7 / 11
第7話 殿下の訪問
しおりを挟む私に未来視の能力があるということをスチュワード王太子殿下が知ってから一週間程が経った。
「やあ。メリッサ嬢。ご機嫌いかがかな?」
おどけながら私にそう声をかけてきたのは、スチュワード王太子殿下だった。
珍しい。スチュワード王太子殿下が私の屋敷に来ると、いつもステラお姉さまの元に一直線なのに。
スチュワード王太子殿下の横にステラお姉さまが立っていないことを不思議に思って首を傾げる。
「ごきげんよう。スチュワード王太子殿下。ステラお姉さまは今頃庭で読書をなさっていると思いますわ。」
ステラお姉さまが見つからなくて私に声をかけてきたのだろうか。そう思って、今の時間にステラお姉さまがいる場所を教えた。
「いやいや、今日はステラ嬢ではなくてメリッサ嬢に会いに来たんだ。」
「えっ……。」
「いや、そんな嫌そうな顔をしなくとも……。」
けれど、スチュワード王太子殿下はステラお姉さまに会いに来たのではなく、私に会いに来たと告げた。
私は嫌な予感がして思わず表情を暗くする。すると、スチュワード王太子殿下が私の表情の変化に素早く反応して苦虫を噛み潰したような表情をした。
「も、申し訳ありません。でも、スチュワード王太子殿下はステラお姉さまに夢中だから、いつもこちらにいらっしゃるとステラお姉さまの元に向かうものですから。……もしかして、私の能力についてのお話ですか?」
「もちろん。メリッサ嬢との話が終わったらステラ嬢に会う予定だ。メリッサ嬢の未来視の能力については国に報告させてもらった。」
「……そうですか。」
やはり、私の未来視の能力の件については、スチュワード王太子殿下から国に報告されてしまったようだ。
「ああ、そうだ。ちなみにメリッサ嬢の父上と母上にも確認させてもらった。彼らはメリッサ嬢の能力のことには薄々感づいていたようだ。ただ、メリッサ嬢の自由にさせたかったと言っていたよ。確かに、未来視の能力を持っているなんて知れたら幼い頃から国に雁字搦めになってしまうからね。メリッサ嬢の御父上と御母上はメリッサ嬢にできるだけ自由に暮らして欲しかったんだね。メリッサ嬢は愛されているようでなによりだ。」
「そ、そうですか。」
だから、か。スチュワード王太子殿下に未来視のことがバレてしまってからもお父様とお母様の様子がちっとも変わらなかったのは。
てっきりスチュワード王太子殿下が未来視のことを秘密にしていてくれたから、お父様もお母様も私の未来視のことには気づいていないのだと思っていた。どうやら違っていたらしい。
「それに、安心して欲しい。メリッサ嬢にも、御父上にも御母上にも悪いようにはしないから。むしろ、この話を先に御父上と御母上にしたらとてもお喜びだったよ。」
そう言って、スチュワード王太子殿下はにっこりと微笑んだ。
2
あなたにおすすめの小説
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました
ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。
壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。
【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】
青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。
婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。
そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。
それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。
ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。
*別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。
*約2万字の短編です。
*完結しています。
*11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる