を弾ませた。どこか嬉しそうだ。
「そうか。父上と母上くらいしかあいつと私の区別がつけられなかったが……。君も区別をつけられるとは私はとても嬉しいよ。」
「だって、全然違いますもの。」
私はルーンファクト様と見つめ合って笑いあう。
「あら、ルーンファクト様!昨日はとても楽しかったわ。」
ルーンファクト様と話していたら椅子に座っていたはずのアルフォネアが会話に割り込んできた。
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