35 / 36
反逆罪は死罪が妥当……
しおりを挟む「王家に対する反逆罪は死刑に値する。それは、知っておるな?」
王様はゆったりとした口調で告げる。
「もちろん承知しております。」
お父様はそう答えた。
お母様の顔は真っ白だ。だが、アルフォネアがいた時よりも顔色が良いような気がする。
「うむ。して、ユルスグレーン侯爵。そなたは、王家に対して反逆の意思は持っておるか?私になりかわって王になりたいと思うか?」
王様はお父様に尋ねる。
王様はなぜそんなことを尋ねるのだろうか。
「滅相もございません。私は侯爵の地位をたまわれた。それだけで十分にございます。王になるなど恐れ多いことにございます。」
お父様はひれ伏すように王様にお伝えする。
王様はお父様の答えを聞いて満足そうに笑った。
「であろうな。ユルスグレーン侯爵は常に平等な考えを持ち、自分の地位に相応しいおこないをしてきた。領地の経営も順調で、領地から不満の声も上がってはいない。そなたが野心を持つタイプではないことは周知の事実だ。ゆえにステファニー嬢をルーンファクトの婚約者として認めたのだ。」
「はっ。」
どうやら王様は私がルーンファクト様の婚約者候補として名が挙がったときに、我がユルスグレーン侯爵家に対して調査をおこなったようだ。
きっと、ルーンファクト様がお父様にいいように使われたりしないように、お父様が権力を振るうようにならないように、きちんと下調べをしていたのだろう。
「ゆえに、ユルスグレーン侯爵家に罰をくだすが死罪にとは考えてはおらぬ。そうだな……アルスレーン地方の教会に今後維持費を寄付するように。ただ、領民への重税は許さぬ。」
「はっ。承知いたしました。……ですが、そのような軽い罰でよろしいのでしょうか。」
王様の提示した罰はアルフォネアが犯した罪に比べたら随分と軽いように思える。王族に対して暴言を吐いたのだ。これだけで済ましてしまって良い物なのだろうか。
お父様も同じことを思ったようで、王様に問いかけた。
それにしても、なぜアルスレーン地方の教会なのだろうか。アルスレーン地方とは酷く廃れた地方だと聞く。大地は作物がなかなか育たず、気候は常に寒いと聞く。
「軽くはないと思うぞ。侯爵が存命中はずっと寄付を続けるのだ。毎年変わらずに、だ。」
「……承知しました。」
お父様はそれだけで許されるのかと安堵したようだ。
「また、アルフォネアについては別だ。あれは矯正する必要がるだろう。ぬるい矯正だとまたすぐにつけあがる。厳しい矯正が必要だと私は考える。」
王様は先ほどとは打って変わって口調を厳しいものに変えた。
6
あなたにおすすめの小説
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる