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箏教室 #1
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「私、、双極性障害なの…」
目の前に居る女の子は誰だ
俺は手を差し出した
あと少しで手が届く
あと10cm…5cm…
1cm…
「一誠起きなさい!」
何やら大きな物音と共にお母さんの声が聞こえてきた
「なにをそう急いでるんだよ…」
「あんた何言ってんの!
今から引越しするのよ!
あなたも早く起きて手伝いなさい!」
『ガチャ』
お母さんが俺の部屋から出ていった
そういやそんなことも言ってたなと思いながら
目を擦り体を起こした
俺の周りのものは全てダンボールに包まれていた
カーテンを開け外を見ると既に引越し業者が来ていた
「よしっこれで準備おっけい」
「一誠準備出来たの?
出発するわよ!」
俺の家はいわゆる転勤族だった
こういうのには慣れている
今回は割と近い場所に転勤になった
次の新たな家は、木造で少し古ぼけていたが
まぁまぁの清潔感を保っていた
なにより嬉しかったことは
自分の部屋が前の部屋より広くなることだ
この前の家では物が溢れかえり窮屈だった
今回の家はある程度ゆとりを持って過ごせそうだ
俺は軽くこの家の周りを探検してみることにした
家の近くには人気のない商店街があった
少し足を踏み入れてみたが
ほぼシャッターが閉まっていた
ちらほらと空いているところもあったが
興味がわかないどころか見向きもしない
しばらく商店街を歩いていると
裏路地のようなものがあった
そこは少し昭和の雰囲気が残っていて
自然と足がそちらの方へ動いていた
どこか儚げな雰囲気を醸し出している裏路地は
住宅街に繋がっていた
その住宅街はかなり新しく
リフォームされた家が多かった
道を行き過ぎても迷うだけだ…
同じ道を引き返し家に戻った
すると家のすぐ近くに一際目立つ
新しい建物が建っているのに気がついた
そこには中野箏教室と書かれていた
そこには割と若い子が多くおり
微笑ましかった
少し近くに寄ると箏の音色が聞こえた
音にムラがある
まだまだ未熟だ
俺は家に戻り明日に備えることにした
明日は月曜日
学校が始まる日だ
今回は仲間に溶け込めるだろうか
溶け込んだとしてもすぐにいなくなる
無駄だな…
なんて思いながら
目を閉じ眠りについた
異様に早く目が覚めた
今の時刻は5:45
学校の登校時刻は8:30だ
もう一度目を閉じたが眠れなかった
だが特にすることがない
俺はただ外を見つめ空に群れるカラスを見つめていた
『7:30』
やっと登校時刻が迫ってきた
朝は余裕で満ち溢れていたのに
今となっては心臓が重低音のように
部屋に鳴り響いていた
足をおぼつかせながら学校へ向かった
転勤には慣れているがやはり初めての学校には慣れない
ホームワークの時
紹介された
俺は自分の名前とどこから来たか、好きな物を告げて
座った。
俺の席は『窓側の席の1番後ろ』だった
この席は目立ちにくくとても過ごしやすかった
転校生とだけあって最初は明るい子が
話しかけてきてくれたが、
あいにく俺はこういうのが苦手で
それが相手にも伝わったらしく
話しかけられることはなくなった
授業中もほとんど
ぼー
っと窓の外を眺めていた
トンビが飛んでいる
久しぶりに見た。
「加藤!」
横からもう1匹トンビがやってきた
片方は小さく恐らくは親子だろう
「おい加藤!聞いてるのか!」
2羽のトンビは遥か彼方へと消え去った
「加藤!いい加減にしろ!」
誰かが俺の呼んでる
どうせ誰かが面白半分に話しかけているのだろう
トントン
誰かに机を叩かれた
隣の席の中野さんだった
「先生に当てられてるよ」
前を伺うとあいにく先生はご立腹
「加藤!やっと気がついたか
この問題を解きなさい」
今まで全然話を聞いていなかった
だが分かる
俺は生まれつきどんな問題でも
なぜか頭に答えが浮かんでくる
「はい、X=4です」
「正解だ。座ってよし」
そして俺はまた外へ目を背けた
6時間目
授業は音楽だった
どうやら箏について学んでいるらしい
音楽室には箏が有り先生が机に箏を置き
ある生徒を呼んだ
隣の席の中野さんだ
俺はまた窓の外を眺めた
CDで八橋検校の六段の調が流れていた
あまりにも退屈だったのであくびが出た
そしてウトウトしていると
箏の音色が聞こえてきた
眠気が完璧に覚めた
その箏の音色は綺麗なハーモーニーを奏で
六段の調を弾いていることがすぐ分かった
俺は小さい頃『箏』を習っていた
最初は長いことしていたのだが
転勤が多くなり辞めた
中野さんの音色はどこの教室の先生とも違う
儚さ、切なさ、優しさ、強さ、勇ましさ、輝きを
感じられた
俺は一瞬にしてその音色に釘付けになった
6時間目が終わり帰宅している時も
ずっとあの音色が頭に流れていた
するとふと目が行った先には
「中野箏教室」
と書かれてあった
つじつまがあった
きっと中野さんは
中野箏教室の先生の子供なのだろう
また近くまで寄ると昨日と同じ未熟な音が鳴り響いた
彼女は居ないようだ
「加藤、、くんだよね?」
後ろから声が聞こえた
振り向くと中野さんが立っていた
「箏、、興味あるの?」
「小さい頃に軽く箏を習っててな、」
「そうなんだ」
「じゃ、また明日」
そう言ってやや早歩きぎみにその場を立ち去った
家に帰り箏教室の事を話した
すると父が
「もう一度行ってみるか?」
と言った
正直興味はある、行ってみたい、、だが
「考えとくよ」
と言って自分の部屋にあがった
目の前に居る女の子は誰だ
俺は手を差し出した
あと少しで手が届く
あと10cm…5cm…
1cm…
「一誠起きなさい!」
何やら大きな物音と共にお母さんの声が聞こえてきた
「なにをそう急いでるんだよ…」
「あんた何言ってんの!
今から引越しするのよ!
あなたも早く起きて手伝いなさい!」
『ガチャ』
お母さんが俺の部屋から出ていった
そういやそんなことも言ってたなと思いながら
目を擦り体を起こした
俺の周りのものは全てダンボールに包まれていた
カーテンを開け外を見ると既に引越し業者が来ていた
「よしっこれで準備おっけい」
「一誠準備出来たの?
出発するわよ!」
俺の家はいわゆる転勤族だった
こういうのには慣れている
今回は割と近い場所に転勤になった
次の新たな家は、木造で少し古ぼけていたが
まぁまぁの清潔感を保っていた
なにより嬉しかったことは
自分の部屋が前の部屋より広くなることだ
この前の家では物が溢れかえり窮屈だった
今回の家はある程度ゆとりを持って過ごせそうだ
俺は軽くこの家の周りを探検してみることにした
家の近くには人気のない商店街があった
少し足を踏み入れてみたが
ほぼシャッターが閉まっていた
ちらほらと空いているところもあったが
興味がわかないどころか見向きもしない
しばらく商店街を歩いていると
裏路地のようなものがあった
そこは少し昭和の雰囲気が残っていて
自然と足がそちらの方へ動いていた
どこか儚げな雰囲気を醸し出している裏路地は
住宅街に繋がっていた
その住宅街はかなり新しく
リフォームされた家が多かった
道を行き過ぎても迷うだけだ…
同じ道を引き返し家に戻った
すると家のすぐ近くに一際目立つ
新しい建物が建っているのに気がついた
そこには中野箏教室と書かれていた
そこには割と若い子が多くおり
微笑ましかった
少し近くに寄ると箏の音色が聞こえた
音にムラがある
まだまだ未熟だ
俺は家に戻り明日に備えることにした
明日は月曜日
学校が始まる日だ
今回は仲間に溶け込めるだろうか
溶け込んだとしてもすぐにいなくなる
無駄だな…
なんて思いながら
目を閉じ眠りについた
異様に早く目が覚めた
今の時刻は5:45
学校の登校時刻は8:30だ
もう一度目を閉じたが眠れなかった
だが特にすることがない
俺はただ外を見つめ空に群れるカラスを見つめていた
『7:30』
やっと登校時刻が迫ってきた
朝は余裕で満ち溢れていたのに
今となっては心臓が重低音のように
部屋に鳴り響いていた
足をおぼつかせながら学校へ向かった
転勤には慣れているがやはり初めての学校には慣れない
ホームワークの時
紹介された
俺は自分の名前とどこから来たか、好きな物を告げて
座った。
俺の席は『窓側の席の1番後ろ』だった
この席は目立ちにくくとても過ごしやすかった
転校生とだけあって最初は明るい子が
話しかけてきてくれたが、
あいにく俺はこういうのが苦手で
それが相手にも伝わったらしく
話しかけられることはなくなった
授業中もほとんど
ぼー
っと窓の外を眺めていた
トンビが飛んでいる
久しぶりに見た。
「加藤!」
横からもう1匹トンビがやってきた
片方は小さく恐らくは親子だろう
「おい加藤!聞いてるのか!」
2羽のトンビは遥か彼方へと消え去った
「加藤!いい加減にしろ!」
誰かが俺の呼んでる
どうせ誰かが面白半分に話しかけているのだろう
トントン
誰かに机を叩かれた
隣の席の中野さんだった
「先生に当てられてるよ」
前を伺うとあいにく先生はご立腹
「加藤!やっと気がついたか
この問題を解きなさい」
今まで全然話を聞いていなかった
だが分かる
俺は生まれつきどんな問題でも
なぜか頭に答えが浮かんでくる
「はい、X=4です」
「正解だ。座ってよし」
そして俺はまた外へ目を背けた
6時間目
授業は音楽だった
どうやら箏について学んでいるらしい
音楽室には箏が有り先生が机に箏を置き
ある生徒を呼んだ
隣の席の中野さんだ
俺はまた窓の外を眺めた
CDで八橋検校の六段の調が流れていた
あまりにも退屈だったのであくびが出た
そしてウトウトしていると
箏の音色が聞こえてきた
眠気が完璧に覚めた
その箏の音色は綺麗なハーモーニーを奏で
六段の調を弾いていることがすぐ分かった
俺は小さい頃『箏』を習っていた
最初は長いことしていたのだが
転勤が多くなり辞めた
中野さんの音色はどこの教室の先生とも違う
儚さ、切なさ、優しさ、強さ、勇ましさ、輝きを
感じられた
俺は一瞬にしてその音色に釘付けになった
6時間目が終わり帰宅している時も
ずっとあの音色が頭に流れていた
するとふと目が行った先には
「中野箏教室」
と書かれてあった
つじつまがあった
きっと中野さんは
中野箏教室の先生の子供なのだろう
また近くまで寄ると昨日と同じ未熟な音が鳴り響いた
彼女は居ないようだ
「加藤、、くんだよね?」
後ろから声が聞こえた
振り向くと中野さんが立っていた
「箏、、興味あるの?」
「小さい頃に軽く箏を習っててな、」
「そうなんだ」
「じゃ、また明日」
そう言ってやや早歩きぎみにその場を立ち去った
家に帰り箏教室の事を話した
すると父が
「もう一度行ってみるか?」
と言った
正直興味はある、行ってみたい、、だが
「考えとくよ」
と言って自分の部屋にあがった
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