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4話 食べられたい
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ノアの家は、王都の外の山のふもとにあった。お城みたいに豪華な建物があるということで有名だったが、ノアの所有物だとは知らなかった。
ノアの家に入った後、応接間らしき場所に通された。きらきらしたシャンデリアが吊り下げられているし、ふかふかの椅子やソファが置いてある。高そうな家具ばかりが並んでいて、まるで高貴な人間のための部屋みたいだ。昼間でもしっかり閉じられた遮光カーテンだけが吸血鬼らしい。
二人っきりの部屋だからお互いを意識してしまう。恥ずかしいし照れる。いや、男性同士が居合わせているだけで、なんでこんな変な気分にならないといけないんだ。
「僕は吸血鬼だからよく分からないが、人間は紅茶かコーヒーが好きらしい。クロードはどちらの飲み物が好きなんだ」
ノアが穏やかに聞いてくる。でも、その銀色の瞳には食欲のようなものがギラギラ輝いている。そんなノアの視線を嬉しいと思ってしまう自分は、もうだいぶおかしい。
「ありがとう。でも、今はいらないかな。僕はノアに血液を吸われたくて仕方がないんだ。僕をいっぱい食べてほしい」
そう言って、ノアに近づいてみる。いや、僕は何を口走っているんだ。男性が男性に食べてほしいとか言うのってどうなんだろう。
ああでも、目の前のノアが愛おしく見えてしまう。僕はノアに対して、恋愛感情のようなものを抱いてしまっている。
「分かった。ただ、初めての吸血行為でふらついて倒れる人間は多いという。だから、こちらのソファで行おう」
ノアが優しく言ってくれる。気遣いのできるところも素敵だな。
二人でソファに並んで座り、ノアが僕の首元に手をゆっくり伸ばしてきた。ノアのひんやりした指先が触れて、なんだか意識してしまう。愛でるようになでてくる行動にドキドキする。というか、いつまで触っているんだ。
「ノア。恥ずかしいから早くしてほしい」
あああああ゛。自分はなに急かしているんだ。これじゃあまるで僕が期待して待ちきれないみたいじゃないか。いや、そうだけどさ。
「すまない。クロードがかわいくてつい」
ノアもそんな彼氏みたいなことを言わないでくれ。照れる。いや、照れている自分がおかしい。恋人でもない男性に甘い言葉をかけられて、内心舞い上がる自分って意味分からない。僕は好みの女性と出会って付き合いたいし結婚したいはずなのに。
でも、ノアに首筋を噛まれた瞬間、僕の考えは飛んでいってしまった。甘く痺れるような感覚が広がる。背筋がゾクゾクするし、すっごく気持ちいい。
ノアが割とすぐ離れてしまったことだけが不満だった。だから、思わず僕はノアに抱きついてしまった。
「ノア好き。もっとして」
まだ足りない。血をもっと吸われたい。吸血鬼であるノアの役に立ちたい。ノアに褒められたい。ああもう、頭の中まですっかり眷属化してしまってどうしようもない。でも、ノアのことを想う気持ちが止められない。
「今日はこれくらいで終わろう。最初から血液を多くもらいすぎると、クロードの体調に差し障る。それに、僕がクロードのことを好きになりすぎる。このままだと恋愛的な行為まで迫ってしまいそうだ」
ノアがやや発情したように言って、色気がたっぷりの表情を見せてくる。ああもう、こんなの僕が耐えられない。
「いいよ。何でもして。僕はノアと付き合いたいな」
とんでもないことを伝えてしまった。僕には男性と交際する願望なんてないはずなのに、ノアがあまりにも魅力的に見えてしまったから仕方がない。
「僕もクロードと恋人関係になりたい。その、キスしてもいいか」
ノアが少し困ったように言ってくる。吸血行為も似たようなものなのに、キスは別物扱いなんだな。
「いいよ。いっぱいキスしてほしいな」
そう言って、ノアと口付けを交わす。ああもう、すごく幸せな気分だ。自分は完全に恋している。脳が恋愛感情で満ちている。このままノアのことをもっと好きになりそうで怖い。
ノアの家に入った後、応接間らしき場所に通された。きらきらしたシャンデリアが吊り下げられているし、ふかふかの椅子やソファが置いてある。高そうな家具ばかりが並んでいて、まるで高貴な人間のための部屋みたいだ。昼間でもしっかり閉じられた遮光カーテンだけが吸血鬼らしい。
二人っきりの部屋だからお互いを意識してしまう。恥ずかしいし照れる。いや、男性同士が居合わせているだけで、なんでこんな変な気分にならないといけないんだ。
「僕は吸血鬼だからよく分からないが、人間は紅茶かコーヒーが好きらしい。クロードはどちらの飲み物が好きなんだ」
ノアが穏やかに聞いてくる。でも、その銀色の瞳には食欲のようなものがギラギラ輝いている。そんなノアの視線を嬉しいと思ってしまう自分は、もうだいぶおかしい。
「ありがとう。でも、今はいらないかな。僕はノアに血液を吸われたくて仕方がないんだ。僕をいっぱい食べてほしい」
そう言って、ノアに近づいてみる。いや、僕は何を口走っているんだ。男性が男性に食べてほしいとか言うのってどうなんだろう。
ああでも、目の前のノアが愛おしく見えてしまう。僕はノアに対して、恋愛感情のようなものを抱いてしまっている。
「分かった。ただ、初めての吸血行為でふらついて倒れる人間は多いという。だから、こちらのソファで行おう」
ノアが優しく言ってくれる。気遣いのできるところも素敵だな。
二人でソファに並んで座り、ノアが僕の首元に手をゆっくり伸ばしてきた。ノアのひんやりした指先が触れて、なんだか意識してしまう。愛でるようになでてくる行動にドキドキする。というか、いつまで触っているんだ。
「ノア。恥ずかしいから早くしてほしい」
あああああ゛。自分はなに急かしているんだ。これじゃあまるで僕が期待して待ちきれないみたいじゃないか。いや、そうだけどさ。
「すまない。クロードがかわいくてつい」
ノアもそんな彼氏みたいなことを言わないでくれ。照れる。いや、照れている自分がおかしい。恋人でもない男性に甘い言葉をかけられて、内心舞い上がる自分って意味分からない。僕は好みの女性と出会って付き合いたいし結婚したいはずなのに。
でも、ノアに首筋を噛まれた瞬間、僕の考えは飛んでいってしまった。甘く痺れるような感覚が広がる。背筋がゾクゾクするし、すっごく気持ちいい。
ノアが割とすぐ離れてしまったことだけが不満だった。だから、思わず僕はノアに抱きついてしまった。
「ノア好き。もっとして」
まだ足りない。血をもっと吸われたい。吸血鬼であるノアの役に立ちたい。ノアに褒められたい。ああもう、頭の中まですっかり眷属化してしまってどうしようもない。でも、ノアのことを想う気持ちが止められない。
「今日はこれくらいで終わろう。最初から血液を多くもらいすぎると、クロードの体調に差し障る。それに、僕がクロードのことを好きになりすぎる。このままだと恋愛的な行為まで迫ってしまいそうだ」
ノアがやや発情したように言って、色気がたっぷりの表情を見せてくる。ああもう、こんなの僕が耐えられない。
「いいよ。何でもして。僕はノアと付き合いたいな」
とんでもないことを伝えてしまった。僕には男性と交際する願望なんてないはずなのに、ノアがあまりにも魅力的に見えてしまったから仕方がない。
「僕もクロードと恋人関係になりたい。その、キスしてもいいか」
ノアが少し困ったように言ってくる。吸血行為も似たようなものなのに、キスは別物扱いなんだな。
「いいよ。いっぱいキスしてほしいな」
そう言って、ノアと口付けを交わす。ああもう、すごく幸せな気分だ。自分は完全に恋している。脳が恋愛感情で満ちている。このままノアのことをもっと好きになりそうで怖い。
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