妹が寝取った婚約者が実は影武者だった件について 〜本当の婚約者は私を溺愛してやみません〜

葉柚

文字の大きさ
8 / 36

王妃様に呼ばれたのは私なのに妹までついてきました

しおりを挟む

 

 

 翌日、私は王妃様からの呼び出しにより、急遽王宮に行くことになった。

 私が王宮に行くということを嗅ぎつけたアルフォネアが、何故だか一緒に王宮に行くと言って聞かなかった。昨日お父様に窘められたばかりだと言うのに。

 王宮に着くと王妃様付きの騎士に王室の庭に案内された。

「王妃様が間もなくいらっしゃいます。ステファニー様とお付きの方はこちらで座ってお待ちください。」

 庭に用意されていたテーブルに案内された。騎士は椅子を引くと私に座るように促した。

「ええ。ありがとうございます。」

 私は椅子にお礼を言ってから椅子に座ろうとする。

「ありがとうございますわ。」

 だが、私より早くアルフォネアが騎士が引いた椅子に座ってしまった。

 私はギョッとしてアルフォネアを見る。

 王妃様に呼ばれたのは私なのに。

 騎士もびっくりしたように、アルフォネアと私を交互に見た。

「私の妹のアルフォネアですの。」

「ああ。そうでしたか。これは大変失礼いたしました。お二人でいらっしゃるということでしたので、てっきり侍女がいらっしゃるのかと思っておりました。今、椅子をもう一脚用意いたします。庭を見ながらお待ちください。」

「いえ。こちらこそ、事前にお伝えせずに大変失礼をいたしました。お手数をおかけいたしますわ。」

 騎士は一度私に会釈してその場を後にした。どこからか椅子を調達してくるのだろう。

 アルフォネアは椅子に座りながら辺りを珍しそうに見回している。

 私はその間庭を見ることにした。

「綺麗ね……。」

 庭には王妃様が好きなのだろうか淡いピンク色の薔薇、淡い紫色の薔薇、白い薔薇が咲き誇っていた。

「そうだろう。母上は淡い色合いの薔薇が好きなんだ。」

「そうなんですね。とても綺麗に咲き誇っておりますわ。」

「君が気に入ったのなら、母上の許可を得てくるからいくつか持って帰るといい。」

「いえ。そんなことは出来ませんわ。切ってしまったら薔薇が可哀想ですわ。このまま咲かせておいてくださいませ。」

「ここにある薔薇は見てもらうために咲き誇っているのだ。君みたいな花を愛でる心がある人の元に行くのは本望だろう。」

「まあ。ありがとうございます。……え?」

 綺麗に咲き誇っている薔薇を見ていると誰かが話かけてきた。

 あまりにも自然に話しかけられたものだから、私は相手の顔も見ずにそのまま会話を続けていた。

 そしてしばらく会話をした後に、誰かが側にいるということに気が付いた。

「る、ルーンファクト様。」

 気が付けば横にルーンファクト様がいた。澄み切った青色の瞳が私を見て柔らかく微笑む。

「驚かせてしまったかな。ステファニー嬢。ここで母上を待っていると聞いたので来てみた。」

「いいえ。お会いできて光栄ですわ。ルーンファクト様。」

「私もだよ。なかなか君に会いにいけなくてすまない。」

「いいえ。ルーンファクト様がお忙しいのは存じております。こうして会いに来てくださっただけでも嬉しいのです。」

 ルーンファクト様は時期王として王様の執務を手伝っている。一部の執務については王様から全権を移譲されたとも聞いている。

「……昨日、私が君の屋敷に行ったことは知っているのかい?」

 ルーンファクト様は少しバツが悪そうに私に尋ねられた。

「いいえ、昨日はルーンファクト様はいらっしゃっておりませんわ。従者の方に私へのプレゼントを持って行くようにお命じになったのでしょう?もっともその従者の方は私と妹を間違えたようですわ。」

「ああ。そうだね。直接伺いたかったのだが、仕事がいそがしくてね。……あいつは、君と妹を間違えたのか。仕方のないやつだ。あいつには会ったのか?」

「ええ。妹といるところを見かけましたわ。直接会話もさせていただきました。」

「……はぁ。それにしても、君はあいつと私の違いがわかるのかい?」

「ええ。ルーンファクト様とはまったく違いますわ。お声も、その目の色も。」

 ルーンファクト様はそっくりさんと見分けがついた私に驚いたように声を弾ませた。どこか嬉しそうだ。

「そうか。父上と母上くらいしかあいつと私の区別がつけられなかったが……。君も区別をつけられるとは私はとても嬉しいよ。」

「だって、全然違いますもの。」

 私はルーンファクト様と見つめ合って笑いあう。

「あら、ルーンファクト様!昨日はとても楽しかったわ。」

 ルーンファクト様と話していたら椅子に座っていたはずのアルフォネアが会話に割り込んできた。

 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。

妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです

hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。~婚約破棄され家出したために命拾いしました~

四季
恋愛
ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

処理中です...