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第7話 殿下の訪問
しおりを挟む私に未来視の能力があるということをスチュワード王太子殿下が知ってから一週間程が経った。
「やあ。メリッサ嬢。ご機嫌いかがかな?」
おどけながら私にそう声をかけてきたのは、スチュワード王太子殿下だった。
珍しい。スチュワード王太子殿下が私の屋敷に来ると、いつもステラお姉さまの元に一直線なのに。
スチュワード王太子殿下の横にステラお姉さまが立っていないことを不思議に思って首を傾げる。
「ごきげんよう。スチュワード王太子殿下。ステラお姉さまは今頃庭で読書をなさっていると思いますわ。」
ステラお姉さまが見つからなくて私に声をかけてきたのだろうか。そう思って、今の時間にステラお姉さまがいる場所を教えた。
「いやいや、今日はステラ嬢ではなくてメリッサ嬢に会いに来たんだ。」
「えっ……。」
「いや、そんな嫌そうな顔をしなくとも……。」
けれど、スチュワード王太子殿下はステラお姉さまに会いに来たのではなく、私に会いに来たと告げた。
私は嫌な予感がして思わず表情を暗くする。すると、スチュワード王太子殿下が私の表情の変化に素早く反応して苦虫を噛み潰したような表情をした。
「も、申し訳ありません。でも、スチュワード王太子殿下はステラお姉さまに夢中だから、いつもこちらにいらっしゃるとステラお姉さまの元に向かうものですから。……もしかして、私の能力についてのお話ですか?」
「もちろん。メリッサ嬢との話が終わったらステラ嬢に会う予定だ。メリッサ嬢の未来視の能力については国に報告させてもらった。」
「……そうですか。」
やはり、私の未来視の能力の件については、スチュワード王太子殿下から国に報告されてしまったようだ。
「ああ、そうだ。ちなみにメリッサ嬢の父上と母上にも確認させてもらった。彼らはメリッサ嬢の能力のことには薄々感づいていたようだ。ただ、メリッサ嬢の自由にさせたかったと言っていたよ。確かに、未来視の能力を持っているなんて知れたら幼い頃から国に雁字搦めになってしまうからね。メリッサ嬢の御父上と御母上はメリッサ嬢にできるだけ自由に暮らして欲しかったんだね。メリッサ嬢は愛されているようでなによりだ。」
「そ、そうですか。」
だから、か。スチュワード王太子殿下に未来視のことがバレてしまってからもお父様とお母様の様子がちっとも変わらなかったのは。
てっきりスチュワード王太子殿下が未来視のことを秘密にしていてくれたから、お父様もお母様も私の未来視のことには気づいていないのだと思っていた。どうやら違っていたらしい。
「それに、安心して欲しい。メリッサ嬢にも、御父上にも御母上にも悪いようにはしないから。むしろ、この話を先に御父上と御母上にしたらとてもお喜びだったよ。」
そう言って、スチュワード王太子殿下はにっこりと微笑んだ。
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